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日本史オモシロ参考書 明治・大正・昭和時代 その日、歴史が動いた

夏目鏡子『漱石の思い出』を読めば、文豪・夏目漱石が可愛く見えてくる

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文豪って、とっつきにくいですよね。

真っ先に思い浮かべるのは、夏目漱石や森鴎外あたりでしょうか。
写真は白黒だし、カメラ目線をくれないし、学校の授業では作品名ばっかり覚えさせられて萎える――。
大半の方がネガティブイメージを持たれているはずです。

しかーし!
それは、教科書や参考書を作る側に問題があるのでして、彼らは決してつまらなくない。むしろ、本来は面白キャラの人が多い。
そうでなければ、大衆にウケる文学を書くことなどできず、現代にまで名を残すなど不可能です。

要は【勉強】という枠を取っ払って見れば良いのであって、以前、紹介した福沢諭吉さんなどもその一人でしょう。

福沢諭吉は堅物どころかファンキーでロック!?『福翁自伝』で腹筋崩壊します

彼の自伝には、
諭吉「勉強したいから家を出ていきまっせ」
母ちゃん「おぅ、どこへでも勝手に行きな」
というような、ぶっ飛んだエピソードがたんまりと収録されているのです。
慶應義塾というエリート輩出校を作り、1万円札の肖像画にまでなった御方が、こんなロックな人だったとは思いもよらない話でしょう。

そこで今回注目したいのは夏目漱石……ではなく、その妻・夏目鏡子(なつめ きょうこ)さん。
彼女の書いた『漱石の思い出』から、日本一有名な文豪の日常に切り込んでみましょう。

 

漱石作品は青空文庫でタダですよ

まず本題に入る前に、夏目漱石の作品について。

国語の授業で取り上げられやすいのが『こころ』や『吾輩は猫である』ですから、漱石=長くてややこしい話が多いと思われがちですが、軽快な短中編もたくさんあります。
当コーナーイチオシは「草枕」です。
青空文庫なら無料で読めます(コチラから)。全部読むのがかったるい方も、ぜひ最初の2ページを読んでみてください。特に悩みを抱えている方にオススメです。

さらに、漱石の場合は自伝『硝子戸の中』もありますが、今回は妻・鏡子の視点から書かれた回想録『漱石の思い出』に注目です。

ではテーマごとにまとめてみましょう。

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・新婚当初

鏡子はいわゆる「山の手のお嬢さん」で、結婚するまでまともに買い物に行ったこともなかったそうです。
しかし漱石も新婚当初から「俺はたくさん勉強しないといけないから、お前に構ってはいられない」と宣言するくらいだったので、ある意味ピッタリな夫婦だったのかもしれません。
その割に子沢山ですけどね。夜は別なんでしょうか。

・お金に困った話

漱石はお金に無頓着な質で、作家としていくらかの作品が世に出るまで、かなり苦しい生活でした。
特に漱石がイギリスへ留学していた頃は、鏡子の元に入ってくるのが学校の休職手当二十五円だけ、という状況。これは公務員の初任給の半分程度です。
休職中だから当たり前……といえないこともないですが、幼い子供二人を抱えた鏡子は、実家の離れでかなりの貧乏暮しをしていました。

そのため、あっちこっちにお金を借りるやら、それでも漱石の元義父などから無心をされるやら、苦労が絶えなかったのです。
漱石が帰国するときにも、さらに借金をして身の回りのものを整えています。

「漱石の印税が入るようになってから、来客用の座布団や自分たちの洋服をこしらえた」とか「印税が定期的に入るようになって、やっと質屋に入れていたものを出せた」といった、実にリアルな話が書かれています。

漱石は家計のことは一切妻に任せていたため、妻のこうした苦労をほとんど知らずにいました。
「吾輩は猫である」が出版されてからお金の話をしたときに初めてこういったことを知り、絶句していたといいます。
幸い、それ以降は暮らし向きに困ることはなかったそうです。

