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カーネーション

朝ドラ・西の横綱『カーネーション』のここがスゴい!再放送を見逃すなかれ

更新日:

勝手ながら、ここ数年(2010年代)の朝ドラで番付をつけさせていただきますと、東西の横綱はこうなります。

東(東京製作)の横綱:『あまちゃん』(2013年)
西(大阪製作)の横綱:『カーネーション』(2011年)

『あまちゃん』がユニークで軽妙な、変化球であったのに対して、『カーネーション』はどっしりと骨太。
まさしく王道を歩んだドラマであり、一本芯の通った素晴らしい作品でした。

そのカーネーションが4/10から再放送となりましたので、見どころをご紹介したいと思います。
※午後4時20分から午後4時50分(1日2話放送・全151回)

史実の小篠綾子さん記事は以下のリンクから!

朝ドラ『カーネーション』のモデル小篠綾子~最期までパワフル人生92年をスッキリ解説!

 

「うちのだんじり」を求めて

朝ドラ定番のヒロインといえば、おてんばで男子のような行動です。
高い所に登って叱られたり、男の子と同じように振る舞えないことを嘆いたりするものです。

本作の糸子もこの例から漏れません。
ナゼ、私は「だんじり祭り」に乗れないのか。
本作の素晴らしさは、糸子が最初に感じたこの理不尽さを持ち続け、自分なりのだんじりを探し続けることです。

やがて彼女が「うちのだんじり」を見つける場面は、その感動がこちらまで伝わってきます。

糸子にとってのだんじりは、メインビジュアルでも使われているミシン。
これを踏み続け、エネルギッシュに糸子は生き抜いてゆきます。

 

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一人の自立した女性として職業人として輝くヒロイン

本作は王道と書きましたが、それは陳腐であるということではありません。
本作の糸子は、止まりません。

彼女はワーカホリックといってもよいほどの働きっぷりで、結婚式前夜でも激しくミシンを踏み続けるほど。
子供が三人産まれても、自分の仕事に夢中なあまり、子守に預けてろくに面倒を見ていません。

本作は、
【あのコシノ三姉妹の母】
という触れ込みの作品です。

シングルマザーとして育て上げた三人の娘が、全員デザイナーになるのですから、さぞや苦労したのだろう、教育熱心だったのだろうと思わせますが、それは違います。

朝ドラあるあるの、陳腐な展開といえば、思春期を迎えた子供が、
「お母ちゃんは仕事に夢中で、うちを見ていてくれへんかった!」
と不満を言う……というものでしょう。

もしも本作が凡庸な作品であれば、糸子は仕事にかまけた我が身を反省し、涙をこぼし、徹夜して姉妹の服を縫う場面が出てきたハズです。

しかし、そんな話ではありません。

娘がスポーツ大会で日本一を獲得しても、なんと糸子は気づかない。
完全スルーしていて、周囲から指摘されてやっと気づくのです。

それでも娘は特にめげることもなく、
「まぁ、そういうお母ちゃんやからな」
と、納得しているのです。
そんな描写をされても、娘たちは糸子を冷たいと思わない。
むしろ娘たちは、母の背中に憧れ、母を魅了した服飾の楽しさを知り、その道を目指すのです。

糸子というヒロインは、母である以前に、一人の自立した女性です。
立派な職業人です。
母ではなく、人として、娘たちのロールモデルとなっているのです。

妻や母としてではなく、一人の女性が持つ可能性と輝きを、本作は見事に表現しています。

 

時代考証が正確 お仕事描写にも納得

本作は、時代考証が正確です。
登場人物は、現在からすればちょっとびっくりするような言動をしますが、それも当時の価値観に沿ったものですので、むしろ納得します。

例えば、日中戦争に突入した当時、出征する近所の青年たちを、糸子の父は気楽に見送るのです。

彼にも徴兵経験がありました。
糸子の父親世代の場合、数年で無事帰って来られることがほとんどでした。
そのため、彼は兵隊にとられるっちゅうのは、そないなもんやろと気楽に構えているのです。

こういう何気ない場面も、後世の「神の視点」で見るとか、「主人公周辺はともかく反戦的でないと!」と考えたりする作り手ですと、まったく見せ方が変わってくるものです。
ややもすれば、もう帰って来られないと悲観的な見方をしていたことでしょう。

