感染症の日本史

磯田道史『感染症の日本史』/amazonより引用

歴史書籍

新型コロナを歴史の知恵で乗り切ろう 磯田道史『感染症の日本史』書評

2021年5月現在、わが国は未だ新型コロナ感染症(COVID-19)禍の真っ只中にあります。

大阪で感染が急拡大し、緊急事態宣言も延長。

一体このさき日本はどうなってしまうのか。

新興の感染症ゆえに未知な部分が多いのも当然ですが、パンデミックはこれまでに何度もありました。

今回、注目した書籍『感染症の日本史(著:磯田道史)』(→amazon)でも、こう記されています。

歴史をひもとけば「給付金」も「出社制限」も「ソーシャル・ディスタンス」もすでにあった!

おぉー!

過去にも今と同様の給付金や外出制限があったなんて興味深い。

早速、書評を進めたいと思います!

磯田道史著『感染症の日本史』(→amazon

 

パンデミックには歴史学が威力を発揮

この本が発行されたのは2020年9月です。

まえがきにもあるようにこの時点ではワクチンが開発されておりません。

そのため、ワクチンによる防疫の話がありませんがそこを差し引いても読み応えがあります。

「まえがき」を読んでいきますとパンデミックの対策には「総合的な知性」が必要とあります。

これは全くもって同意。

医学やウイルス学などの自然科学の知識は勿論ですが、経済、社会学、心のケアに関する心理学など多岐にわたる分野のあり方が問われます。

そして総合的な知性を要する問題には歴史学が威力を発揮すると。

では感染症の歴史を見る旅に出かけましょう。

 

殿様に天然痘をうつさないよう強制隔離

第三章「江戸のパンデミックを読み解く」は、天然痘、麻疹インフルエンザ、コレラに対する行政や商人の対応が記されています。

今の世の中と違い「殿様にうつさないための隔離政策」の色合いが濃い。

岩国藩では疱瘡(天然痘)にかかった人だけでなく、看病に当たった人、その後、範囲を広げて濃厚接触者をも城下から離れた村に強制隔離しました。

結果、岩国藩では、歴代の殿様は誰も疱瘡にかからなかったそうです。

(徳川将軍15人中14人かかったは6人の間違いじゃないかと思いますが…)

このエピソードで凄いのが隔離費用と生活費を岩国藩が負担したところ!

岩国藩は長州藩の支藩のような存在で、まぁここらへんの説明はややこしいので割愛しますが、石高は3万石と小藩です。

生活費補助はかなりの負担であったと思われますがよく頑張った!

逆に隔離だけして捨て置いたのが大村藩。

山奥に隔離する点は同じであるものの、藩からの扶助はありません。

隔離された時点で7-8割は野垂れ死に。

看病にかかる費用も生活費も家族負担で、医者を頼み、生活物資を山奥まで運搬すると莫大な金額となり中流以下の家庭は疱瘡患者が出たら破産……給付なき隔離政策は悲惨です。

※続きは【次のページへ】をclick!

次のページへ >



-歴史書籍
-

×