日本史を学ぶための古文書・古記録訓読法

『日本史を学ぶための古文書・古記録訓読法』/amazonより引用

文化・芸術

『日本史を学ぶための古文書・古記録訓読法』で難解な変体漢文もカンペキ!

我々が古代中世の記録を知るにあたり、参考にしている史料。

その中には「変体漢文」で記されたものが多数あります。

『はっ? 変体漢文って何だい。漢文がおかしくなっちゃったの?』

と、この言葉自体、初見の方も多いかもしれませんが、変体漢文とは、漢字で記された国語文のことで、多くの史料に登場。

従来の古文や漢文とは違った【独特の読み方】をします。

たとえば漢文のように返り点などがないのはひとつの特徴です。

よってきちんと読めないと、大学史学科の授業では赤っ恥をかいたり、卒論の口頭試問で背筋に冷や汗が流れるなど、とにかく変体漢文はその名のイメージが示す通り、厄介な存在でした。

なぜ、さほどに厄介だったのか。

最大の理由を申しますと、変体漢文にはキッチリとした訓読法のテキストがなかったからであります。

教科書がなければ「口頭」で伝えるしかない――。

まるでドコかの村の神話ですが、実際、東西の大学で読み方が異なっていたり、そのせいで解釈までが違っていたり、教える側の先生たちの間でも怪しげな読み方が蔓延していたと言います。

そこで満を持して登場したのが下記の書籍です。

苅米一志・日本史史料研究会『日本史を学ぶための古文書・古記録訓読法(→amazon)』(吉川弘文館)

歴史出版社の老舗・吉川弘文館さんから出されたもので発売直後の初版はたちまち完売。

すぐに増刷がかけられ、お堅い歴史書の中では異例の売れ行きとなっております。

なぜ、さほどに人気を博したかと申しますと、先に説明しました通り、これまでになかった訓読法に特化したテキストだからであり、史学科の学生のみならず、市井の歴史ファンにも重宝されているのです。

弊サイトでは『六十の手習い 古文書を読む(→amazon)』(同成社刊)も紹介させていただいておりますが、あちらは筆で書かれた「くずし字」を読むのに特化した書籍でした。

古文書(筆文字)を読んでみたいなら『六十の手習い 古文書を読む』にトライ!

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一方、本書は「活字の変体漢文史料」 を読むためのテキストであり、文章の訓読に焦点を当てております。

ともかく「習うより慣れろ」ってなわけで、書籍に掲載されている例文をご紹介させていただきますね。

『右条々、堅令停止畢、若於違犯之輩者、忽可被処厳科者也、仍下知如件』

いきなり凄まじい漢字のオンパレードですね。

中学高校で目にした漢文とは、ち、ち、違うよね……?ということぐらいは、史料の苦手な方でもおわかりでしょう。

上記の一文は次のように読みます。

『右の条々、堅く停止せしめ畢(おわ)んぬ、若(も)し違犯の輩(ともがら)においては、忽(たちま)ち厳科に処せられるべき者なり、仍(よ)って下知件(くだん)の如し』

どうです?

ググッと身近になってきてませんか。

この一冊は、たとえば「候=そうろう」とか「仕=つかまつる」などのように割と知られたものから、中には「軈」のように何やらサッパリな言葉まで網羅。

「軈」は「やがて」って読むんですって……。もう、呆然です。

大学の史学科に在籍、あるいは将来的に目指している方にとっては、一刻も早く手元に置いておきたい一冊。

古文書の訓読に四苦八苦されている市井のファンの皆様にも必携の一冊。

そして、変体漢文で街中に高札を掲げてみたい!という野望をお持ちの方にとっても……。

冗談はさておき、吉川弘文館さんの社内でも「学生時代に欲しかった」という声の高い一冊となっている模様です。

ご拝聴、ありがとうございました。


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文: 五十嵐利休(武将ジャパン編集人)

【参考】
苅米一志・日本史史料研究会『日本史を学ぶための古文書・古記録訓読法(→amazon)』(吉川弘文館)
吉川弘文館HP

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