上弦の伍・玉壺

この歴史漫画が熱い!

死体アートに美を見出す上弦の伍・玉壺の異常性を考察『鬼滅の刃』

環境さえ間違っていなければ幸せに暮らせたのではないか?

『鬼滅の刃』には、そんな風に思えるような鬼もいて、例えば上弦の陸である妓夫太郎と堕姫の兄妹などはそうでした。

しかし、人間時代からロクでもない連中もいて、アニメ版「刀鍛冶編」では、とにかくムカつく二人の十二鬼月が出てきます。

玉壺(ぎょっこ)と半天狗です。

半天狗は以下の記事に譲り、

遊郭
遊郭のリアル~鬼滅の刃遊郭編でも話題になった苦海の地獄を振返る

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本稿では上弦の伍である玉壺を考察してみたいと思います。

 


死体から芸術を見出してしまった益魚儀(まなぎ)

玉壺の人間時代の名は、公式ファンブックで明かされました。

益魚儀(まなぎ)といいます。

漁村で生まれた彼は、漁師として生活していました。

ただ、何かがおかしい……。

小動物を殺し、種類の異なる魚同士を組み合わせ、壺に魚の鱗や骨を溜め、そしてそれを芸術だと言い張る様になっていったのです。

周囲もそれを気持ち悪いと思い、気の触れたやつだとして嫌っていました。村八分にする程ではなく、一応、様子を見守っていた。

こうした生活環境から、益魚儀は江戸時代以降の人物かと思われます。戦国時代ならば小動物ではなく人を殺すこともできますからね。江戸時代でも、徳川綱吉の治世以降のことかもしれません。

日本において庶民にまで動物愛護精神が根付いていったのは【生類憐れみの令】が契機とされ、小動物殺しが嫌われる感性はその時代から濃くなってゆきました。

そんな益魚儀のことを、村人は、おかしくなったのだと思いながらも、憐れみつつ見守っていたのですね。

そうする理由もありました。

彼の両親は漁に出ていたときに亡くなってしまい、損傷の激しい水死体として見つかっていたのです。

肉親であればトラウマを抱えかねないほどの場面ですが、益魚儀は違いました。

美しい――両親の損傷した水死体を見て、気持ち悪いとか思う前にそう感じ取ってしまったのです。

理屈でどうこうなる話ではなく、そして益魚儀は一線を越える。

自分のことをからかってきた子どもを惨殺すると、その遺体を壺に詰めたのです。むろん、子供の両親は激怒。益魚儀を二又銛で串刺しにして放置します。

半日経過しても、益魚儀は死にませんでした。

なぶり殺しにされているところへ、鬼舞辻無惨が通りかかります。

そうして鬼にされた彼は、壺と死体というおぞましいマリアージュを、アートとして手がけていくのでした。

 


死体をアートにする人って?

猟奇的な殺人とアート感覚がぶっ飛んでいる。少年漫画で凄まじい設定です。

しかし、どこか既視感もありませんか?

世の中には、死体で芸術活動をしてしまう人物が存在する。

冷蔵庫もない時代に、死体で遊んでいたら、たちまち大変なことになりそうですが、それでもごく稀に実在してきました。

有名なところでは15世紀フランスのジル・ド・レでしょう。

美少年を着飾らせてから殺し、その首をずらりと並べて「どれが綺麗かな?」と選んでいたという……彼は美意識が高く、教育も受けた人物です。それが歪んだ方向へ発揮されたのですね。

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大量殺人貴族ジル・ド・レの所業~ジャンヌの戦友は伝説級の鬼畜也

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ただし、ジル・ド・レがそんな危険な凶行を重ねられたのは、大貴族という特権があったからこそです。

中世ともなると、犯罪より身分が重視され、なかなか捜査の手が及ばなかった。

一方で玉壺はどうか?

生前の話や、壺の形状からして、前述の通り江戸時代以降の人間と思われます。

しかも、ただの漁師に過ぎないため、連続犯行に及ぶ前で捕まり、鬼にされた。

そこから罪を重ね、上弦にまで上り詰めたということは、生まれ持った資質も大きかったのでしょう。

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