『鬼滅の刃』には、そんな風に思えるような鬼もいて、例えば上弦の陸である妓夫太郎と堕姫の兄妹などはそうでした。
しかし、人間時代からロクでもない連中もいて、アニメ版「刀鍛冶編」では、とにかくムカつく二人の十二鬼月が出てきます。
半天狗は以下の記事に譲り、
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本稿では上弦の伍である玉壺を考察してみたいと思います。
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死体から芸術を見出してしまった益魚儀(まなぎ)
玉壺の人間時代の名は、公式ファンブックで明かされました。
益魚儀(まなぎ)といいます。
漁村で生まれた彼は、漁師として生活していました。
ただ、何かがおかしい……。
小動物を殺し、種類の異なる魚同士を組み合わせ、壺に魚の鱗や骨を溜め、そしてそれを芸術だと言い張る様になっていったのです。
周囲もそれを気持ち悪いと思い、気の触れたやつだとして嫌っていました。村八分にする程ではなく、一応、様子を見守っていた。
こうした生活環境から、益魚儀は江戸時代以降の人物かと思われます。
戦国時代ならば小動物ではなく人を殺すこともできますからね。江戸時代でも、徳川綱吉の治世以降のことかもしれません。
日本において庶民にまで動物愛護精神が根付いていったのは【生類憐れみの令】が契機とされ、小動物殺しが嫌われる感性はその時代から濃くなってゆきました。
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そんな益魚儀のことを、村人は、おかしくなったのだと思いながらも、憐れみつつ見守っていたのですね。
そうする理由もありました。
彼の両親は漁に出ていたときに亡くなってしまい、損傷の激しい水死体として見つかっていたのです。
肉親であればトラウマを抱えかねないほどの場面ですが、益魚儀は違いました。
美しい――両親の損傷した水死体を見て、気持ち悪いとか思う前にそう感じ取ってしまったのです。
理屈でどうこうなる話ではなく、そして益魚儀は一線を越える。
自分のことをからかってきた子どもを惨殺すると、その遺体を壺に詰めたのです。
むろん、子供の両親は激怒。益魚儀を二又銛で串刺しにして放置します。
半日経過しても、益魚儀は死にませんでした。
なぶり殺しにされているところへ、鬼舞辻無惨が通りかかります。
そうして鬼にされた彼は、壺と死体というおぞましいマリアージュを、アートとして手がけていくのでした。
死体をアートにする人って?
猟奇的な殺人とアート感覚がぶっ飛んでいる――少年漫画で凄まじい設定ですが、どこか既視感もありませんか?
世の中には、死体で芸術活動をしてしまう人物が存在する。
冷蔵庫もない時代に、死体で遊んでいたら、たちまち大変なことになりそうですが、それでもごく稀に実在してきました。
有名なところでは15世紀フランスのジル・ド・レでしょう。
美少年を着飾らせてから殺し、その首をずらりと並べて「どれが綺麗かな?」と選んでいたという……。
彼は美意識が高く、教育も受けた人物です。それが歪んだ方向へ発揮されたのですね。
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ただし、ジル・ド・レがそんな凶行を重ねられたのは、大貴族という特権があったからこそです。
中世ともなると、犯罪より身分が重視され、なかなか捜査の手が及ばなかった。
一方で玉壺はどうか?
生前の話や、壺の形状からして、前述の通り江戸時代以降の人間と思われます。
しかも、ただの漁師に過ぎないため、連続犯行に及ぶ前に捕まり、鬼にされた。
そこから罪を重ね、上弦にまで上り詰めたということは、生まれ持った資質も大きかったのでしょう。
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