クロティルダ/wikipediaより引用

フランス

欧州にフランスが誕生した瞬間とは? クロティルダが夫クローヴィスを改宗

現在のフランスとドイツを支配していた王・クローヴィス(466-511年)。

世界史の苦手な方からすれば

「フランスとドイツって、もとは一緒だったの!?」

と驚かれるかもしれません。

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このクローヴィス、ローマ帝国からすると帝国を苦しめたフランク族の王でしたが、後年になって彼は、自分こそがローマ帝国の流れを汲む後継者であると自称するようになります。

ターニングポイントは、カトリックへの改宗。

後に聖人となる妻・クロティルダの存在があったのですが、一体この夫婦に何の歴史的意義があるのや?というと……。

ヨーロッパの大国フランスが生まれた瞬間であったのです。

本稿では、その道のりを振り返ってみましょう。

※文中の記事リンクは文末にもございます

 

花嫁は信心深いカトリック

481年に即位したフランク族の王クローヴィス。

彼は493年、当時18才のクロティルダという、ブルクンド王国の王女を妻にしていました。

愛らしい花嫁ながら、夫には気になることがありました。カトリック教徒の妻は信心深く、常に祈りを欠かさないのです。

「神に祈りを捧げれば、願いが叶います」

真剣なまなざしでそう言う妻の言葉を「そういうモンなのかなぁ……」と夫はなんとなく聞いていました。

クローヴィスはアリウス派を信仰しており、カトリックではありません。かといって、妻のカトリックを否定するわけではありません。

戦場で教会を破壊するようなことはあっても、積極的に否定するほど嫌いでもない。そういう認識でした。

「あなたも改宗しませんか?」

「それはどうかな……」

妻は改宗を勧めてきましたが、夫のクローヴィスは受け流していました。

 

洗礼直後に待望の男児が死んでしまった

494年、夫妻に待望の男子が生まれました。

妻は夫に言います。

「我が子インゴメールには、キリスト教の洗礼を行いたいのです」

「うーん……洗礼、ねぇ……」

クローヴィスは迷いますが、愛妻の懇願に負けて洗礼式を行うと、その直後、インゴメールは亡くなってしまいます。

夫は激怒しました。

「我が神々を信じていれば、息子はまだ生きていたはずだ。お前があんな神なんか信じて、妙な儀式をやったからだ!」

クロティルダは悲嘆にはくれたものの、夫の言葉を信じることはありません。

そして495年。

夫妻に次なる男児・クロドメールが生まれました。

彼女はまた洗礼を行いたいと主張し、クローヴィスも渋々折れたのですが……。

このとき嫌な予感が彼らにあったかどうかは不明。

洗礼の儀式を行った直後、またもクロドメールは病気にかかり、息も絶え絶えになってしまったのです。

クローヴィスは我が子を失いかけている怒りと恐れから、妻を罵りなじりました。

「言っただろう、お前の神の儀式なんかするからだ!」

悲しみ、パニックになったのは、クロティルダも同じです。

彼女は懸命に神に祈りました。

「どうか我が子をお助けください……」

祈るクロティルダ/wikipediaより引用

するとクロドメールは徐々に回復しました。

しかも回復後はすっかり元気な男の子、他の子よりも丈夫な男児に育ったのです。

これにはクローヴィスも心を動かされた様子。

「お前の神に改宗するわけではない。だが、お前の神は祈りを聞き届ける力があることはわかった」

妻の信仰を尊重し、敬意を払うようになったのです。

 

神よ! この戦いに勝てたらば洗礼を受けます

496年から497年にかけて、クローヴィスはアラマン族と激しい戦いを繰り広げていました。

トルアビックの戦い(戦場は現在のツュルピッヒ)/wikipediaより引用

戦況が不利になる中、クローヴィスの脳裏に妻クロティルダが祈る姿が思い浮かびました。

「そうだ、妻の神に助けを求めてみよう」

必死で神の名を呼ぶクローヴィス。

しかし、事態は悪くなるばかりです。ここで「やっぱり神頼みはアカンな……」とはならず、彼はさらに頼みました。

「ええい、ちっとも助けてくれんではないか! わかりました、心を入れ替えます。もしこの戦いで勝利をもたらせてくれるのならば、私は洗礼を受けましょう」

するとなんということでしょう。

フランク族は勢いを盛り返し、敵を敗走させたのです。

神の助けを得て勝利するフランク族の軍勢/wikipediaより引用

勝利をおさめ、戦場を眺めながらクローヴィスは考えました。

「ああいうふうに考えたからには、洗礼を受けないといかんだろうな、うん」

本当に神の力で勝利できたのかどうか。

そんなことはどうでもよく、これから先の展開が重要です。

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