こちらは2ページ目になります。
1ページ目から読む場合は
【足高の制】
をクリックお願いします。
お好きな項目に飛べる目次
お好きな項目に飛べる目次
「(禄)“高”に“足”す」から足高の制
この歪みをどうすべきか?
吉宗は「家格と身分が吊り合わない場合は差額を出してやるから、身分の低い者も取り立てられたときは安心していいぞ」としました。
これが足高の制です。
「(禄)”高”に”足”す」制度なんですね。
実際、うまくいくんか?
と疑問に思われるかもしれませんが、足高の制により「大岡裁き」で有名な大岡忠相や、治水工事のため在野から抜擢された田中丘隅(きゅうぐ)という学者が才能を発揮しました。
大岡越前守忠相の大岡裁きは一件だけ?吉宗に抜擢された名奉行の実績
続きを見る
しかし、才能があるからといってポンポン給料を上げていたら、幕府の出費がかさみまくりそうな気がしますよね?
そこも吉宗は見越しておりました。
「足高の制の対象になるのは本人だけ」と制限することによって、取り立てられた人の子や孫の代になっても高禄のままということを防ぐ……予定だったのです。
実際は加増分が子孫たちへ世襲されてしまう
一度前例ができると、その後なかなかシステムを変えられないのは今も昔も「お役所あるある」。
足高の制も「一度収入が良くなったのに、何でまた下げられてしまうん?(´・ω・`)」と思われ、当初の狙い通りにはいきませんでした。
加増された分が結局その子孫たちへ世襲されてしまうケースが多かったのです。まぁ、現代人だって一度上がった給料が下がるのはイヤですものね……。
実は江戸時代には、この手の「一度できた前例をめぐる争い」の話がちょくちょくあります。
大体の場合
【大胆な改革を行おうとした若い藩主or藩主に抜擢された人】
vs
【家老を中心とした守旧派】
という構図で、そういうゴタゴタがきっかけでお家騒動に至ったケースも少なくありません。
広い意味では、幕末のアレコレも似たようなものでしょうか。
★
ちなみに武士の生々しいお財布事情のわかる一冊が、ベストセラーにもなった磯田道史氏の『武士の家計簿』(→amazon)です。
エンタメとしても非常に面白い内容ですので、よろしければ一読どうぞ。
あわせて読みたい関連記事
享保の改革は失敗か成功か?目安箱や米政策をはじめとした吉宗の手腕
続きを見る
在任3年で亡くなった六代将軍・徳川家宣は意外とデキる 白石を用いた政治改革へ
続きを見る
大奥の夜遊びスキャンダルに巻き込まれた 間部詮房は屈指の出世人だった
続きを見る
自転車に乗る女性参政権運動家フランシス・ウィラード
続きを見る
大岡越前守忠相の大岡裁きは一件だけ?吉宗に抜擢された名奉行の実績
続きを見る
江戸時代の「大奥」はどんなシステムだった? 気になる側室候補は家柄が第一
続きを見る
長月 七紀・記
【参考】
国史大辞典
歴史読本編集部『歴史読本2014年12月号電子特別版「徳川15代 歴代将軍と幕閣」』(→amazon)
歴史読本編集部『歴史読本2013年1月号電子特別版「徳川15代将軍職継承の謎」』(→amazon)
足高の制/Wikipedia
享保の改革/Wikipedia