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【松浦静山】
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しかし、この藩校が「維新館」という名前だったため、幕府から「どういうことだゴルァ」(※イメージです)と言われたそうです。
ちなみに「元ネタは詩経(古代中国の詩集)なんで他意はありません」と言い返して事なきを得ました。
ゴリ押しの見本みたいな対応ですね。個人的には好きです。
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書いて書いて書きまくり『甲子夜話』全278巻
また、静山は思い切りの良い性格でもありました。
財政改善と後進の育成という仕事をやり遂げたと思ったのか、まだまだ現役でやっていける46歳のとき、あっさり隠居してしまうのです。
亡くなったのは81歳のときですから、文字通り半生を藩政に(……)、残りの半生を隠居生活に使ったことになります。
長い長い隠居生活で何をしていたかというと、書いて書いて書きまくっていました。
その集大成が『甲子夜話』。
「かっしやわ」と読み、文政四年十一月十七日(1821年12月11日)、甲子の日の夜に書き始めたことからこのタイトルになっています。
「甲子」とは60ある干支の組み合わせの最初の一つで、だからこそ書き始めるのにふさわしいと考えたのでしょう。
ともかく量が膨大で、全278巻。
文庫版も出ていますが、それでも20冊にもなるそうで、いったい何文字あるんだ……。
それだけ筆を握っていてよく腱鞘炎にならなかったもんですよね。
武道の達人でもあったから大丈夫だったんでしょうか。って、関係ない?
三英傑ホトトギスの句や信長から寧々への手紙も
甲子夜話は、戦国好きの間でもちょっと有名かもしれません。
といった話が記載されているのです。
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20年も書き続けていたので戦国武将の話だけではありません。
当時の政治に関することや一大事件、社会風俗、怪談まで、まさに随筆としかいいようがないネタの嵐。
怪談のチョイスもなかなか面白く、
「秋田には雷と一緒に落ちてくる獣(ただし人間に捕まっておいしく料理されるほど弱い)がいるそうな」
なんて話もあります。
隠居になったとはいえ自由に出歩けるわけでもないのに、どこで聞いたんでしょうか。
静山は、他にも蘭学に興味を持ったり、庶民が読むような小説が含まれていたり、「ワシは大名だぞ!(エッヘン)」みたいなコダワリがない人だったようなので、下男や下女のような身分の低い人から聞いたりしたのかもしれません。
『甲子夜話』については、まず文庫で一冊試し読みされるのも良さそうですね。

『甲子夜話 1 (東洋文庫 306)』(→amazon)
ついでに言うと、他にも美人画集めをしていたり、17男16女という超子だくさん、かつほとんどが無事育っていたりと、本人もネタに事欠きません。
ぶっ飛んでいるだけでなく、仕事をきっちりこなした上で著作も残すという、戦国武将や政治家とはまた違ったチートぶりですよね。
松浦静山については以下の書籍もおすすめ。

『殿様と鼠小僧 松浦静山『甲子夜話』の世界』(→amazon)
ぜひ彼を主役にして、映画なり長編ドラマなりを作ってほしいものです。
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長月 七紀・記
【参考】
氏家幹人『殿様と鼠小僧 松浦静山『甲子夜話』の世界』(→amazon)
国史大辞典
長崎歴史・文化ネット(→link)
松浦清/wikipedia
甲子夜話/wikipedia