武田勝頼は最初から詰んでいた?不遇な状況で武田家を継いだ生涯37年
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実はこのとき援軍を求められた織田信長は、普段の神速行軍がうそのような、少しもたついた動きをしております。
その理由は不明ですが、今回は事後処理を見て参りましょう。
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天然の要塞・高天神城
まずは当時の状況を少々おさらいしておきますと……。
高天神城は、以下の地図をご覧のとおり、
太平洋を望む位置にあり(紫色)、甲信地方から駿河や三河へ押し出してくる武田軍にとっては、落としておきたい要衝でした。迂闊に残しておけば、東西どちらへ進むにしても背後を取られかねないポイントです。
一方、織田や徳川にとっても重要な城であるのは言うまでもなく、徳川家康もそれを認識した上で、城主・小笠原長忠(小笠原信興という説も)を信頼しておりました。
高天神城は峻険な崖によって守られた天然の要害であり、あの武田信玄に2万以上の大軍で攻められても守り抜いた武将です。仮に大軍で攻められても時間稼ぎはできる。その間に徳川と織田で救出へ向かえば良い――。
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そんな風に考えていたでしょうから、家康や信長の救援部隊が到着する前に、小笠原長忠が武田方へなびいてしまったショックはかなり大きかったでしょう。
長忠は、武力で負けたわけではなく、武田家の調略によって陥落したのでした。
実は、城が囲まれた当時、織田信長も岐阜(上記地図の左上・黄色い拠点)を出発し、高天神城の救援へ向かっておりました。
しかしこの時の信長は、普段からは考えにくいほどのんびりとした行軍。
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考えようによっては、まるで武田との直接対決を避けたかのような印象すらあります。
なぜならその後、信長は、謝罪代わりとも見てとれる【金】を大量に徳川へ送っているのです。
「こんなことは今まで聞いたことがない」
徳川家康は、この金を素直に受け取りました。
そして酒井忠次の城(おそらく吉田城・豊橋市)で袋を開かせて驚きます。質・量共に充分すぎるほどの黄金が入っていたのです。
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「上のほうだけ黄金で、下は銀や銅」といったセコイ状態ではなかったということでしょう。
居合わせた徳川家の上から下まで「こんなことは今まで聞いたことがない!」と驚いたそうです。
このときの黄金が具体的にどのくらいの量だったのか。残念ながら『信長公記』には、分量に関する記述がありません。
ただし、
”黄金の入った革袋2つを馬に乗せて、家康のもとに送った”
とあります。
よくドラマなどで見る”賄賂のような小さな砂金袋といったレベルではなかったのでしょう。
徳川軍の兵糧代としては、充分すぎる恩賞だったと思われます。もちろん城一つには足らないでしょうけど……。
家康の胸中は複雑だったかもしれない
そのため、見ようによっては「信長が金で家康を黙らせようとした」と取れなくもありません。
基本的には信長ヨイショな著者・太田牛一も、多少はそう感じたのでしょうか。
「家康の胸中は複雑だったかもしれないが、それはわからない」と書き添えています。
かくしていったんは軍を起こした織田信長と織田信忠も6月21日には岐阜へ帰り、この件は一旦落着しました。
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ただし、平和は長くは続きません。
翌年【長篠の戦い】の後から、高天神城は再び戦の舞台になります。この時期の信長は北陸方面に出向いており、織田軍は大きく関わっていません。
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信長公記では、もう少し後にまたこの城の話が出てきますが、かなり長引いていて複雑になるため、別の機会に扱いたいと思います。
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長月 七紀・記
【参考】
国史大辞典
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