日本は昔から魚介食の盛んな国です。
四方を海に囲まれているんですから当たり前っちゃ当たり前ですが、では、何種類の魚が日本近海に存在しているかご存知ですか?
答えは約3,800種(静岡県総合教育センター)。
実に多くの幸に恵まれたものですが、その中で最たる人気なのが、やはりアレでしょう。
2月27日はツナの日――ということで今回はマグロを中心としたお魚と日本文化に注目してみます。
縄文時代から食べられてはいたものの
日本人がマグロを食べ始めたのは、貝塚ができた時代=縄文時代のことでした。
しかし、その大きさと傷みやすさから扱いきれず、下手物もしくは下層民の食べ物とされていた時代が長く続きます。
今でも「血生臭くてキライ」という人もいますしね。
冷凍・冷蔵技術のなかった頃は余計気になったでしょう。
ちなみにカツオは?
というと、戦国時代は鰹節に「勝男武士」という字を当てるなど、もう少し早くから親しまれていました。
カツオはマグロより小さく、生けすに入れておいたり鰹節などへの加工がしやすかったので、勢い流通量も伸びたんですね。
大きさ的には、カツオほぼ0.5m〜1mに対し、マグロは種類によっては4.5mを超えるものがあるなど、体長だけでもかなり違う。
扱いが変わってくるのも納得できる話ですね。
醤油と寿司の台頭が一気に地位を向上させる
マグロが広まりにくかったのは、塩漬けに向かないためという理由もありました。
他の多くの魚は塩漬けにして日持ちさせ、味を良くすることができます。
しかし、マグロは塩に漬けてしまうと味が悪くなってしまう。
もっともヨーロッパ地中海周辺の国ではマグロの塩漬けが生み出されており、やり方や気候次第なんでしょう。当時の日本人がこれを知ったらナ、ナンダッテー!!とばかりに食らいついたかもしれません。
こうした様々な理由で
【獲れるのに人気がない食材】
だったマグロの地位が上がったのは、江戸時代中期、こいくち醤油が広く出回るようになってからでした。
それまで醤油といえばたまり醤油が主で、生産地が近畿地方だったため、出荷量が需要に追いついていなかったのですが、こいくち醤油が江戸周辺で生み出されたことによって解決されたのです。
どこの誰が発見したのかは不明ですが、いつしか
「マグロを醤油に漬けてみろ!うまいぞ!!」
という噂が広まり、両者の消費量が一気に拡大。
同時期にファーストフードとして確立し始めていた握り寿司屋も「漬けマグロは酢飯にも合うじゃないか!」と目をつけ、人気を博しました。
猫さえ見向きもしない 大トロ
当時の寿司屋は、今のような高級食材ではなく、屋台で立ち食いするもの。
流行に乗っかるのも大事なことでした。
こうして主に関東でマグロへの評価が変わり、その後、冷凍・冷蔵技術が進んだことで刺身としての需要も出始め、少しずつ人気食材としての地位を固めていきます。
今や高級品の代名詞・大トロに至っては、評価が定まったのはなんと1960年代、ごくごく最近のことです。
明治時代までの日本食はあまり油脂の多い食材を使わなかったので、当時の人々の口に合わなかったんでしょうね。
西洋料理が入ってきたこと、戦後生活が洋風化したことで日本人全体の食の好みが変わったためとみられています。
それまでは「猫またぎ」=「猫も食べないほどの部分で、食べ物ではない」という見方すらあったとか……あぁ、もったいない。
養殖や量産技術の研究は進み やがて実現へ
こうしてマグロは日本人(特に関東人)にとっては欠かせない食材にりました。
が、最近は消費量の多さから、外国に
「アンタらちょっと獲りすぎ」
と釘を差されるケースも出ています。
日本では、魚肉も目玉も頭も基本的に全部美味しくいただいてる上、人間の食用に向かないものはペットフード用にするなど、ほぼ残さず利用しています。
人口減少傾向ということもあり、これからマグロの消費が急拡大する懸念はないはず。
とはいえ近隣諸国の乱獲も懸念されるところで、今後、各国協調して漁獲高を調整などは続けていかねばならないでしょう。
同時に日本では、企業や大学でのマグロ養殖研究がかなり進んでいるようです。
特に有名なのが「近大マグロ」ですね。
ご存知、近畿大学で取り組み、世界で始めて完全養殖にも成功、市場へも出荷されています。
また、東京海洋大学でもサバにマグロの精子を作らせて量産を目指す研究が行われており、実現が期待されています。
クールジャパンもいいですけど、実効性の高い、こうした開発にもお金が回るといいですね。
ひいては昔からの食文化も大事にすることに繋がると思います。
長月 七紀・記
【参考】
マグロ/wikipedia