グレンコーの虐殺

グレンコーの虐殺の後を表す一枚の絵/wikipediaより引用

イギリス

グレンコーの虐殺が凶悪~安心させて殺すレッド・ウェディング元ネタ

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グレンコーの虐殺
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「行商とキャンベルはお断り」

2月13日、彼らは容赦なくグレンコーの住民に襲いかかりました。

そしてマキーアン以下、子供を含めて38名が惨殺されるのです。

不幸中の幸いか。

村人の多くは脱出できました。

人口密度の低いスコットランドでの事件ですから、犠牲者数もさほど多くはありません。

しかし、グレンコーの人口を見れば、十分の一もの犠牲者が出た計算です。

40名以下で虐殺とは大げさな、と思われるかもしれません。

しかし「虐殺」の定義に人数は関係ないでしょう。

ともに食事をとった相手を急襲して殺す。しかも、イングランド政府軍の助けを借りて。

この陰湿な手口は深い恨みを残しました。

屍にすがりついて泣き叫ぶ女性の絵が何枚も描かれ、惨劇の様子は歌に残されて語り草となるのです。

以降、キャンベル氏族は卑劣な者として誹りを受け、肩身の狭い扱いを受けます。

グレンコーのパブには「行商とキャンベルはお断り」のサインが掲げられています。

今なお残る恨みの「The sign」photo by Paul Hermans/wikipediaより引用

しつこいって?

やられた側は忘れないもんです。

こちらのホテル件パブ(→link)には、この看板が現在も存在します。

 

フィクションで蘇る悲劇と怒り

犠牲者数は少なくとも、やり方が卑劣だと非難されたグレンコーの虐殺

この虐殺はまた注目を浴びました。

HBO製作の大ヒット海外ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』です。

同劇中で屈指の惨劇である「レッド・ウェディング(シーズン3第9話「キャスタミアの雨」に収録)」が、この事件から影響を受けていると原作者のG・R・R・マーティンが種明かししたのです。

この場面の酷さは、何と言ってもともに食事を取って油断している相手を容赦なく殺すことです。

結婚式を迎えて安心しきっていたスターク家の人々が、突如、片っ端から殺されてしまう――そんなあまりに残忍な殺害方法に視聴者は驚き、憤激しました。

「彼らは信じていたのに! 一緒に食事までしたのに! なんで殺すんだ卑怯者!」

この場面を見た視聴者の怒りは、グレンコーの虐殺のニュースを聞いた人々と似たようなものであったことでしょう。

優れたフィクションが、当時の人々が味わった怒りまで呼び覚ましたのでした。

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文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link

【参考文献】
リチャード キレーン/岩井淳/井藤早織『図説 スコットランドの歴史』(→amazon

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