日本中世史の本郷和人・東大史料編纂所教授が歴史ニュースをぶった切る「歴史ニュースキュレーション」。
今週は、昭和天皇の未発表写真にご注目!
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昭和天皇の未発表写真発見
◆戦後まもなく撮影 昭和天皇の未発表写真発見 11月27日NHK NEWS WEB(→link)
太平洋戦争の終戦後、昭和20年12月に撮影された昭和天皇の未発表の写真が新たに見つかり、来月から東京で一般公開されることになりました。当時としては極めて異例だった昭和天皇の笑顔の写真もあり、専門家は「戦後まもない時期の昭和天皇の素顔を捉えた貴重な資料だ」と話しています。
今回見つかったのは、終戦から4か月後の昭和20年12月23日に皇居内で撮影された写真90枚です。写真家の山端祥玉が当時の宮内省から依頼を受け、経営していた写真通信会社のカメラマンが撮影したもので、山端の遺族が保管していました。
本郷「昭和天皇のお写真かあ」
姫「普通に興味深い上に、歴史学的にも、社会学的にも貴重なものよね」
本郷「そうだね。『昭和天皇実録』が昨年の8月に完成して、いま四巻まで出版されているし(宮内庁編集、東京書籍)、それをどう読み解くか、という良い本も多く出ている。そんな折りに発見された、というのは感慨深いものがあるね」
姫「中世史専門のあなたがいうのは、ちょっとおもしろいわね」
本郷「いやあ、いま高校の日本史教科書でどんな変化が起きているか、知ってる?」
姫「カラーになったり、歴史資料を豊富に収録したりと色々あるのでしょうけれど、どこを強調したいの?」
本郷「ああ、それもそうだけれど、近現代史のページ数がどんどん多くなっているんだ。詳しく書かれている。それにたいして、前近代部分(古代史、中世史、近世史)はなるべく簡略に、やさしく。ページ数も相対的に減っている」
姫「むかしは、4月に古代史から勉強し始めたら、3月になっても戦国時代までしかいかなかった、なんて話をよく聞いたけれど」
本郷「ともかく『いま』のぼくたちの生活に深く関係している近現代史を教えろ、というのがお上の指示なんだろうな。まあ、これからの若い人たちは世界に出て行って勝負しなくちゃ行けないから、そのためにも近現代史をきちんと学んでおくことは大事なんだけれどね」
姫「中世史を専門とするあなたとしては、少し寂しいわけね」
本郷「まあね。そのあたりのことを話してると長くなるから、今日はやめておこう」
◆宮内庁『昭和天皇実録 第一』(→amazon)
大河ドラマ検定の実施
◆NHK「大河ドラマ検定」 第1作から最新作まで 11月26日朝日新聞DIGITAL(→link)
NHKの関連会社、NHKエンタープライズは25日、「大河ドラマ検定」を立ち上げ、来年5月29日に1回目の試験を開催すると発表した。日本出版販売とともに運営するという。
同社によると、試験は、第1作「花の生涯」から来年放送の「真田丸」までが出題範囲となる中級レベルの2級と、第25作の「独眼竜政宗」から「真田丸」までが出題範囲となる初級レベルの3級を用意。いずれも80問のマークシート方式で、おおむね70%以上の正解を合格基準とし、合格者に証書を授与。成績優秀者には特典もあるという。
本郷「なるほどなあ。NHKもいろいろ考えていますね」
姫「あなたはどの作品から見てるの?」
本郷「1969年の第7回作品、『天と地と』から。あなたは?」
姫「トシがばれるので、お教えできません(キリッ)」
本郷「ははは。女性に年齢を聞くのは御法度だから、ぼくはこの質問をさりげなく使うことにしてるんだけど、その手にはのらないっていうことですね」
姫「まあ、そう厳密な話でもないのだけれど。ただ、古い方のお話って、復習しようにも映像が残ってないんでしょう? そんな話を聞いたわよ」
本郷「その通り。むかしは放送用のビデオテープがとても高価だったために、使い回されたらしいんだ。それで、大河ドラマのテープも、他の作品を重ね撮りしちゃってね。すべてが残っているわけじゃないらしい」
姫「そうそう。家庭用のビデオテープも高かったわよねえ。私もVHSとか、ドラマやアニメ、重ね撮りしたもの」
本郷「トシがばれる、トシがばれる(笑)。1977年の第15回『花神』までは、そういうわけで、完全版がないらしいよ(第14回『風と雲と虹と』は例外的に全映像の存在が確認されたという)」
姫「大河ドラマを見て日本の歴史に興味をもった、という人はたあくさんいるんだから、これからもがんばってほしいわねえ」
「尼崎城」天守閣再現へ
江戸期築城の「尼崎城」の天守閣を、当時と同規模程度で再現するプロジェクトが動き始めた。家電量販店の旧ミドリ電化(現エディオン)創業者の安保(あぼ)詮(あきら)さん(82)=西宮市=が、10億円以上の私産を投じて天守閣を建設し、尼崎市に寄贈することを打診。市有地の利用などについて、同市と25日に協定を結んだ。(石川 翠)
安保さんは朝来市出身。1959年に尼崎市内で旧ミドリ電化の前身となる「みどり電気」を創設した。ゆかりの地に恩返しがしたいと、天守閣の再現を市に申し出た。
本郷「大物、といったときに歴史的に思い出すものは?」
姫「まず、源義経ね。兄の源頼朝と戦うための兵を集めるために、九州へ渡ろうとしたのかしら、大物浦から船出したけど、難破して一行は散り散りになったのよね」
本郷「ああ、よく思い出したね。そう。それで義経は兵を集めることを断念して、奥州平泉に逃亡するわけ。つまり、摂津の大物浦は古くから交通の要衝だったわけだ」
姫「それに『大物崩れ』という言葉を聞いたことがあるわ」
本郷「おお、すごい。室町時代後期というか、戦国時代というか、管領を務めて幕府の実権を握っていた細川高国がこの地で反対勢力に敗れ、自害を強いられたんだ。その事件を『大物崩れ』という。1531年のこと」
姫「その大物と尼崎城とはどういう関係なの?」
本郷「うん。細川高国が築いた大物城の敷地に、江戸時代になって尼崎城が作られた、といわれていたんだ」
姫「ああ、そうなんだ。両者は名称が違うだけで同じものなの?」
本郷「うん。そう言われてたんだけれどね。最近では、両者は違うところに立てられた別物だ、という説が有力らしい」
姫「米沢の館山城と米沢城みたいなものね」
本郷「そうだね。築城したのは徳川譜代の戸田氏鉄(うじかね)。尼崎城主の時は5万石で、後に美濃大垣10万石に出世している。譜代大名の10万石はそれほどいないから、優秀な人だったんだろうね」
姫「それで、再建される予定の天守って?」
本郷「4重4層、白漆喰。 天守台上から棟までの高さは約17メートルだって」
姫「尼崎市の新しいシンボルになるわね」