こんばんは、武者震之助です。
マツケン信玄も登場し、いよいよ今川に武田の脅威が迫る中、直虎は三河の徳川家康に、徳川と上杉の同盟を薦めます。家康も悪くない話だと考えた模様。
迎えた永禄11年(1568)3月。今川家の尼御台とも、女戦国大名とも称された寿桂尼が永眠します。最期まで前のめり、床の中ではなく机に突っ伏す姿勢での死でした。
その前向きな姿勢と、無念さが伝わって来ます。
直虎にとってはおそるべき敵であり、また目標としていた存在です。井戸の横で読経し、その死を悼む直虎でした。
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赤備えの山県が徳川の下へやってきて「今川を挟み撃ちにしよう」
駿府では、もはやこれまでという諦念が漂い、武田になびく家臣や国衆には粛清の嵐が吹き荒れています。
井伊谷に、三河の使者である松下常慶が返事を持って来ました。
上杉と同盟を結ぶ前に、武田から山県昌景を通して徳川に、「今川を挟み撃ちにして今川領の駿府は武田、遠江を徳川に分け合おう」という申し出があったのです。
武田は今や織田とも通じています。徳川が断れるはずもありませんでした。
それにしても、もはや武田では今川滅亡は既定路線というわけですね。なんだこの恐ろしい集団は。
こうなると、もはや戦は避けられないと直虎は悟ります。
井伊は今川につくのか、と常慶に問われる直虎。
直虎は戦を避けるために上杉と結ぶ策を提案しただけだと弁明するものの、常慶は徳川につく証を求めます。そのために、虎松の母・しのを、常慶の実家である松下家に対して嫁がせよとのこと。
つまりは人質です。
自分の出した徳川・上杉同盟の提案がこうなるとは、と悔やむ直虎。しのに人質に行くよう告げる、重たい責務も引き受けます。
「直親は、草葉の陰で怒っておろうな」
そうつぶやく直虎です。
人質を受け入れるしの 反対する虎松
あのトラブルメーカーだったしのは、武家の奥方として成長を見せていました。
領内で不幸があると、その遺族の見舞いに訪れるなど、しっかりとつとめを果たしていました。
そんなしのは、直虎の言葉を受けて、案の定、激怒し容赦ない言葉を投げつけます。
「こんな小さな国衆の分際でちょろちょろ調子に乗るからこんなことになるんですよ。挙げ句の果てに人質を求められるとは。あーあ、何やっているんですかもう! 今更詫びたって無駄なんですよ、無駄」
一気にたたみかけられ、頭を下げるしかない直虎。しかし、しのは人質に出ることそのものは了承するのでした。
昨年の真田昌幸正室・薫は頑として人質になることを拒んでいましたが、今年のしのは違うようです。
しかし、かつて父と死に別れ、今また母まで生き別れる虎松はどう思うのでしょうか。
案の定、しのからことの顛末を聞かされた虎松はショックを受けます。
虎松は直虎と南渓のもとに真剣な表情でやって来ます。
「取り消してください! 母は嫁ぎたくないそうです!」
「すまぬ……それはできぬのじゃ」
「和尚様、答えはひとつではないのですよね。答えを考えつかぬ殿は阿呆ではありませぬか?」
ここで南渓が「因果、因果」と笑ったように、虎松はかつてのおとわそっくりの言い回しをするのでした。
これでやっと直虎も、かつての周囲の大人の気持ちが理解できたかもしれません。
懇切丁寧に、虎松が納得するよう説得にあたる直虎でした。
揺れ動く直虎に対し、商人・方久はニッコニコ
実はこれは、しのなりの、息子に与えた思考実験指導でした。
母を救うために考えてね、ということ。もしかすると直虎へのあてつけもしれませんが、その真意は?
虎松はそれでも何とかして、母を救おうとします。
人質になるのは祖母や姉、殿では駄目ですか、と無邪気に問いかける虎松です。
さすがの直虎も、幼い虎松の懇願にたじたじ。
こうなったらもういっそ徳川ではなく武田に同盟を結ぼうか、と直虎は政次に相談します。
井伊のある遠江は将来的に徳川領になりそうだからやめておいたほうがいい。
それより最近は随分しっかりしてきているのに、そんな焚きつけ方をするしのの真意を確かめたほうがいい。
と政次は助言します。
そんな中、近づく戦の足音を聞き、ビジネスチャンスだと瀬戸方久だけはえびす顔です。昨年の千利休も戦で儲けようとしていましたが、死の商人というのはどの時代もいて、血で肥え太ろうとするものです。
「私が嫁ぐことで有利な取引を井伊にしてください」
虎松はさんざん考えてある案を思いつきます。このときの表情がかつてのおとわそっくり。
虎松は結婚適齢期を逃しつつある新野三姉妹の長女・あやめをしのの身代わりにする案として直虎に持って来ます。
「すり替えがばれたら吾もあやめも斬られる。請け負いかねる」
せっかくの虎松の知恵を、全力で否定する直虎。
子供だろうとしっかりと理由を説明する誠意を感じますが、自分の名案を全否定された虎松はショックを受けてしまいます。
かくして、しのと傷心の虎松の元を訪れる直虎。
しのは直虎に、彼女の真意を語ります。今後、他に人質を出すこともあるかもしれない、わざと行きたがらないと言って、虎松にその意味を考えさせたのです。
しのは、人質には行くが約束して欲しいと言います。
「私が嫁ぐことで有利な取引を井伊にしてください。そしてそのことを将来虎松に話してください」
直虎は心得た、と感謝します。
しのは自らの犠牲の意味を知り、それを生かすよう願うだけの覚悟を持つ、立派でしたたかな戦国の女性に成長しました。
自分の感情をぶつけていた、どこか不安定な女性ではありません。
しの、赤鬼の母に相応しい覚悟を示す
しのは虎松に人質に行かない方法を考えてくれてありがとう、と告げます。
そして彼女は我が子にこう言います。
「虎松、母はやはり行きたくなってしまったのです」
母の言葉に驚き、さらに衝撃を受ける虎松。
しのは行きたいという理由を語ります。
しのはかつて直親が同盟を結ぼうとした家に行く、そのことで父の意志を母が継ぐ、大層やりがいのあることだと語ります。
直虎は今回の件で直親が草葉の陰で泣くだろうとつぶやきましたが、しのの覚悟は直虎の考えの数段上をいきました。女の身でも亡き夫の宿願を叶えるために、できることがあると。
しのは井伊直政の母にふさわしい烈女ぶりを身につけたのです。
しかし虎松は、「母上は虎松が一番大事なはずじゃ!」と泣き叫びます。
だからこそ嫁ぐ、虎松のために井伊の味方を増やし、子ができればきょうだいもできる。愛する虎松に味方を作るために嫁ぐのだと、自らの覚悟と虎松への愛を言い聞かせるしの。
子供向けに言葉を選びながらも、しっかりと戦国のルールによるメリットを語ります。
母親ならば我が子が恋しいはずという、そんな意識の数段上を行く覚悟です。
ここで別れを悲しませるだけではない、それが今年の脚本が持つ力です。
虎松は涙をこらえ、嫁ぐまでは毎晩一緒に寝て欲しいとしのにねだります。
「井伊の赤鬼」幼い頃の、なんとも健気な姿です。
直虎と政次は、すっかり賢婦人となったしのを惜しみ、彼女を失う大きさを噛みしめるのでした。
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