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【ミシェル・ネイ】
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熱狂的な王党派に
ナポレオンを倒してフランスに戻ったルイ18世。
家臣や軍隊まで追放するわけにはいかず、ネイら元帥たちも、そのまま彼の軍に編成されました。
しかし、そんなネイたちを待っていたのは冷たい目でした。
20年以上の亡命から戻った貴族たちは、第一帝政下で成り上がった新参貴族たちに敵意を向けていたのです。
そんな針のむしろに座るような状態の中、国王だけは別でした。
国王にしてみれば、今さら自前の軍人を養成するわけにもいかず、自分の「剣」としてネイたちを大切にしなければなりません。
「私はこれからもずっとあなたたちを頼りにします」
こう言われて、ネイは有頂天になってしまったのでしょう。
ナポレオンはカリスマ性はあっても、ぽっと出の成り上がり皇帝。かたやルイ18世は九百年の伝統と血を持つ王なのですから。
『よし! 国王陛下のために全力を尽くすぞ!』
そんなネイを見て人々はあきれました。
「この間までナポレオンに忠誠を誓っておいたのに、なんだあいつは」
ネイはただただ単純で気のいい男でした。
それが彼の悲劇を招くことになるのですが……。
ナポレオンを鉄の檻に入れてやる!
フランス人の多くが王政復古にゲンナリするのに、さほどの時間はかかりませんでした。
いざ王侯貴族が戻ってきたら、彼らは「なぜ革命であれだけ血を流し、苦労して彼らを追い払ったか」を思い出したのです。
ふてぶてしく、傲慢で、税金で肥え太る連中。
そんな連中を、諸手をあげて歓迎したなんて間違っていたのではないだろうか?
人一倍そう痛感しているのは、宮中で貴族と顔を合わせねばならないネイです。
無能で戦場で戦った経験もないくせに、平民生まれの自分を見下す貴族たちには、我慢がなりませんでした。
ネイの妻も、貴族の女性たちからいじめられ、涙を浮かべながら自宅に戻ることがありました。
ネイは宮廷を離れ、領地に引きこもりがちになりました。
そんな中、1815年3月1日、ナポレオンがエルバ島からフランスに上陸します。
ネイはその知らせを受け、動揺しました。
フランスは革命のあと、悲惨な内戦に苦しめられています。
あやまちだけは繰り返してはならない。彼はそう痛感していたのです。
ルイ18世は、王族にナポレオンを生け捕りにさせればよいと楽観的でした。
しかし、これまた平民からの叩き上げであり、ネイにとっては戦友にあたるスルト陸軍大臣が反対しました。
あまりに危険過ぎるからです。
そこでルイ18世は考えを変えました。
ネイとも親しい叩き上げ軍人であるグーヴィオン=サン=シール元帥を派遣しようと考えたのです。
もしここで彼がそのまま使命されたらば、運命は違っていたのでしょう。
グーヴィオン=サン=シールはナポレオンに味方しなかったことが、のちの経歴にプラスの影響を与えています。
一方、ネイは、なんとナポレオンを捕らえると立候補したのです。
「大船に乗ったつもりでいてください。ナポレオンを鉄の檻に入れて帰って来ます!!」
ここまで威勢の良い言葉を述べたのです。「鉄の檻に入れて帰る」という言葉は人々に強く刻まれました。
「ネイ元帥ならきっとなんとかしてくれる……」
ルイ18世も、スルトも、世間もそう期待したことでしょう。
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