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【勝海舟】
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「トコトンヤレナ♪」と攻めて来る
一方西軍は「トコトンヤレナ♪」という歌を歌いながら、慶喜を倒す気満々で進軍してきます。
しかも年貢を半減すると掲げているものですから、庶民も大歓迎。
各地の藩も簡単に寝返り、物資すら提供している有り様です。
薩摩の若きリーダー・西郷隆盛もやる気まんまん。
既に配下の赤報隊らを暗躍させて、江戸で強盗、殺人、放火、略奪、暴行といったテロを行わせ、攪乱挑発をしているわけです。
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この状況をひっくり返すにはどうすればよいのか。
勝はいざというときの秘策として「焦土作戦」を考えていました。
脳裏にあったのは、1812年のロシア戦役。
モスクワを焼き払い、侵攻してきたナポレオン軍に大打撃を与えた作戦です。
あの作戦が大打撃を与えたのは、ロシアの寒冷な気候も要素の一つとしてはあると思います。
それはともかくとして、勝は駕籠に乗って自ら出向き新門辰五郎ら火消し、侠客、そんな人々に協力を依頼していました。
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「勝麟さん、任してくだせえ。あっしは火消し長えことやってますから、どこに火ぃつけりゃ燃えるか、わかってますんで」
火消したちは乗り気でした。
その一方で、もう西郷と話を付けたという内容の高札を立てて、江戸の人々をとりあえず落ち着かせます。
さあ、あとは西郷との談判です。
江戸開城
3月13日、薩摩藩下屋敷で第一回の勝・西郷会談が行われました。
これは顔合わせのようなもので、実は勝も前もって自身の決意を西郷に送っています。
派遣されたのは、武芸の達人として知られた山岡鉄舟。
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戦争は避けたいが、もし避けられないとなれば、たとえ自分一人だろうととことん戦うつもりです、と。
そして14日、いよいよ本格的な交渉が始まりました。
・徳川慶喜は隠居し、故郷の水戸で謹慎します(処刑しない)
・城の受け渡し後は、即刻田安家に返還してください
・軍艦・武器はまとめて、寛典の処分が下された後に差し渡します
・城内に住んでいる家臣は、城に出て別の場所に移り、謹慎します
・慶喜の暴挙を助けた者たちには、どうか寛大な処分を下し、助命してください
・暴発の士民に関しましては、鎮定に可能な限り努力します
勝の第一目標は、何が何でも主君である徳川慶喜を殺さないこと。
戦国時代は、城の主が切腹することで配下の者たちの助命嘆願をするような場面がありましたが、徳川の世ではそういうことはありえないのです。
主君の首を渡すのは、武士にとって最低の屈辱なのです。
会津若松城で絶望的な籠城戦が行われたのも、松平容保の首が要求されたためです。
「トップがさっさと腹を切っておさめろ!」ということには、幕末の武士は絶対にならないのです。
とりあえず、両者で話はまとまりました。
しかし、ここで終わりとは行きません。
西郷は、3月15日、会談で得た結果を告げるため京都へ出立。
勝もまだまだ、やることがあります。
将軍様の命を守れ!
勝手に徳川三百年を終わらせやがって!
そう憤り、勝の命を狙う者がうようよしている最中、勝はイギリス人のアーネスト・サトウやハリー・パークスらとも会見し、ことの顛末を報告しました。
当時のイギリスは、生麦事件→薩英戦争を経て、薩摩藩のよきパートナーでした。
そんなイギリスの代表であるハリー・パークスは、はじめは勝によい印象を持っていませんでした。
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それが、勝と腹を合って会談して、態度を改めます。
彼らはすっかり意気投合。慶喜がもしも処刑されそうな雲行きになったら、イギリスに亡命させる計画まで出たとか。
パークスは、勝から慶喜の助命を嘆願されたのでしょう。
このあとパークスは、薩摩藩に圧力をかけます。
「もしも、慶喜公を処刑するようなことをしたら、ヨーロッパ諸国はその非を批判することでしょう。それは新政府によって得策ではありません」
西郷には、既に慶喜を処刑する気は失せておりましたが、ここまでイギリスから言われのですから、まったくそんな気はなくなりました。
どうですか、この勝の行動力。
江戸城無血開城だけではなく、
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主君の慶喜を守るために東奔西走しているわけです。
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