信玄が家康に激怒していた理由

徳川家

信玄が家康に激怒していた根深い因縁~だから武田は徳川へ攻め込んだ

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義信の死がもたらしたもの

『どうする家康』では、3回の放送にわたって【三河一向一揆(三河一揆)】に苦しむ家康が描かれました。

一方、信玄にも、苦い状況がありました。

永禄8年(1565年)10月、嫡男の武田義信が謀反を企てたとして、自刃に追い込んだとされています。

動機については解明されていない点が多いものの、確たることはある。

義信の妻は今川義元の娘・嶺松院。

信玄が今川との同盟を維持するならば、義信の地位は安泰ですが、今川を切り捨てて織田・徳川に接近するとなると、そうともいえません。

しかも、異母弟・勝頼の縁談相手は、織田信長の養女となった遠山夫人(法号:龍勝院)で話がまとまります。

信玄の去就に不満を募らせた義信が、父の排除を企ててもおかしくはない状況――そんな最中に亡くなるわけです。

義信は自刃ではなく病死という見方もありますが、いずれにせよ武田と今川は決裂。義信の妻が今川へ戻されると、いつ信玄が攻めてもおかしくない状況となりました。

氏真にしても、むろん黙っているわけではありません。上杉との密約で対抗しようとしました。

『どうする家康』ではなぜか上杉謙信も出てきませんが、信玄の動きは謙信の動向に左右されるため、その説明がないとわかりにくくなります。

武田勢は別に勿体ぶって動かなかったわけでもなく、常に越後を気にかけていなければならなかったのです。

逆に言えば、上杉の脅威がなければいつだって他国へ侵攻できる。

実際そうなれば、さっさと駿河へ攻め込んでしまった方が得策――と信玄が判断してもおかしくはありません。

没落する今川より、三河を平定して上り調子の徳川と手を結んだほうがメリットもあるでしょう。

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『どうする家康』の第11回放送「信玄の密約」では、義信の死や、上杉と今川の怪しい動きといった要素はありました。

第15回で突如クローズアップされた家康の異母弟・源三郎は、そうした過程で交換された人質だったのです。

 

氏康の娘・早川殿が鍵を握っていた

外交にも長けていた信玄。

駿河侵攻に際しては、家康との盟約だけを重視したわけではなく、しっかりと背後にも備えていました。

奥州会津の雄・蘆名盛氏、あるいは揚北衆・本庄繁長などにより、上杉謙信を牽制させたのです。

その上で、満を持して今川氏真に迫ります。

永禄11年(1568年)末、甲駿同盟は完全に破綻、武田勢が駿河へ攻め込みました。

今川氏真の妻である早川殿は、北条氏康の娘です。

そもそも早川殿の母である瑞渓院(ずいけいいん)にしても、今川から北条へ嫁いだ姫であります(以下に略式の系図を掲載しておきます)。

こうして北条と強固な関係を築いている今川氏真を追い詰めればどうなるか?

『どうする家康』では、今川氏真と徳川家康がタイマン勝負で決着をつけたようにも見せ、家康の温情で氏真が救われたようでした。

糸こと早川殿は足を引きずり、氏真からは邪魔者扱いされ、無力でオロオロしていただけのように思えます。

しかし、氏真の命運を握っていたのは彼女の実家・北条です。

娘である早川殿が、輿にも乗らず、裸足で逃げてきたため、氏康は信玄に激怒。

「この屈辱は雪(そそ)ぐしかあるまい!」

と怒りの北条勢に、さしもの武田軍も苦戦を強いられます。

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その後の北条の動きも見逃せません。

武田と交戦状態に入った北条は上杉に接近し、氏康は我が子を上杉謙信の養子・景虎とし、手を結びました。

こうした複雑極まりない同盟関係がありましたが、『どうする家康』では劇中で北条を抹消したため、何ら説明はありません。

確かに『おんな城主 直虎』と『麒麟がくる』でも、北条は目立ちませんでした。井伊直虎明智光秀が主役であれば、それも無理はない話でしょう。

しかし、徳川家康と北条は何かと縁がある関係です。

今後も重要場面で関わるはずですが、これまでに上杉や武田義信、足利義輝も放置されているので、どう処理するか想像もつきません。

御館の乱】はナレーションで済まされ、直江兼続も出演せず、唐突に【直江状】だけ読み上げられる可能性も低くはないでしょう。

今後は、そうした予測を楽しむのが、戦国時代ファンのあるべき姿かもしれません。

話を今川・武田・北条・徳川に戻しましょう。

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