戦争描写のシビアさは、見る側に覚悟を要求してきます。
戦争が終わってからも戦災孤児たちが町には残されていますし、主要登場人物の一人にいたっては、身を売るところまで落ちぶれてしまいます。

大正から昭和に至るまでの、暗部や嫌な部分も逃げずに、真正面から取り組んだ本作。
そうした世界観と考証の確かさが、骨太な作風を支えています。

主人公の欠点になり得る部分を逃げずに描くのも、本作の長所です。

 

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糸子は魅力的だが「よい子」ではない

ヒロインの糸子は、魅力的で精力的な女性です。
しかし、所謂「お嫁さんにしたいよい子」ではありません。

ワーカホリックで、気が強く、したがって押しも強い。
しかも、朝ドラヒロインにはあるまじき恋愛も展開してしまい、視聴者からは賛否両論でした。

糸子は周囲から愛される優等生であろうとするよりも、自分の思うまま、理想にそって生きたいと願う女性です。

そんな彼女は、だんじりから始まり、様々な偏見や壁にぶつかります。
女性として生きることうえでぶつかる壁を、本作はごく自然に描きます。

そんな壁の中には、
「男が浮気しても許されるのに、ナゼ女の場合は周囲から糾弾されるのか」
という難しい問いかけもあるのです。

ここまで際どい問いをぶつけてくる。
それだけでも、本作がどれほど異色で、挑発的かわかるというものです。

 

王道だが陳腐ではない

本作は、朝ドラの「王道」ともいえる、戦前戦中戦後まで生き抜いた、女性の一代記という体裁をとっています。
描写は生真面目で、奇をてらったところはありません。

しかし、それは決して陳腐ではないのです。

独身時代の淡い初恋、姑との対立、育児と仕事の両立で悩む……そうした型にはめ込むことをしないため、本作はどの場面であっても目を離すことができず、息を詰めて見入ってしまいます。

時計代わりにチャンネルを合わせる朝ドラというフォーマットには、あっていなかったのではないか、と思うほど。

朝ドラとして傑作というよりも、朝ドラにはふさわしくないほどの傑作といえるかもしれません。

 

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誠意あふれる姿勢

本作最大の魅力は、誠実で妥協がないことです。

成功の鍵は、制作側、特に脚本家の力量だと私は思っています。
コシノ三姉妹の厳しい目に答えられるよう、全力で誠意を尽くした――それが本作の、妥協のない誠意につながっているのではないでしょうか。

本作は、終盤ヒロインを演じる役者が交替します。

様々な憶測が流れましたが、脚本家の明言により、
【老いを侮らず、誠実に表現するため】
であったということがわかりました。

若い女優がいくら頑張って老年期を演じても、どうしてもまがいものになってしまう。
そんなことではいけない――そんな本作スタッフの誠意によるキャストの交替でした。

主演の尾野真千子さんは、加齢に応じて貫禄を出すことのできる、極めて演技力の高い女優です。
それでも本作は、老いを演じるために役者を交替させました。

ナゼ朝ドラではこの覚悟を、他の作品でも出来ないのか?
と愚痴のひとつも言いたくなります。

この対応ひとつとっても、本作は“いつもの朝ドラ”ではありません。
若手女優が無理矢理孫のいる年齢を演じる、そういう作品とはまったく違うのです。

まるで隙のない本作。
それでも敢えて欠点をあげるとすれば、その隙のなさと言えるでしょう。

あまりに優等生で、反発を感じる人がいるかもしれない。
あまりの濃密さに、1回が15分では耐えられない人がいるかもしれない。
時計代わりに見るには、あまりに熱中してしまう。

そうなのです。
本作の欠点をあげるとすれば、その濃密な秀逸さが朝ドラというフォーマットを突き破っている感があることです。

いくら美味でも朝食でステーキやすき焼きが出てきたらとまどってしまうように、本作はある意味「良すぎた」。
その、欠点ではない欠点を考えると、朝の15分の軽快さに収めながら後をひいた『あまちゃん』の方が、僅差で優れていると言えるかもしれません。

それでも私はカーネーションの方が……。

※リアルもすごい! ドラマのモデルとなった小篠綾子(コシノアヤコ)さんについては、以下の記事にマトメさせていただきました。パワフル感がスゴいです。

朝ドラ『カーネーション』のモデル小篠綾子~最期までパワフル人生92年をスッキリ解説!

文:武者震之助




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【参考】
NHK公式サイト

 





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3位 五代友厚(才助)
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