元亀三年(1572年)4月頃、三好義継と松永久秀・松永久通親子が共謀し、河内の畠山昭高を攻めました。
一言でいえば信長に反旗を翻したのです。
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将軍支持者の畠山昭高へ攻め込んだ
畠山昭高は、河内の半国守護・紀伊守護の人です。
以前にも義継らと対立して戦っており、兄の畠山高政は【永禄の変】の際、足利義昭を救出・擁立した人でした。
経緯的にも立場的にも、将軍に近い人物といえます。
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その昭高を攻めたということは、どういうことか?
三好義継たちは将軍である足利義昭と、それに(一応)従っている織田信長や他の武将たちを敵に回す姿勢を明確にしたことになります。
これに対し、畠山家内にも問題が燻っておりました。
同家の重臣たちの中に、三好方へ傾き始めた者がおり、この三ヶ月ほど前には昭高の暗殺未遂事件まで起きるなど、不穏な情勢になっていたのです。
三好に攻められた畠山昭高としては、内に爆弾を抱えたまま外からの攻撃に備えなければならず、非常に難しい局面でした。
信長は柴田や佐久間ら主力を派遣
かような状況で、三好・松永軍は、昭高の部将である安見新七郎の城(大阪府交野市)をまず攻めたといいます。
この安見の城が具体的にドコにあったのか。詳細は不明です。
安見家の人々の動向があまり記録に残っておらず、さまざまな点で混同が見られるためです。
この他にも砦を築いており、山口六郎四郎・奥田忠高という者と、300ほどの兵を入れています。
長期戦も辞さない構えといえるでしょう。
こうした情勢を受け、当時はまだ将軍支持者だった信長は、三好と松永を討伐するため、佐久間信盛・柴田勝家の両家老を始め主だった武将を現地へ派遣しました。
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他にもかなり有力なメンバーが揃っています。
・森長可
・蜂屋頼隆
・稲葉一鉄
・安藤守就
・氏家直通(直昌)
などです。
他に……。
森長可は、以前に浅井・朝倉軍に攻められて討死した森可成の次男です。
「鬼武蔵」と呼ばれる、槍の名手であり荒武者でした。
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蜂屋頼隆は、長く信長に仕えてきた重臣の一人。
『信長公記』でもさまざまな場面で登場しており、政治的な仕事も多く任されていました。
※後日、詳しい人物伝を公開いたします
稲葉一鉄と安藤守就は、かつて【西美濃三人衆】と呼ばれる、斎藤氏の重臣だった者たちです。
三人衆のもうひとり・氏家卜全は【長島一向一揆】の戦いで討死してしまいましたが、ここに登場する直通は卜全の息子。
父の立ち位置を引き継いだような形でしょうか。
三好と松永は城へ引っ込み……
また、将軍・足利義昭も畿内の武将に対し、援軍として向かうよう命じたようです。
信長公記には、将軍が誰を遣わしたかは書かれていません。
そのため全体の兵数も定かではありませんが、なかなかの大軍が集まったと思われます。
織田軍と畿内諸将で砦を包囲し、こちらも長期戦の構えとなった……のですが、鹿垣を結い巡らせていたにもかかわらず、義継・久秀・久通は風雨に紛れて脱出してしまいました。
そして三好義継は若江城(東大阪市)、松永久秀は信貴山城(生駒郡)、久秀の息子・松永久通は多聞山城(奈良市)に立てこもったといいます。
挙兵した割におとなしいというか、なんというか。
ちなみに松永久秀は、かつて自爆男というお笑い的存在で名を馳せていましたが、【平蜘蛛の釜を抱いて自死した】というのは作り話であり、最近は武人としてだけでなく教養人としての再評価が進んでおります。
よろしければ以下の記事を併せてご覧ください。
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長月 七紀・記
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なお、信長公記をはじめから読みたい方は以下のリンク先へ。
◆信長公記
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麒麟がくるのキャスト最新一覧【8/15更新】武将伝や合戦イベント解説付き
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【参考】
国史大辞典
『現代語訳 信長公記 (新人物文庫)』(→amazon link)
『信長研究の最前線 (歴史新書y 49)』(→amazon link)
『織田信長合戦全録―桶狭間から本能寺まで (中公新書)』(→amazon link)
『信長と消えた家臣たち』(→amazon link)
『織田信長家臣人名辞典』(→amazon link)
『戦国武将合戦事典』(→amazon link)