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【第五次川中島の戦い】
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北条への義理を果たしつつ上杉とは寸止め
武田信玄にとって、そもそも関東地方は北条家に任せるという認識は同盟時からありました。
しかし、上杉謙信という強敵の出現に加え、未だに関東各地で反抗勢力を駆逐できない北条家にとっては武田の力を少しでも借りたく、信玄の西上野侵入は黙認せざるを得ません。
じゃあ信玄は関東に野望を持っていたのか?
というとそうでもありません。
今後の南下政策(駿河侵攻)を考えると北方での上杉謙信との全面戦争は避けたいところですし、北条家との同盟はまだ利用価値が十分にあります。
北条家への義理を果たしつつ、上杉家とは寸止めというギリギリの綱渡りが上野国における武田家の戦略となります。
その落としどころが、おそらく利根川であり、倉賀野城でした。
武田家は利根川の西側、また武蔵国との国境で進軍をストップさせます。
そして西上野を完全支配下するためには名主、長野氏と名城・箕輪城の攻略が不可欠となります。
調略戦はプロに任せよう 六文銭のアイツに
さて、西上野の支配に乗り出す武田信玄ですが、最終目標は西上野最大の箕輪城を陥落させることです。
経歴は親父ほどでもない息子・長野業盛であっても、さすがの箕輪城と張り巡らされた上野国人衆の支城ネットワークで、そう簡単には落ちません。
これはどこかでみたことのある状況ですね。
そうです。川中島の戦いが始まる前の北信濃の状況とそっくりです。
武田信玄は今回も西上野の国人衆同士のもめ事や親戚同士の争いに「積極的に」介入していきます。
そして親戚同士の骨肉の争いに関しては俄然実力を発揮する六文銭のあの男を活用しない手はありません。
そうです。真田幸綱(幸隆)がまたしても登場します。
長野業正に養ってもらった恩義など忘れたかのように、いや、もしかしたらその経歴すらも美談にすり替えたかのように西上野の諸城と国人衆を次々と落としていきます。
後年、秀吉の北条攻めの原因にもなった名胡桃城(なぐるみじょう)など、西上野の地に真田家が進出する元となった調略戦が展開されますが、これはもうちょっと先のお話。
北条氏を滅亡へ追い込んだ名胡桃城事件~関東の小城が戦国史を動かすキッカケに
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その頃、北信濃の善光寺平は?
さて、川中島では海津城を中心に着々と武田領化が進んでいました。
北信濃に残る上杉方の城はもう川中島地方じゃねえ、で有名な飯山城と野尻湖周辺の城、そして善光寺周辺も上杉方ではありますが、既に経済的にも政治的にも松代方面の武田家の影響力が大きくなってきています。
上杉方とはいえ善光寺の町も武田家とうまく商売していかないと繁盛しませんからね。
上杉謙信は、前述の通り、武田家の西上野への侵入を許し、越後の北から南まで、信玄にちょっかいを出されて黙って引き下がる男ではありません。
今回も信玄に手痛い一撃を与えるために動きます。
その点では上杉謙信の戦略も首尾一貫。武田家に手痛い一撃を与えて、上杉方への攻撃の代償が高くつくことを思い知らせることです。
謙信は武田家の攻撃にあたっては最も大軍を投入しやすく、手痛い一撃を与えられる場所を選びます。
関東管領という立場からすれば、西上野の地で信玄に手痛い一撃を与えたかったことでしょう。
しかしこれは利根川のような大河を大軍で渡河するリスクと、北条方の援軍も考慮すると最悪の二正面作戦になるおそれがあります。
また、上杉謙信自身も慣れない地ですので地の利がありません。
ということで西上野は却下です。越中方面から飛騨に入って西信濃を突くのも物理的に遠く、現実的ではありません。
そうなるとやはり今回も迅速な大軍の投入が可能な勝手知ったる川中島で手痛い一撃を与えるのが謙信にとってベストな選択となります。
謙信にとって、もう川中島を含む善光寺平は単なる戦場・バトルフィールド扱いです。
ようやく始まる!第五次川中島の戦い
前回は長沼城方面で千曲川を越えて、北國脇街道に沿って松代方面の海津城包囲に向かいました。
が、今回は善光寺からまっすぐ南に向かい犀川を越えて北国街道に沿って川中島の中心部へ進軍します。
前回は海津城をおとりに後詰めにやってくる武田本隊を狙おうとして失敗しました。
しかし戦の天才は前回の反省と戦いで得られたデータを生かします。
前回の戦いで、海津城は千曲川のために川中島方面への出撃が苦手なのがわかりました。
ということで川中島でも海津城とその支城ネットワークから十分に離れた場所、「小田切館」(現・今井神社)に本陣を置きます。
これでもかというほど海津城や千曲川から離れた場所で、すぐに善光寺方面にも退却可能。
背後に回り込まれる心配もない位置に本陣を置いていて、プロフェッショナルというのは本当に前回の反省を生かすんだなあと関心しつつも、なんだか微笑ましくもあります。
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