成立過程を聞けば、なんとなくその歴史も理解できるもので。
「移動がラクだから!」
「獲物を追いやすいから!」
という感じで人間の本能が道具を発達させ、そしてそれが遊びやスポーツへと発展したことがわかります。
しかし、冬季五輪にも採用されている競技の中で、一つだけ『なぜ、こんなものが生まれたのだろう?』と、首をヒネらざるを得ないものがあります。
カーリングです。
漬物石みたいな大きな石を氷上でスベらせて、中心を取る――。
ルールは極めてシンプルながら、だからと言って、どうして石ころを転がそうだなんて発想したのか?
ご理解できる方は少ないでしょう。
そこで本稿では、この競技がいかにして生まれ、競技化されていったのか。
カーリングの歴史を振り返ってみたいと思います。
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16世紀のスコットランドで誕生
ウィンタースポーツの中心は、やっぱりスキーとスケートでしょう。
実際、その歴史もかなり古く、
スキーの歴史4500年
スケートの歴史3000年
とされています。
スキーの歴史は4500年!紀元前からの狩猟具が武具となりスポーツへ
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実は3000年もの歴史があるスケート 最初は動物の骨で滑っていた
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では、カーリングは?
まずは発祥地から遡ってみますと、これがなかなか意外な国でスコットランド。
時代は16世紀頃、つまり約500年の歴史となります。
少しジックリ考えてみれば、妥当な地理条件かもしれません。
スコットランドは美しい湖沼で知られる地方です。
グレートブリテン島の北部に位置して寒さは厳しく、冬場になれば河川や湖が凍結、それでいて積雪量が多くはない。
納得の条件ですよね。
実際、スコットランドの湖の水を抜いてみると、16世紀初頭の原始的なカーリングストーンが発見されることがあるそうです。
スターリングという都市には、世界最古のカーリング石も保存されています。
「轟音のゲーム」と呼ばれていた
「カーリング」という単語の初出は16世紀です。
スコットランドのパースで印刷された、ヘンリー・アダムソンの詩が出典でした。
それまでは「轟音のゲーム」と呼ばれていました。
石のぶつかる音が大きかったからですが、印象深い名前でありますね。
なお、「カーリング」という語の由来は、ストーンを投じるときのモーションを「カール」と呼んだことから来ています(諸説あり)。
紳士のスポーツ
カーリングは、スコットランドで盛んだった、とあるスポーツと関係が浅くありません。
ゴルフです。
・グリーンの上にボールを乗せて芝目を読んでカップインさせる
・氷上のデコボコを読んで石を滑らせ中心に寄せる
ゲームの主目的が同じ構造であることに加えて、審判員が存在しないセルフジャッジの伝統も、共通しています。
ゴルフもカーリングも、紳士のスポーツです。
敵に勝っても露骨に喜ぶ、不正を働くような、そんな行為を慎むのがマナーであり、ルール。
もう勝ち目がないとわかったら、潔く負けを認めて相手を称える――そんなスコットランド紳士らしさが要求されるスポーツなのです。
スコットランド、冬の娯楽として発展
1716年、スコットランドのキルシスで、世界最古のカーリングクラブが誕生しました。
驚くことに、このクラブは現存。
2014年冬季オリンピックソチ大会の銀メダリストであるマイケル・グッドフェロー選手も同クラブ出身です。
キルシスは、世界史上初のカーリング専門の競技場が作られた場所でもあります。
当時は100×250メートルほどの面積であったと記録。
初期のカーリングストーンは、そのあたりから拾ってきた底が平らの石でした。
ボーリングの球のような穴を開けたものもあります。
ただ、競技として昔は、今ほど慎重&正確に投げてはいませんでした。
スコットランド産のウイスキーをグビッとあおって体を火照らせ、ワイワイと楽しく遊ぶ。
そんな冬の娯楽でした。
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