歴史ドラマ映画レビュー

9/23から再放送!朝ドラ史上最高傑作とも評される『カーネーション』の魅力とは?

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糸子は魅力的だが「よい子」ではない

ヒロインの糸子は、魅力的で精力的な女性です。

しかし、所謂「お嫁さんにしたいよい子」ではありません。

ワーカホリックで、気が強く、したがって押しも強い。

しかも、朝ドラヒロインにはあるまじき恋愛も展開してしまい、視聴者からは賛否両論でした。

糸子は周囲から愛される優等生であろうとするよりも、自分の思うまま、理想にそって生きたいと願う女性です。

そんな彼女は、だんじりから始まり、様々な偏見や壁にぶつかります。

女性として生きることうえでぶつかる壁を、本作はごく自然に描きます。

そんな壁の中には、

「男が浮気しても許されるのに、ナゼ女の場合は周囲から糾弾されるのか」

という難しい問いかけもあるのです。

ここまで際どい問いをぶつけてくる。

それだけでも、本作がどれほど異色で、挑発的かわかるというものです。

 

王道だが陳腐ではない

本作は、朝ドラの「王道」ともいえる、戦前戦中戦後まで生き抜いた、女性の一代記という体裁をとっています。

描写は生真面目で、奇をてらったところはありません。

しかし、それは決して陳腐ではないのです。

独身時代の淡い初恋、姑との対立、育児と仕事の両立で悩む……そうした型にはめ込むことをしないため、本作はどの場面であっても目を離すことができず、息を詰めて見入ってしまいます。

時計代わりにチャンネルを合わせる朝ドラというフォーマットには、あっていなかったのではないか、と思うほど。

朝ドラとして傑作というよりも、朝ドラにはふさわしくないほどの傑作といえるかもしれません。

 

誠意あふれる姿勢

本作最大の魅力は、誠実で妥協がないことです。

成功の鍵は、制作側、特に脚本家の力量だと私は思っています。

コシノ三姉妹の厳しい目に答えられるよう、全力で誠意を尽くした――それが本作の、妥協のない誠意につながっているのではないでしょうか。

本作は、終盤ヒロインを演じる役者が交替します。

様々な憶測が流れましたが、脚本家の明言により、

【老いを侮らず、誠実に表現するため】

であったということがわかりました。

若い女優がいくら頑張って老年期を演じても、どうしてもまがいものになってしまう。

そんなことではいけない――そんな本作スタッフの誠意によるキャストの交替でした。

主演の尾野真千子さんは、加齢に応じて貫禄を出すことのできる、極めて演技力の高い女優です。

それでも本作は、老いを演じるために役者を交替させました。

なぜ朝ドラではこの覚悟を、他の作品でも出来ないのか? と愚痴のひとつも言いたくなります。

この対応ひとつとっても、本作は“いつもの朝ドラ”ではありません。

若手女優が無理矢理孫のいる年齢を演じる、そういう作品とはまったく違うのです。

まるで隙のない本作。

それでも敢えて欠点をあげるとすれば、その隙のなさと言えるでしょう。

あまりに優等生で、反発を感じる人がいるかもしれない。

あまりの濃密さに、1回が15分では耐えられない人がいるかもしれない。

時計代わりに見るには、あまりに熱中してしまう。

そうなのです。

本作の欠点をあげるとすれば、その濃密な秀逸さが朝ドラというフォーマットを突き破っている感があることです。

いくら美味でも朝食でステーキやすき焼きが出てきたらとまどってしまうように、本作はある意味「良すぎた」。

それでも今回で6度目の再放送を迎えるのは「また見たい!」という声が高く、今の時代にも十分通じる力強さ濃密さがあるからでしょう。

本日見逃しても日曜日に一挙6話の放送がありますので大丈夫ですよ!

【放送スケジュール】

2024年9月23日から

◆月~土曜日:午前7時15分~30分(NHK BS・4K)

◆毎週日曜日:午前8~9時30分 6話連続(NHK BS)

◆毎週日曜日:午前10~11時30分 6話連続(NHK4K)

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文:武者震之助

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【参考】
NHK公式サイト(→link

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