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忍者の忍術(知恵)は科学的にも認められる?『麒麟がくる』の菊丸も実践

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忍者の忍術(知恵)
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忍者の呼吸法とは、ざっとこんな感じ。

・二重息吹(ふたえいぶき)

・息長(おきなが)

・逆複式呼吸

こうした呼吸法を実践し、脳波を測定したところ、自律神経がリラックスした状態になると証明されたのです。

息の吸い方だけでなんだか気力を充実させるなんて、嘘みたいだなあ。不思議な忍法ってどうせでたらめでしょ?

そんな疑念を吹き飛ばし、科学技術が証明してくれたのです。

 

【九字護身法】でパフォーマンスを高める

【九字護身法】をご存知でしょうか?

「臨、兵、闘、者、皆、陣、列、在、前……」
(りんぴょうとうしゃかいちんれつざいぜん……)

そう重々しく唱え、印を結ぶ。

すると忍者がドロンと消えてしまう――。

※九字護身法

いかにも荒唐無稽なイメージがついてしまった【九字護身法】ですが、現代人が応用しても効果が期待でき、実際にいろんな場面で実践されています。

代表例がアスリートでしょう。

競技前に決まったポーズや動きを取る場面をご覧になったことはありませんか。

ラグビー:キックを蹴る前の五郎丸歩選手のポーズ

野球:イチロー選手のバッターボックスに入る前のポーズ、入ってからの動作

体操:内村航平選手の両手を肩の高さに挙げる動き

フィギュアスケート:羽生結弦選手の十字を切って合掌する動き

陸上:ウサイン・ボルト選手の走る前に弓を引く動き

験担ぎ?
宗教的なもの?

そう思ってしまいますが、これらは【プレ・パフォーマンス・ルーティン】と呼ばれる動作です。

一連の動きにより、心の動揺を抑え、集中力を高めて力を引き出す――。

要は、おのれの持つ能力を最大限に発揮させるための儀式ですね。

もちろんこの動作だけで勝てるわけではありませんし、すべては実力と日頃の鍛錬に依りますが、せっかくですから【常にハイパフォーマンスでいたい】というのは全スポーツ選手の願望でもありましょう。

この効果を得られるのは、アスリートだけではありません。

プレゼンやスピーチ、音楽の発表会など、ここぞという時に【プレ・パフォーマンス・ルーティン】は有効なのです。もちろん日頃からの訓練が必要ですけどね。

忍者の【九字護身法】は、

宇宙や神秘の力を得て最大限の力を発揮する

なんて説明がされたりします。

あなたがここ一番の商談前に「臨、兵、闘、者、皆、陣、列、在、前……」と唱えて印を結んでいたら、周囲は怪しむかもしれません。

しかし、バカ正直に声を出さないやり方を考えれば良いだけの話で、自分の工夫次第で非常に良いメンタルトレーニングになりそうではありませんか?

忍術とは非科学的な迷信のようで、実は理由がある――科学の進歩がそれを解き明かしつつあるとも言えそうです。

 

忍者の身体能力は身を守る

忍者は、周囲に忍者と知られたら終わり。

ゆえにフィクションのような忍者装束はむしろ利用されませんでした。まぁ、当たり前ですよね。

※伊賀忍者ショー

例えば忍者刀。

刀の鍔に足を引っ掛ける使い方が有名ですが、そのためにはかなり大きな鍔でなければできません。代償として、武器としては重たく、実用性がなくなる。そのへんで何か見つけるとか、縄のほうが使い勝手がよいでしょう。

毒を塗った手裏剣も、実用性はありません。尖っていて、手で投げるものに毒を塗っておくと、敵よりも使用者自身に危険が及びかねません。

この類の戦闘員像は、やはりフィクションエンタメだけの話ですね。

忍者の体術は殺傷力よりも、むしろ任務における疲労や負担軽減のために工夫されたものが多いのです。

戦うにせよ、やむを得ない近接戦闘術もあるとはいえ、あくまで非常措置。武士のように、正面切って戦うことはそこまで想定しておりません。

鍛え抜かれたタフな筋力を発揮するよりも、関節の柔軟性、自分の体重、バランスを利用して勝利を狙う合理的な技が多くみられます。

柔よく剛を制す動きこそ、忍者の真髄です。

 

今こそ見直したい、忍者の知恵

明治維新以降、日本や東洋由来の伝統は軽んじる傾向がありました。

スポーツひとつとってもそうです。

柔道のようにスポーツとして活路を見出す競技がある一方で、古式泳法やナンバ走りはよろしくないものとして軽んじられてしまいました。

日本古来の走法・ナンバ走りを映画『サムライマラソン』に学ぶ!

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忍者の知恵も、なまじフィクションのイメージが強すぎるのか。迷信由来として面白がられ、消費されてきたと感じます。

しかし、改めてみてくると、現代人の労働にも使える知恵が詰まっているんですね。

忍者は社会に入り込み、様々な情報を集め、持ち帰ることが主な任務。人当たりの良さ、コミニケーション、人脈の形成といった能力も必要とされました。

必須能力は、暗殺でもなく、ドロンと姿を消すでもなく、巨大なガマガエルを呼び出すことでもない。

人として、いかに生き抜くか――そんな基礎的なことでした。

だからこそ、現代社会を生きる私たちにとっても有用な知恵があるのです。

今後、世界の進歩とともに、忍術の知恵も解明されてゆくことでしょう。

2020年現在の知見で描きなおした菊丸は、そんな最先端忍者研究の象徴です。

タフに生き抜き、目標を達成するその姿から、学べることはたくさんあるはず。そんな菊丸を応援しましょう!

文:小檜山青

【参考文献】
『忍者学講義 (単行本)』(→amazon
『国史大辞典』

 



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