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【戦国の軍隊】
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歩兵戦術の大改革
以前『兵器と戦術の日本史』(→amazon)という本を読んだときにもあったのですが、日本の武士というのは本来、弓騎兵でした。
訓練を受けた少数精鋭の弓騎兵が撃ち合う。
しかし、戦闘が大規模化し、素人(後の足軽)まで駆り出されるようになると、少数精鋭の武士側は直接な刀・槍での突撃にシフトしていきます。
よほど訓練でもされていないと、騎馬突撃の恐怖に耐えることなんかできません。
でも、足軽側もやられてばかりではありません。
足軽は数が武器。
弓を集中運用したり、槍衾で突撃するというスタイルを編み出すと、なかなか侮れなくなってきました。
要するに「少数精鋭の武士(騎兵)」と「安価大量の足軽(槍兵)」のどちらを決戦兵力として使うかが当時の戦争のテーマの一つだったといえるわけです。
※もちろん、非決戦兵力としての大量の「雑兵」も必要です。
本書からは少し離れますが、双方のメリット・デメリットをちょっとまとめてみましょう。
・少数精鋭の武士
→強いけど、維持が大変。古い封建制と相性がいい
・安価大量の足軽
→うまく使えば安上がり。でも、安定供給や集団運用がうまくいくのか?という問題あり
前者を比較的重視したのが(どの大名も一辺倒というわけではありません)武田などの比較的古参の大名、北条など関東氏族を束ねることに成功した大名で、後者を選択したのが封建的な土台をもたなかった織田・豊臣だったというわけです。
徳川軍団は古いタイプ?
織豊政権には、強力な同盟者・徳川氏もいました。
彼らのように「少数精鋭の武士」路線を維持している徳川軍を味方につけることで、織田氏は両方の旨味を引き出すことができた――そんな見方をしております。
根性の要るしんどいところは家康に頼ったとも言いましょうか。
小牧・長久手の戦いで、家康が数的不利をあんまり気にしていなかったとされるのも、「少数精鋭の武士」路線に対する信頼があったのかもしれません。
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まぁ、長篠の戦いの合戦場は、徳川の方が地勢に明るかったでしょうから、それで選出されたのかもしれません。
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ただし家康のように古いタイプの軍団を率いる大名が天下を取ってしまった(途中、武田の軍制も導入しています)のは、日本の歴史にとって良かったかどうか。
「安価大量の足軽」路線は封建制度を打ち崩し、下々に政治的発言権を与えます。
これが欧州では後の市民革命につながるという見方ですが、日本の場合はそれが寸でのところで阻止され、長く安定した平和な封建社会が築かれることになった、と。
ちょっと本書の内容から脱線してしまいましたが――正規雇用の武士と非正規雇用の足軽――なんていうメタファーもわかりやすいですし、説得力ある感じ。
小田原征伐の補給の話なども、なるほどと思わされました。
戦国時代の軍隊についてのイメージを補うのに有用な本だと思います(スマホですぐに読める電子版がかなり便利です)。
以下に目次も付記しておきましょう。
目次
第1章 戦いの現場から――天正十八年の山中城攻防戦
箱根路の戦雲
渡辺勘兵衛の活躍
山中城落城
第2章 中世の軍隊――封建制軍事力編成の原理
武士とは何者か
封建制的軍隊の成立
第3章 戦国の兵士は農兵か――軍団の編成と戦争の季節――
後北条軍団を解剖する
後北条軍団の解剖
戦争と季節
第4章 足軽と長柄――軽装歩兵の戦列化――
兵種別編成方式と領主別編成方式
足軽とは何者か
戦争を変えた長柄鑓
第5章 鉄炮がもたらした確信――集団戦から組織戦へ――
鉄炮と戦国の軍隊
軍事上の画期
第6章 侍と雑兵――格差社会の兵士たち――
侍と軍役
侍たちの戦場
戦国時代の非正規雇用兵
二重構造の軍隊
第7章 補給と略奪
戦国時代の兵站
小田原の役と補給
飢餓と略奪
第8章 天下統一の光と影――信長・秀吉軍はなぜ強かったのか
兵農分離と民兵動員
鉄炮神話の再検証
覇者の素顔
戦国軍事革命の結末
文・ やなぎ ひでとし
1980年、大阪府大阪市で爆誕。中学・高校時代は伊賀、大学時代は京都で過ごしたため、あちこちの言葉が混じった怪しい関西弁を操る。
現在は東京・千葉を経て、愛媛・松山に在住。普段はWindowsソフトウェアを専門とするフリーライターと、舞鶴鎮守府サーバーの提督(大将)の二足わらじ。
中国史(とくに春秋戦国時代など)が割りと好物で、好きな人物は漢の光武帝、尊敬するのは管仲・晏嬰。コーエイの『三国志』シリーズではもっぱら馬騰で遊んでいる。日本の武将では武田信玄が好き。
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