秀吉の金銀

豊臣秀吉/wikipediaより引用

豊臣家 豊臣兄弟

秀吉を天下人に押し上げた圧倒的な財力~巨額の金銀はどこから調達していたのか?

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貨幣を学べば歴史が見える

金銀は、キリスト教とも関係があります。

当時、最先端の銀採掘技術はカトリック国であるスペインやポルトガルが有していました。

新技術があれば、さらなる経済発展が期待できる。

されど宣教師たちは、その代償として布教の許可を求めてくる……。

そんなジレンマに陥る日本の権力者たちの前に現れたのが、徳川家康のもとへやってきたプロテスタント国出身者でした。

彼らオランダやイギリスは、貿易と布教をセットにしていません。

つまり技術と交易さえ得られれば、それ以上、西洋と関わる必要はない。ならば【海禁】でもよい。

徳川幕府はそうやって割り切ることができました。

オランダとの交易が続き、イギリスと途切れたのは、英国王チャールズ2世がポルトガル出身の王妃キャサリン・オブ・ブラガンザを迎えて、カトリックに戻らないか?と警戒した結果です。

かくして天下統一を成し遂げ、技術も得た徳川幕府。

全国の金銀山を支配下に置き、通貨も統一したため、室町時代のように、各地の大名が勝手に経済力を蓄える危険性を抑えることができました。

しかし時代がくだると、これに綻びが見えてきます。

金銀山を掘り続ければ、いずれ資源は枯渇する。

金銀の流出を食い止めるべく、徳川吉宗の時代に【享保の改革】が実施され、その目玉政策として朝鮮人参の栽培があげられました。

輸入に頼るしかなかった人参の国内生産によって、流出を食い止めたのです。

あるいは平賀源内は、鉱山開発に取り組みました。

貴金属の流出を止めるだけでなく、新たな鉱脈を得ることで財政改善を考えていたのです。彼個人の計画だけではなく、幕府の狙いとも合致していました。

さらに時代が進み、幕末の黒船来航を経て、西洋諸国と貿易が始まると、日本は再び金銀の流出危機にさらされます。

当時の国内貨幣は、西洋諸国よりも金銀含有量が高く、割に合わない交換状況。

これに歯止めをかけたのが、安政7年(1860年)【万延遣米使節団】に参加した小栗忠順です。

小栗は、フィラデルフィア造幣局で渋るアメリカ相手に粘り、通貨の分析を実施し、比率を変えた小判の鋳造で、不利な状況を改善しました。

小栗忠順
冤罪で新政府軍に処刑された小栗忠順~渋沢より経済通だった幕臣はなぜ殺された?

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秀吉はなぜ強かったのか?

小栗忠順は2021年大河ドラマ『青天を衝け』で武田真治さんが演じていました。

小栗の有能さを示す小判比率の話などはカットされましたが、渋沢栄一が主役ですので仕方ないかもしれません。

では家康や秀吉、信長が登場する今年の大河ドラマ『どうする家康』はどうか?

金銀の重要さを示すシーンとして、武田信玄が砂金を握り締め、財力を誇示する場面がありました。

あるいは柴田勝家と対峙していた秀吉が家康に砂金を贈るシーンもありましたね。

しかし、そこに居合わせた徳川家臣たちは秀吉の砂金を「下劣だ」として不快感を示し、逆に、白い綿布を贈ってきたお市を称賛していました。

あのシーンは適切と言えるのかどうか。

前述のように、戦国時代は銀の重要性が非常に高まっていた時代です。

秀吉が銀を贈っていれば、信玄より進んだ技術で銀山を支配しているぞ!とアピールできたようにも思えます。

銀は単なるカネにとどまるのではなく、大きな権力の象徴でもあり、成金どころか、力の強大さを徳川家臣団に訴えることができたでしょう。

あるいは秀吉の計算高さの表現にも繋がったのに、そうした深みのある描写でなかったことが、惜しまれてなりません。

金銀は卑しいだけの存在ではなく、歴史を作ってきた非常に重要な要素でもあるのです。


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文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link

【参考文献】
新人物往来社『豊臣秀吉事典』(→amazon
岡本隆司『中国史とつなげて学ぶ 日本全史』(→amazon
岡本隆司『世界史とつなげて学ぶ 中国全史』(→amazon
小島毅『子どもたちに語る日中二千年史』(→amazon
小島毅『義経から一豊へ―大河ドラマを海域にひらく』(→amazon

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