大河ドラマ『麒麟がくる』の放送開始後、戦国関連の書籍が好調のようです。
同ドラマでは、名だたる戦国大名の若かりし頃の、割と地味な小さな合戦なども描かれており、『真田丸』や『おんな城主 直虎』と同様地に足ついた目線は、戦国ファンを喜ばせております。
今回注目したい書籍は、そうした「地味な合戦」で主役となっていた方たち。
『全国国衆ガイド 戦国の‘‘地元の殿様’’たち (星海社新書):大石 泰史 (編集)』(→amazon)です。
【TOPイメージ・富永商太】※上記書籍に収録されているイラストではございません
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三英傑が甲子園優勝校だとすれば地方予選組にスポットを
本書はタイトル通り国衆がテーマ。
いわば「地方予選で負けた高校まで網羅した甲子園ガイド」のようなものです。
三英傑(信長・秀吉・家康)が甲子園優勝の常連校だとすれば、
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一方、本書に出てくる国衆は真田家や井伊家を例外として、あとは各地の予選でいいとこ準決勝やベスト4クラスというところです。
各市町村史にひっそりと出てくる、関連史跡といえば町はずれの風化した石碑くらい、そんなマイナーな武家も網羅しているのが本書です。
そんな内容ですから、まず手に取ってみて驚きます。
分厚いのです。
五百ページ近いボリュームは、もう新書でよいのか悩ましいほど。
さらにパラパラめくると、文字の小ささに驚きます。本文はもちろんのこと、語彙解説にいたっては六段組でびっちりと細かい文字が並んでいる。
なぜこうもみっちりと記載しなければならないのか?
それはあまりに小さな家まで網羅しているからです。
西馬音内、土佐林、額田小野崎、波々伯部……って誰だ!?
そして目次を見ても驚かされます。
西馬音内、土佐林、額田小野崎、波々伯部、鶏冠井、物集女、三刀屋、問注所、頴娃……。
パッと見て馴染みのない、読み方すら推測が難しい名前がズラリ!
なじみがある名前が並んでいるのは、国衆が多く出仕した武田家領の甲信地域辺りでしょうか。
自分の出身地ですら初めて聞いた名前ばかりで、あとはチラホラと聞いたことのある名前がある程度。これはまさに、未知の戦国時代に迫る一冊なのです。
が、しか未知の分野であるからこそ、そしてマイナーな分野を取り上げているからこそ、本書は読む意味があるのか、わからないところもあるかもしれません。
もっとはっきり言ってしまいますと、一冊まるごと通読する意義はあまりないかもしれません。
ガイドですので、気になる地域、気になる一族だけを読むのでもまったくもって問題ありません。
また、いざ目的の一族を見つけても、十分な情報量があるとは限りません。
真田、井伊、九鬼といった国衆から大名にまで出世した一族は、もっと詳しい別の本があるでしょう。それ以外でも、その一族が居住していた各市町村史を調べた方がよい場合もあるかと思います。
そもそも史料が極端に少なかった、専門家が調べても行き止まりだった、という例もあるかと思います。
要するに、本書でカバーできる範囲は限られており、目的を達成できるとは限らない、ということです。あくまでタイトル通りガイドであって、入り口を案内するものだということは頭の隅に入れておいた方がよいでしょう。
また、本書を読んでいくと、だんだんと儚い何かを観察しているような虚しさを感じるようになるかもしれません。
なぜなら、多くの国衆が、争いの中で滅び歴史から姿を消してしまうからです。
弱小校が地区予選で敗退するように、彼らは消えてしまいます。そのパターンにもいくつかあることがわかってきます。
主に5パターンでくくってみますと……。
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