政宗の手紙

伊達政宗/wikipediaより引用

伊達家

「読んだらスグに燃やせよ!」政宗の手紙が本人に気の毒なほど面白い

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(庄内攻めに関して)昨年の冬より、最上家に加勢しており、無事庄内を征圧しました。

これも修理殿(義光の嫡男・義康)の武功のおかげです。

出羽守(義光)のころはこんなにも奮戦健闘することはありませんでしたからね。珍しいことです。

これは一見すると最上義康を褒めているわけですが、わざわざ「義光の頃はこんなにうまく戦ってないもんね! 強くなかったよ!」というニュアンスをこめています。

辛辣政宗の本領発揮ではないでしょうか。

義康をただ褒めるだけなら「義光の頃より」と比較しなくてもよいワケです。

このとき義光は50才を越えており、慶長出羽合戦で心身ともに疲れ切っており、体調を崩して寝込んでおりました。

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そんな義光を労るつもりがまるでないどころか「アイツの息子のほうが強いよね!」としれっと書くあたり、政宗くんてば、もう……と言いたくなります。いやあ、おもしろい。

政宗は慶長出羽合戦の際も、最上の戦略がお粗末だとぶっちゃけ書状を義光に送っており、マウンティングしたい感情をなんとなく感じてしまいます。

いやもちろん、心からの善意という可能性もありますけど。

 

行動とセットで目が離せない

文章だけではなく、書かれている行動がそのたびにネタになるほど難しいのも政宗らしさです。

遅刻しそうだと慌てて弁明していたり、二日酔いでサボる連絡だったり、酒の席で部下をブン殴ったことを詫びていたり。

本人からすれば「だからそういうのは燃やしてよ!!」と言いたくなるかもしれませんが、ビッグネームなので綺麗に装幀されたうえで展示されたりします。有名税って辛い。

そんな中でも特に面白いのが、文禄2年(1593年)朝鮮出兵の母・義姫に宛てた手紙です。

誇らしげに築城技術を自慢し、母の気遣いに感謝する政宗。微笑ましい書状です。

この書状を読むと、政宗が国元の母親からお小遣いを送金してもらい、感動していることがわかります。

(おこづかいをもらって)めっちゃテンションあがって、あちこちを探し回って、お土産みつけようとしました。

いろいろゲットしたけど、どうもわざわざ日本まで贈るにはビミョーなものばっかりで。

これはどうかなと思いながらも、とりあえず木綿の織物を見つけました。

国産よりはいいんじゃないかなと思うんで、送りますね。

気に入るかどうかわからないけど、と書いてはいるものの、本音は自信満々の贈り物でしょうね。

朝鮮で戦いながら母親へのお土産を探し回る政宗。想像するとニヤっとしてしまいません?

 

「作十郎、俺の他に好きな子いるんでしょ!?」

もう一通、素敵なのが、晩年の恋人・只野作十郎宛のもの。元和3、4年頃(1617、1618)、政宗アラフィフの頃です。

ある日、政宗は、酔った勢いで作十郎に酷いことを言ってしまいました。

「作十郎、俺の他に好きな子いるんでしょ!? 許さないぞ!」

これに対し作十郎は潔癖を示すため、自らの腕を突き、起請文を政宗に送ってきたのです。

衆道では愛のために腕や太股を突くことはよくあったのです。

「貫肉」とか「腕引」と呼ばれていました。

「まずい……俺のせいでこんなことを」

そこで政宗は反省し、心のこもった手紙を書いたのです。

あなたも知っている通り、私も若い頃は酔っ払った時には、腕を割き、太股を突いたりしていました。

でも、私ももう歳だし。

「いいオッサンなのに衆道にハマってんだな」と噂になるのも困るし……

歯切れが悪いんだか、いじらしんだか、純情なんだか……。

そんな言い訳を繰り返し、平謝りする政宗。悲哀がこもったアラフィフ男の恋文として、とても興味深い書状です。

ここで紹介した政宗の書状は、ほんの一部です。

彼の書状を紹介する書籍もありますので、是非ご覧ください。

きっと政宗が気になって仕方なくなりますよ!

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文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link

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【参考文献】
佐藤憲一『伊達政宗の手紙 (洋泉社MC新書)』(→amazon
仙台市博物館刊行版 佐藤憲一『伊達政宗の手紙』(→amazon
最上義光歴史館発行『最上義光歴史館 増築記念特別展 戦国武将墨跡展図録』(→link
伊藤清郎/日本歴史学会『最上義光 (人物叢書)』(→amazon

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