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【オスマン帝国】
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東西がぶつかる国、魅力的なスルタンたち
オスマン帝国の魅力は、やはり東西がぶつかりあうことでしょう。
東からは「タタールのくびき」。
モンゴル、そして中国。
西にはロシアやコンスタンティノープル。
戦士だって、キリスト教もいればトルコ系もいる。
敵だって、有名どころでは、ティムールや、ドラキュラ伯爵のモデルである「串刺し公」ことワラキア公ヴラド・ドラクルまで多種多様。
歴史の主役たるスルタンも魅力的で、文化政策に力を入れ、名君「聖者王」と称されるのがバヤズィト2世です。
そんな先代の宰相であれど容赦なく処刑し、「冷酷王」と呼ばれ畏怖されたセリム1世です。
彼らを日本の戦国時代でたとえたら誰でしょう――。
織田信長?
上杉謙信?
中国史であれば――。
曹操?
諸葛亮?
本書を読んでいると、自分が知っている歴史とスルタンたちを比較してどう評価するのか止まらなくなってきます。
歴史を学ぶ楽しみ。
そんな原点を思い出させてくれる、実に芳醇な一冊なのです。
いやぁ、新書でここまでマトめてくれるとは!
歴史はどこの国だからよいというものではないはず。
オスマン帝国だって、ものすごく魅力的。そんなごくごく当たり前のことが伝わって来ます。
なんとも豪華かつ壮麗な歴史なのです。
冷静な筆力と歴史感が信頼できる
本書の魅力は、抑えていて冷静な語り口です。
残酷な事件や、衝撃的な展開もあります。スルタンには、冷酷や壮麗といったあだ名もついています。
しかし、そのことを強調するわけではなく、冷静に書いていくのです。
極端な事件の意義、背景、最新の研究ではどう捉えているのか。
その辺をキッチリ説明してくれますので、偏見なく頭に入れることが可能です。
「600年を一冊でまとめること」の難しさを入れていることも、実に信頼感があります。
仕事や研究をしっかりこなす方こそ【これ一冊でわかる】だの【すっきり網羅】だの、そういうイージーなことは書かないものです。
「悪妻」とされた妃への目線も、実に信頼感が持てます。
悪妻に罪をかぶせているのではないか、後世の誇張があるのではないか――そうワンクッションを置いているからこそ安心して読めるです。
物語と歴史研究は違う。
常にトーンダウンを考えねばならない。
そんな信頼感のあるスタンス。
この一冊は、間違いなく信頼できる。
これぞオスマン帝国を学ぶ上で、一冊目とするにふさわしい――そんな安心感があるんですね。
一人でも多くの方に読んでいただきたい。
自信をもって、そう勧めたい一冊です。
文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link)
【参考】
『オスマン帝国-繁栄と衰亡の600年史 (中公新書)』(→amazon)