信玄が家康に激怒していた理由

徳川家

信玄が家康に激怒していた根深い因縁~だから武田は徳川へ攻め込んだ

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なぜ、信玄は怒ったのだろうか?

今川へ侵攻し、北条との関係が破綻した武田。

問題は、共に攻め入った家康の対応です。

家康は今川氏真夫妻を滅ぼさないどころか、庇護すると北条と和睦してしまいました。

この辺は確かに『どうする家康』でも描かれました。

ドラマのように、男同士の熱い義兄弟愛というより、もっとドライな判断の気がしますが、いずれにせよこれに激怒したのが信玄です。

ハァ~? 一緒に攻めといて、お前だけ北条と和睦ってなめとんのか!

『どうする家康』で言うと、第12回放送「氏真」のラストで、信玄怒りの炎に着火。

翌週の第13回「家康、都へゆく」で家康がウキウキワクワクしていた頃には、信玄は相当なお怒りだったということです。

そして程なくして大きなターニングポイントがやってきます。

元亀2年(1571年)、信玄にとって鬱陶しいライバル・北条氏康が没したのです。

氏康の死により、俄然、武田軍は動きやすくなったようにも見えますが、ことはそう単純ではなく、この前年の元亀元年(1570年)、徳川は上杉と同盟を結んでいました。

おのれ徳川め……と歯ぎしりをしても、『孫子』マスターの信玄は怒りに任せて動いたりはしません。

攻め時をジッと待っていたことでしょう。

例えば『麒麟がくる』の信玄は、出番こそ少ないながら、機が熟してこそ動く慎重さが表現されていました。

劇中での信玄は重臣を集め、重々しくこう語りかけます。

「ここのところ、織田信長の動きが鈍い。公方様の足並みにも乱れがある。その公方様は、わしに上洛せよとの催促じゃ。出陣の機は熟したと思うが、どうじゃ?」

『孫子』にはこうあります。

善く戦う者は、これを勢に求めて、人に責(もと)ず。『孫子』「勢篇」

ここで信玄が問題にしているのは、信長の「動き」であり、公方様こと足利義昭側の「乱れ」です。

信長は何かに足を取られている。それは義昭だけのせいではない。複数の要素が絡み合うこの時こそ、上洛すれば得るものも大きい。このセリフでは、そんなことが凝縮して描かれました。

こうした複雑な同盟関係とその破綻をもって、武田信玄という猛虎は、いよいよ牙を剥いたのです。

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信玄は家康をどう見てた?

武田信玄は、徳川家康という武将を否定的に見ていました。

ポッと出の国衆あがりで、織田信長の言いなりじゃないか……といった認識です。

信長と対峙し、上洛を果たすうえで、その途上の徳川家康を痛めつけるなど、当然のことだったのでしょう。

武田軍が浜松城へ侵攻すると、徳川軍は「どうする家康?」――と、タイトル通りの危機が迫り、三方ヶ原で惨敗しました。

しかし、見ている側としては別のことを問いかけたい。

北条も上杉も抜きで、今後、どうする家康、どう説明する!

と言っても、あまり深く考えていないような気はします。

続々と出てくる家康側室の扮装写真は大きく扱われる一方、上杉謙信北条氏政も、2023年5月頭の時点で発表されておりません。

織田の重臣クラスですら、豊臣秀吉明智光秀お市と再婚する柴田勝家くらいしか目立っていない。

それでも新たな視点で描かれるのでしょう。

2023年5月3日、コロナウィルスで中止されていた「北條五代祭り」が神奈川県小田原市で開催されました。

この祭りには2016年大河ドラマ『真田丸』で北条氏政を演じた高嶋政伸さんも出演。

沿道から大歓声を浴びるなど、大河ドラマの力が発揮されたイベントといえましょう。

『どうする家康』では、新視点で徳川家康を描いています。

このドラマも皆に愛され、放送後も出演者が祭りで喝采を浴びるような作品になるよう願うばかり。

まだ5月です。残りの歳月でそうなることを期待します。

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文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link

【参考文献】
平山優『徳川家康と武田信玄』(→amazon
柴裕之『徳川家康: 境界の領主から天下人へ』(→amazon
歴史読本『甲斐の虎 信玄と武田一族』(→amazon

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