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【『信長の野望』義光の変化】
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そしてレッツゴー陰陽師♪
顔グラフィックも、ヒール顔でした。
初期は、『独眼竜政宗』の原田芳雄さんそっくりで、シャレにならないものがあったものです。
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それが肖像画準拠になったものの、そこに不幸な偶然が襲いかかります。
2008年――。
陰陽師(上記動画参照)の顔が『信長の野望』ファンの間でこう囁かれ始めたのです。
「最上義光の顔グラって、レッツゴー陰陽師そっくりだな」
確かに『革新』と『天道』のものと似ているのです……そっくり……。
結果、どうしたらいいのかわからない、【ギリニのレッツゴー陰陽師!】というあだ名がつきました。
耐えました。
屈辱的なネタ武将扱いを受けながらも、置賜地方以外の山形県民と、最上ファンは耐え忍びました。
「それでも……2009年の大河ドラマ『天地人』で慶長出羽合戦が出てくるはず。そして皆、カッコいい義光公を知ってくれるはず!」
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「北の関ヶ原」こと慶長出羽合戦は、主役・直江兼続の仇となる。
ひどい悪役として描かれたりしゃしないか?
そんな気を揉みながら放映を待ちわびていると……。
あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
慶長出羽合戦が始まったと思ったら
いつのまにか終わっていた
な… 何を言っているのか わからねーと思うが、
おれも 何をされたのか わからなかった…頭がどうにかなりそうだった…
手抜きだとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を 味わったぜ…
瞬間的に終了したのです。
しかも最上義光は兜のみ、前田慶次は朱槍のみという、山形県民全員が唖然とする展開でした。
最上領だった置賜地方以外の山形県民。
前田慶次を応援していた、米沢藩領置賜地方の山形県民。
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全員まとめてガッカリorz
「そんな一体感は求めていなかった!」
そう叫んだ山形人の多かったことよ。
伝え聞くところによると、この大河スタッフ山形トークショーは、容赦ない質問が飛び交ったと言います。
ちなみに置賜地方の不満は、2016年『真田丸』における素晴らしい直江兼続により、払拭されました。
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しかし、続く2018年の『西郷どん』では散々な結果に終わります。
山形・庄内藩は、薩摩藩と色々と因縁があり、戊辰戦争では西軍を叩きのめす――素晴らしい戦火を挙げたにもかかわらず、またもやドラマでは酷い描かれ方をしてアッサリ終了してしまったのです。
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大河もダメなら、どうすればよいのだ。
山形の心はもうズタボロでした。
大河はダメでも、ノブヤボがある!
こうなるともう山形の人々は大河ドラマには期待していないのかもしれない。
しかし、それでも義光には救いがありました。
2013年発売の『信長の野望・創造』で、ついに陰陽師顔グラを脱出したのです!
今までの陰険そうな顔ではなく、むしろマッチョ。そして甲冑姿になりました。
もう陰陽師じゃないんだ……!

最上義光『信長の野望』より
ギリニも修正され、やっと山形県民も納得できる、そんな義光像になりました。
では、なぜ顔グラフィックが修正されたのでしょうか。
ちょっと考えてみましょう。
そもそも肖像画が残っていないゆえに
陰陽師が嫌だというクレーム由来で、あの肖像画が修正されたわけではありません。
実は最上義光には、肖像画が残されていません。
かつてはそう呼ばれている絵がありましたが、研究の結果ありえない箇所が複数あるため、後世の創作であるとして取り下げとなったのです。関連する書物でも、ある時期から掲載されなくなりました。
陰陽師顔グラは、その問題のある肖像画を取り下げた結果です。
しかも取り下げただけではなく、史料を反映しているのです。
・目つきが鋭い、赤い服
→朝鮮出兵前の馬揃えの目撃談準拠
・鉄棒
→最上家に伝わる鉄棒準拠。屏風絵では六尺あまりのものがあるが、あれはあくまで想像の産物
・兜の前立て
→最上家に伝来、最上義光歴史館が復元したもの準拠
・平服グラフィックでも指揮棒を手にしている
→当時の「義光公は、日頃話をしている時でも指揮棒を持っている」という証言準拠
このように、大河ドラマや陰陽師時代よりも、はるかに史実に即しているのです!
思い出してみましょう。
「最近は自治体やファンのクレームのせいで、インフレ能力、それにイケメン化ばっかりだな」
そんな指摘は、果たして正しいのか?
最上義光の生涯を見ると、かなり柔軟で、それでいて芯の通った武将であることがわかります。
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最近では研究も進んでいて、そうした成果や資料が表に出てくるようにもなりました。
信長の野望で数値変更されたのは、ただのクレーム対応ではなく誠実な対応の結果だということは、最上ファンなら知っているのです。
・能力値
・顔グラフィック
・イベント
・列伝
こうした要素が変貌するのは、言わば研究成果の反映なのですね。
積極的にこうしたものを取り入れる『信長の野望』。
ただのゲームではなく、歴史知識の底上げに役割を果たしているということがご理解いただけるでしょうか。
その進化はこれからも続いていくでしょう。
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文:小檜山青
【画像提供】
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【参考文献】
『日本史史料研究会研究選書13「最上義光」』(→link)
伊藤清郎『最上義光 (人物叢書)』(→amazon)
松尾剛次『家康に天下を獲らせた男 最上義光』(→amazon)