こちらは3ページ目になります。
1ページ目から読む場合は
【御伽草子】
をクリックお願いします。
お好きな項目に飛べる目次
お好きな項目に飛べる目次
西洋の物語に「全滅」が多いのに比べ……
西洋の物語と比べると、日本の物語は「最後には誰かが報われる・救われる」という話の比率が多いようにも思えます。
グリム童話をはじめ、西洋の物語って登場人物が全滅という話が多いんですよね。
日本ではもうちょっと報われる話になっていたりしますが、原典は読んでて虚しくなるというか、まさに「そして誰もいなくなった」状態。
物語ではありませんが、マザー・グースも実際にあった殺人事件を茶化していたりします。
西洋の創作物は基本的にエグいんですよね~。価値観の違いといえばそうですが。
例えば、有名な"Who killed Cock Robin"(誰がコマドリを殺したか)では、最初に犯人が名乗り出ているのに、その罪を問わずに葬式の準備を事細かにやり始めるというリアルさです。それでいいんか~い。
「犯人のほうが身分が高いから手出しできない」とか、そういう隠喩なんですかね。
そもそも「これらの質問をしているのは誰なのか」などなど、疑問が次から次へわいてきます。
そうかと思えば、"Twinkle, twinkle, little star"(日本では「きらきら星」)の元ネタがフランスのラブソングだったりします。
「欧州事情は複雑怪奇」としかいえません。
源頼光、義経、坂上田村麻呂がやっぱり人気!
日本の場合は「因果応報」を含んでいるものも多いです。
その裏返しとして「善人が最後に得をする」ようになっている話が多いですね。
これはやはり仏教的な観念からか、あるいはこれまた日本特有の「現世利益を重んじる」傾向からでしょうか。
他には、源頼光や坂上田村麻呂が妖怪退治をした話など、ヒロイックファンタジー的なものも多い。
中でも源義経は、一ジャンルといっていいほどです。
戦の天才だった源義経~自ら破滅の道を突き進み兄に追い込まれた31年の生涯
続きを見る
義経が長い間「庶民にとってのヒーロー」と扱われてきたのも、『御伽草子』などで庶民に語り継がれてきたから……という面が大きいのでしょう。
武士の話は、能や浄瑠璃など他の芸術のネタ元になっていることも多いので、どこかで触れておくと親しみやすくなりますね。
御伽草子には、一寸法師など有名な話がとても多いのですが、ここではちょっとマイナーな話を紹介させていただきたいと思います。
「猿源氏草子」
いわし売りの男の恋愛と出世が主軸となっています。
三島由紀夫によって、他の草子物語と合わせ「鰯売恋曳網」という歌舞伎の演目にもなりました。そちらでご存じの方も多いかもしれませんね。
「文正草子」
美貌の姉妹とその両親が全員出世する、という珍しいタイプの立身物語です。なんて気前が良いんだ。
「三人法師」
室町時代初期のある日、高野山で修行している三人の僧侶たちが自らの出家した理由を語る……というものです。
足利尊氏がちょっとだけ出てきて、恋のキューピッドみたいなことをしていて面白いです。
これは青空文庫で現代語訳が読めますので、ご興味のある方はぜひ。
★
古文の類はどうしてもハードルが高く感じます。
が、御伽草子のような短編から触れるのも切り口のひとつです。
元が庶民の間で広まったものですから、和歌ほど技巧的でもありませんし、「あの話って元はこうだったんだ」というような発見もあるかもしれませんね。
あわせて読みたい関連記事
戦の天才だった源義経~自ら破滅の道を突き進み兄に追い込まれた31年の生涯
続きを見る
戦の天才だった源義経~自ら破滅の道を突き進み兄に追い込まれた31年の生涯
続きを見る
『小倉百人一首』の作者100名にはどんな人がいた?著者を短評100本ノック!
続きを見る
『新古今和歌集』の歴史と20首に注目!後鳥羽上皇が定家に編纂させた
続きを見る
平安~室町で21回も選定された 勅撰和歌集は『三代集』と『八代集』に注目なり
続きを見る
江戸の三大狂歌師(橘洲・南畝・菅江)誰ウマな洒落に思わずクスッ
続きを見る
長月 七紀・記
【参考】
国史大辞典
御伽草子/wikipedia