天然理心流

幕末・維新

幕末最強の剣術は新選組の天然理心流?荒れ狂う関東で育った殺人剣

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幕末関東というリアル『北斗の拳』を生き延びるため、殺人剣で鍛えまくってきた新選組の幹部たち。平和な時代の武士など、彼らからみたらプロ野球と中学野球ぐらいの違いがあったかもしれません。

幕末期になると、多摩の農民は剣術だけではなく、ゲベール銃による「農兵銃隊」まで組織するほどです。

関東はどんだけ地獄だったんだ……。

しかし、本当の地獄はまだまだこれからでした。

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「天狗党の乱」

関東の強い豪農出身者といえば、相楽総三がおります。

西郷隆盛に見いだされるフリーランス草莽の志士時代、彼は関東で決起した乱に何度も参加しています。

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政局に大きな影響を与えたわけではないため、あまり重要視されませんが、現地住民にとっては迷惑を通り越して地獄そのものであったことでしょう。

そして、その地獄の極みが【天狗党の乱】でした。

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水戸藩の内部抗争から始まった乱は、周辺の村に襲いかかり、強奪、放火を繰り返しました。

この乱の何が恐ろしいかというと、治安が悪化していた関東の人々のタガを外してしまったことです。

「ヒャッホーッ!」
「ホホホーッ!」
「フヒャハハハハーッ!」

もはや思想は関係ねえ、奪ったもんが勝つんだぜ! とばかりに、本来無関係であった百姓も合流参加。

「俺たちぁ尊皇攘夷を唱えているんだーッ、ありがたく金を出しやがれーッ!」

そんなふうに強奪を開始しました。

おそろしいことに、天狗党も反天狗党も、鎮圧にやってきた幕府軍まで、強奪を繰り返すのです。これを地獄と言わずして何と言うのでしょう。

むろん、やられる側も無力ではありません。

いったん天狗党が劣勢になると、住民たちは猛烈に牙を剥き、逆襲に転じます。彼らは天狗党を追い詰め攻撃し、切腹にまで追いやった例もあります。

天狗党の乱で、幕府崩壊よりも先に、関東の治安が崩壊しました。

もはや権力に頼ることはできず、この地方に暮らす人々は、武器をとって自衛するほかなくなっていたのです。

まさに戦国時代に逆戻りですね。

慶応4年(1868年)、戊辰戦争の際には、関東各地で世直しが発生していました。

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武装した世直し勢たちは、東に進む新政府軍によって蹴散らされ、関東はようやく鎮まります。

あとに残されたのは、悪夢のような争乱の記憶でした。

 

明治維新は政権交代であり革命にあらず!?

明治維新は、政権交代であり、フランス革命のような農民主体の革命とは異なると言われております。

それは確かにそうですが、では、民の不満がまったく影響を与えなかったのか? というと、100%そうとは言い切れないでしょう。

幕末期、関東地方の豪農出身者が、歴史において名を残しました。

幕府について戦った新選組は、一般的な武士をはるかに凌ぐ戦闘力を持って活躍した戦闘員として活躍します。

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相楽総三は、薩摩藩の密命を受け、江戸においてテロを行い、戊辰戦争のキッカケを作りました。

彼らが歴史に名を残した背景には、18世紀後半以来の争乱状態が影響を与えていたのです。

江戸の庶民は、確かに長州と薩摩中心の新政府軍を嫌ってはおりました。

しかし当の幕府も盤石ではなく、自壊を始めていた。

そんな最中に育った天然理心流が最強と称されても何ら不思議のないことでしょう。

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文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link

【参考文献】
須田努『幕末の世直し万人の戦争状態 (歴史文化ライブラリー)』(→amazon

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