世界史好きにも日本史派にも、ぜひともオススメしておきたい一冊――歴史好きの知人からそう自信を持って推奨された新書があります。
『オスマン帝国-繁栄と衰亡の600年史 (中公新書)』(→amazon)です。
わかります…………。
皆さんの戸惑いが手に取るようにわかります。
戦国幕末史でもなく、西洋史でもなく、はたまた中国史でもない。
歴史好き日本人にとっても、かなりマイナー感のあるジャンル。
「オスマン帝国」関連本のドコがオススメなのか?
そんな偏見は今スグ捨ててください。
兎にも角にも本稿を一読いただいてからご判断いただければ幸いです。
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オスマン帝国? オスマントルコじゃなくって?
本書を手にして、まず皆さんが抱く疑問。
それはこうでしょう。
なぜ「オスマントルコ」ではないのか???
なぜ帝国なのか?
本書は、そのことをきっちりと説明します。
「オスマン帝国は、むしろ非トルコ系による支配である」
な、なんだってぇええええ!(✽ ゚д゚ ✽)
ここでハッとします。
私はどこまで、どの程度、オスマン帝国を知っていたのか。
実は何も知らなかったんでは?
考えてみれば、世界史で勉強してそれっきりかもしれず、本書の表紙を改めて見直してみました。
「繁栄と滅亡の600年史」
600年と来たもんです。
言われてみれば、とてつもなく長い。
実は私、以前、とある観光地で首をひねったことがありました。
【江戸幕府は世界屈指の長い政治体制】と書かれていのです。
本当か?
本当に江戸時代は世界屈指なのか?
確かに鎌倉・室町と比べたらそうだろう。
しかし、範囲を【世界】に広げてしまったら、もっと安定した国もあったとあるはず。
と思ったらオスマン帝国は600年じゃん!
格が違うじゃん!
他の国とは違って当然 まずは偏見を捨てて学んでみよう
本書を読んで痛感したことがあります。
オスマン帝国を語る上でのシステムを、我々がいかに誤解してきたか、ということです。
なぜ、そんな偏見が生まれてしまったのか?
それは、どうしたって西洋の目線を通して見てしまうからでしょう。
ざっと例を挙げてみましょう。
各項目 | 説明 |
---|---|
イスラム教 | キリスト教の目線を通して、一段低く、非合理なものとして見ていませんか? |
宗教への寛容性 | 西洋諸国のように、夫婦で宗教が異なることがタブーとなりはしない。 キリスト教徒であるギリシャ系やウクライナ系の女性も、スルタンの子を産むことがありました。 |
ハレム | 秩序はあったし、ルールもある。 それなのに、西洋の宮廷と比較して、安易に酒池肉林のようなものとして見ていませんか? |
王子と母 | 母親が違っていても、王位継承順位に影響はさしてありません。 母親の身分もさして考慮されないため、奴隷が母親でも何ら障害はないのです |
奴隷 | マムルークはじめ、オスマン帝国の奴隷はローマ帝国や西洋諸国の奴隷とは異なります。 このことなくして、オスマン帝国を理解できません |
偏見という厄介なフィルタを通してみると、野蛮とか、後進性のあらわれだとか、感じてしまうかもしれません。
まずは、その偏見を捨てること。
そこから始めなければ、何も得られるものはありません。
西洋史とも違う。
東アジア諸国とも違う。
このオスマン帝国ならではのルールを、本書を読みながら頭に叩き込みましょう。
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