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【映画『清須会議』】
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『鎌倉殿の13人』悪役としての彼を作り上げる
映画『清須会議』
大河『真田丸』
大河『鎌倉殿の13人』
近年の三谷3作品に皆勤賞の役者さんは何名かおられます。
その中で際立っているのが、大泉洋さんでしょう。
映画『清須会議』を見た後に大河『鎌倉殿の13人』を振り返ってみると、彼ならば晩年の酷い秀吉をおぞましく演じ切れただろうと確信できます。
むしろ三谷さんは、おぞましい大泉洋さんを描きたくて仕方なかったのではないか?とすら思えてくる。
『鎌倉殿の13人』において、当初はとぼけていて、どこか甘ったれたところもある貴公子・源頼朝。
初回から女装を披露し、序盤はコメディセンスが存分に発揮され、徐々に残忍な一面が顔を出していくようになり、上総広常を酷い殺し方をするあたりからそれはもうドス黒く変貌してゆく。
弟・源義経の首桶を抱いて泣く場面は、忘れ難いものがありました。
『鎌倉殿の13人』のキャストを最初に見たとき、違和感や不安を覚えた方もいたかと思われますが、一通りドラマを見終えてどうでしょう?
あの大泉洋さんは素晴らしかったと思いませんか?
まるで、ひとつの到達点のような、歴史劇における大泉洋さんをああも活用する。
三谷さんという脚本家が、最高傑作を作り上げていく過程として、その第一段階として映画『清須会議』はおすすめできます。
彫刻家は、石を見ただけで像の姿が見えるという。
埋もれた像を取り出すように、作品を生み出すという。
映画『清須会議』とは、三谷さんという彫刻家が、大泉さんという最高の大理石の前で考え込み、掘り出し始めた……そんな過程を見ることができる映画だと私には思えてくるのです。
花をいきいきと咲かせる
三谷3作品の皆勤賞といえば、鈴木京香さんもそうです。
映画『清須会議』を見ていて感じるのは、どうもヒロイン描写がまだ硬いということ。
高嶺の花であるお市。
気高き松姫。
明るいねね。
神秘的な女性刺客。
悪いとは思わない。でも、いいとも思えない。その程度に収まっています。綺麗な花だけど、印象に残らないというか……。
それが『鎌倉殿の13人』になると、ヒロインが実に生き生きとしている。
映画『清須会議』が花瓶の花ならば、大河『鎌倉殿の13人』は生き生きと野に咲き誇る花になりました。
鈴木京香さんのお市は最初から最後まで一本調子には思えました。それと比較すると、『鎌倉殿の13人』の丹後局は、場面によって妖女にもなれば、頼り甲斐のある姉御肌にもなる。そんな千変万化の女性でした。
『鎌倉殿の13人』のとき、三谷さんはインタビューの中で「女性描写が苦手だ」と語っていたものです。
それがこうも進歩する。
あれほどの大作家で、三作も大河を手がけて、まだまだ成長する。その謙虚さと成長性が、三谷幸喜さんの素晴らしさだと思えます。
2022年以降に映画『清洲会議』を見るということ――それは三谷幸喜さんがいかに素晴らしいかを再確認すること。
彼は才能があるから素晴らしいだけではない。
学ぶことを忘れず、どんどん大きくなるところこそ、その魅力の真髄であると思えます。
2013年と2022年を比較し、その進歩の幅を、ぜひ実感してみてください。
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著:武者震之助
※著者の関連noteはこちらから!(→link)
【参考】
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