御伽草子

月岡芳年『浦島太郎』/wikipediaより引用

源平・鎌倉・室町

『御伽草子』で最も有名なお話は何?鎌倉~江戸期に成立した昔話集

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絵が多いのは「絵解」の影響だった

江戸時代に大々的に出版される前。

室町時代末期には、既に『御伽草子』の挿絵入りの本が出ていたようです。

それを受けて江戸時代の『仮名草子(女子供向けにひらがなで書かれた物語集)』や『浮世草子(大衆小説)』などが出てきたのかもしれませんね。

また『御伽草子』に絵入りの本が多いのは、当時「絵解(えとき)」という職業があったからという見方もあるようです。

絵解とは「仏教的な絵画の意味を、字が読めない・学問と縁がない層の人々に解説する」というのが仕事です。

女性の絵解「絵解比丘尼」を描いた絵(月岡芳年)/wikipediaより引用

『御伽草子』に入っている物語も、仏画と同じように読み解いて語り聞かせられ、世の中に広まったのでしょう。

絵解は、民謡などの歌を歌いながら読み解くこともあったらしいです。

なので、数十年前の日本でまだメジャーだった【紙芝居屋さん】みたいに、物語をしながら合いの手を入れたり、演出する人もいたのかもしれません。

この仮定が正しければ、ほとんどの物語に特定の作者がいない(わからない)理由にもなります。

「平家物語の作者は一人ではない」とされているのと同じですね。

もっとも、日本では物語を書き写す際に

「あ、いいこと思いついた! ここをこうしたほうがもっと面白くなるから、ちょっと変えて書いちゃえ!」

ということが珍しくなかったので、物語の作者がわかっているからといって、当時そのままの文章である可能性は非常に低いのですが……。

これこそまさに『源氏物語』がいい例ですね。

光源氏と藤壺の宮や六条御息所などの出会いのシーンがなかったりしますし。

 

清水寺が大人気

御伽草子の中には、少なからず僧侶や盲人、山伏などが登場する話が含まれます。

ゆえに「寺社もしくはその関係者が神仏の存在を強調するために作り、広めたのではないか」という説もあるようです。

今の日本人でも「悪いことをするとバチが当たる」とか「お天道さまが見てる」みたいな、ボンヤリとした概念は残されておりますよね。

そんなわけで御伽草子には、今日我々が思い浮かべる「昔話」の多くが含まれています。

なにせ数が多いので、物語の設定や登場人物は様々で、舞台にはある程度傾向がみられます。

特に清水寺は40もの物語に登場するとか。

また、人間以外の動物や鳥・魚・虫、はたまた植物や道具、妖怪など、登場キャラクターのバリエーションが非常に多いのも特徴です。

これも公家社会の物語にはあまりない傾向。

しかもただ出てくるだけじゃなく、動物同士で戦をしたり、ネズミが人間の女性と結婚したり、立派に(?)主役級の扱いを受けているのですから面白い。

余談ですが、グリム童話にもソーセージを登場人物(?)にした話がいくつかあります。

ドイツだから? と言われればそれまでですが、ソーセージ同士で殺し合ったり、ソーセージが鍋の中を泳いで味をつける役目をしていたり、なかなかシュールです。

一体どんな人が考えたんでしょう。

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