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・犬

漱石といえばやはり猫のイメージがありますが、かつては犬を飼っていました。
明治三十三年ごろに夏目家で飼われていたその犬は、結構な問題犬だったといいます。
通行人に吠えまくるのはもちろん、あるとき警察官にまで吠えかかったり、その警察官の奥さんに噛み付いたりするほどでした。その奥さんは夏目家の前に朝早くゴミを捨てていくので、元からよく思われていなかったそうですが。

漱石がその辺を知っていたのかどうかはわかりませんが、「犬だってよくよく人を見て吠えるのだから、怪しい人相や言動をするほうが悪い」と言い張り、警察官に「犬を出せ」と言われても頑として譲らなかったといいます。

が、ある日漱石が夜遅く帰ってきたとき、その犬に噛みつかれてボロボロにされるという”事件”が起きます。まさに「飼い犬に手を噛まれる」になったわけで、それ以降は流石の漱石も、何も言えなくなってしまったのだとか。
その犬は引っ越しのときによそへ貰われていったとのことです。もしも漱石が作家になるまで飼われていたら、犬がキーキャラクターとして出てくる小説も書いていたかもしれませんね。

・泥棒の話

明治時代は、現代と比べるとかなり物騒な時代でした。
窃盗や殺人なども多く、新婚の時期から後々まで、夏目家も複数回泥棒に入られています。
もちろん困ったことなのですが、笑ってしまうのがある春の日に入った泥棒の話です。

これも原稿料が入ってくるようになってしばらく経った頃のことなのですが、夏目夫妻と子供たちの衣類が一切合切盗まれてしまったことがありました。
当然着るものに大層困ったのですが、幸運にも一週間ほどで犯人が見つかり、ほとんどの衣類は戻ってきたといいます。
まだ貧乏暮しが響いていた頃なので、盗まれる前は破れたところを乱暴に縫い直したものなどもあったのですが、戻ってきたときには多くの服が綺麗に縫い直してあったのだそうです。
おそらく、泥棒が古着屋に少しでも高く売るために直したか、売られた先で手入れされたか、どっちかでしょうね。前者の場合「そんな技術があるなら、その道で生きていけよ」という気もしますが……廃業したんですかね。

物が戻ってきたとしても泥棒に入られると気分が悪いものですが、夏目家では「こんな親切な泥棒なら、一年に一回くらい入ってくれたらいいのにねw」と笑いあっていたそうです。
鏡子は『思い出』の中でいろいろな人のことを「豪の者」と評していますけれども、現代人からすると夏目家の人々も大概ゲフンゲフン。この時代では珍しくなかったんですかね。

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・猫

有名な「吾輩は猫である」のモデルになった猫は、明治三十七年の夏に夏目家に出入りし始めた子猫でした。
「鏡子は最初嫌っていたが、漱石が「何度も入ってくるんなら、うちへ置いてやれ」と言われて嫌々飼い始めた。
だが按摩師のおばあさんに「これは福猫ですよ」といわれてから可愛がるようになった」
……というのも有名なエピソードですよね。

漱石が朝、腹ばいになって新聞を読んでいると、この猫が背中によく乗っていたのだそうです。なにそれかわいい。
漱石の神経症はこの頃も治っていませんでしたが、明治末期~大正初期にかけて和らいだそうなので、猫の影響も少しはあったのかもしれませんね。
現代では「動物を撫でると、愛情ホルモンであるオキシトシンが出て精神衛生に良い」ということがわかっていますし。

これ、オモロイから読んでみてwww

こんな感じで、『思い出』には小説中からはうかがえない、漱石のさまざまな面が記されています。イメージが変わった方も多いのではないでしょうか。
参考書や勉強がイヤになったとき、あるいは「小説は苦手だけど、何かためになる本を読みたい」と思ったときなど、お手にとってみられるのも良いかと思います。

「最近の中高生は読解力がない」なんてニュースが先日出ていましたが、それは面白い本を知らないまま、お堅い本ばかり押し付けられるからであって、軽く読めて面白い本を見つけられれば、多少は読書に親しめるのではないでしょうか。

我々大人はただ「本を読め!」「最近の若者は!」なんて怒るのではなく、「これ面白いから読んでみw」とかるーく勧めていきたいものです。

長月 七紀・記




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