パンダの歴史

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外交に翻弄されるパンダの歴史~日中友好50周年を機に振り返る

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サブカルチャーのお約束となるパンダ

日本人とパンダとの関係で欠かせない作品があります。

日本初の長編アニメカラー映画『白蛇伝』です。

中国古典のラブストーリーを題材としたこの作品には、パンダが出てきます。

原作は四川から遠く離れた杭州が舞台。

原作者の馮夢龍だってパンダを知っていたとは思えませんが、それでも中国を題材にするならパンダを出さなくちゃ……と、その経緯は不明ながら、愛嬌を振り舞くキャラクターとして登場しました。

白蛇伝
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日本の人気漫画・アニメにパンダが出てくる現象は今も御馴染みですね。

古くは『らんま1/2』であり、現在では『呪術廻戦』が代表的でしょう。

『らんま1/2』は、中国の青海省バヤンカラ山脈の拳精山(けんせいざん)にある「呪泉郷」で呪いにかかったという設定ですが、四川省から遠く離れた土地でパンダが溺れたとはちょっと考えにくい……。

にもかかわらず、象徴としてわかりやすいから登場させられるのでしょう。

パンダは笹をずっと食べている、基本はおとなしい生き物ですが、日本の格闘ゲーム『鉄拳』シリーズでも、アメリカの『カンフー・パンダ』でも戦っていますね。

中国には、他に格闘に適した動物はいる。それでも人気やイメージ、愛くるしさからパンダが採用されるのでしょう。

「日本って、中国というとお団子ヘアーとパンダを出すよね」

中国ではそんな風に認識されているほどです。

 


パンダか? ドラゴンか?

今、アメリカには

◆パンダ・ハガー(パンダを抱くもの)

◆ドラゴン・スレイヤー(龍を屠る者)

という言葉があります。

前者が親中派、後者が反中派という意味であり、パンダは抱くもの、龍は殺すものという、相反するイメージがあります。

愛くるしい、アイツ――どれだけ中国に反発しようと、パンダに危害を加えようとは思えないのでしょう。

WWF(世界自然保護基金)のマークもパンダが用いられています。

◆WWF パンダロゴが生まれたわけ(→link

一目でわかる白と黒の愛くるしい姿は、龍にはない愛嬌を体現しているんですね。

2022年は日中友好50周年の年でした。

様々なイベントも開催される一方、政治外交面から見た中国の危険性を懸念する声も多く、現在、両国の関係も決して順風満帆とは言えないでしょう。

だからといってパンダを貶めるような声はありません。

パンダは世界で愛される存在になったのです。

なんと不思議な動物でしょうか。

現代では中国の象徴であるにもかかわらず、多くの人々に認知されたのは19世紀末のこと。

以降、二度の世界大戦を迎え、冷戦も乗り越え、20世紀の激動に揉まれながら世界中で愛されるようになりました。

日本からすれば、虎や龍の方がずっと付き合いが深く長いにも関わらず、今ではパンダの方がはるかに格上の存在。

初めて日本の動物園に来てから半世紀を経ても、その熱意が薄れることはありません。

コロナ禍の中、上野動物園での公開が再開されると、たちまち檻の前には人だかりができました。

実は、生態も謎が多く解明されていないところがまだまだあるパンダ。

生物として不思議なだけでなく、歴史的な外交ツールとしても、今なお唯一無二の存在です。


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文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link

【参考文献】
家永真幸『中国パンダ外交史』(→amazon
黒柳徹子と仲間たち『パンダとわたし』(→amazon
野嶋剛『新中国論』(→amazon

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