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【クリスティーナ】
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ありのままに財を使うのだ!
1644年、18歳のクリスティーナは親政を開始しました。
その政治的見識、優れた判断は、名君誕生を感じさせます。
4年後の1648年には、泥沼と化した三十年戦争をヴェストファーレン条約の調印よって終わらせ、スウェーデンは多くのドイツ領の都市を獲得、「バルト帝国」と呼ばれるほど広大な領土を手にしました。と、ここまではよかったのです……。
三十年戦争でスウェーデンの国庫は尽きき欠けていました。
戦争で戦った騎士たちに恩給を払わねば成りませんし、広大な領土を維持する平和にも金がかかります。広大になり過ぎたゆえに、国家財政はバランスを崩してしまったのです。
しかもクリスティーナには浪費癖がありました。高いドレスや宝石類に使ったわけではありません。
「ストックホルムを北方のアテネにしようではないか!」
そう考えたクリスティーナは、デカルトはじめ多くの文化人を宮廷に呼び寄せ、書籍を大量に購入。豪奢な舞踏会を開き、宮廷を賑やかなものとしました。
必ずしも悪い政策ではないのです。
特に文化政策は善政とも言えるものかもしれません。出費が適切であれば、の話ですが。
さらにクリスティーナと周囲を悩ませる問題がありました。縁談です。
「陛下にはご結婚いただき、お世継ぎを産んでいただかねばなりませんなぁ」
そんな周囲の期待にクリスティーナは困惑します。
しかも女王が結婚した場合、夫に統治を任せることが当然とされている時代です。
「男のように、女王ではなく王として振る舞ってきた余であるのに、求められるのが結婚と出産とは。しかも統治を夫に任せるなど言語道断である!」
ありのままに結婚は断る!
クリスティーナは縁談に全く興味関心を示さず、断り続けました。
ずば抜けた聡明さを持つ彼女からすれば、結婚したという理由だけで統治をゆずるなんて、耐えがたい屈辱です。
かといって、クリスティーナに結婚する気が全くなかったわけでもありません。
彼女は16歳の時に、4歳年上でイケメンの従兄カール・グスタフ(のちのカール十世)に熱を上げました。
カール・グスタフは、グスタフ二世・アドルフ戦死ののち、元老院で王家の後継者として認められていました。元老院としては、カール・グスタフとクリスティーナを結婚させるつもりだったのです。
そうすれば、カール・グスタフのあとに王位を継ぐ子には、クリスティーナ経由で王であるヴァーサ家の血が流れることになります。
この二人の関係は、大河ドラマ『おんな城主直虎』における、井伊直虎と直親のそれと同じようなものです。
クリスティーナは情熱的な言葉を書き連ねたラブレターを送り、カール・グスタフ相手に愛を何度も誓いました。
しかし、言葉以上の行為に進もうとすると、慎重に拒むのでした。
「きっと、結婚するまでは貞操を大事にするタイプなんだね」
カール・グスタフとしてはそんな気持ちですね。
しかしクリスティーナが成人年齢である18歳になっても、縁談は進みません。
カール・グスタフはその後5年間焦らされた挙げ句、クリスティーナが議会で宣言した、衝撃的な内容を聞くことになるのでした。
「余はカール・グスタフを、余の正式な後継者に指名する。されど余は結婚できない。絶対に無理なのだ。余の性格は結婚に向いていない! どうにかならないかと熱心に祈り続けたが、駄目だ。余は、絶対に、結婚できない」
ええーっ!
これにはカール・グスタフのみならず、誰しも口をあんぐりさせたでしょう。
クリスティーナは、未婚を貫いたイギリス女王・エリザベス一世の伝記を読み、尊敬していたと言います。
果たして、彼女の決断はその影響だったのでしょうか。
それとも別の理由でしょうか。
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