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【火縄銃で撃たれたらどんな死に方?】
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「戦いの火蓋が切られた」の語源となってます
今回は現代の銃と火縄銃を比べ、その仕組み、使い方を学んでみましょう。
まず現代の銃ですが、銃弾には、銃から発射される弾頭と、弾頭を飛ばすための火薬、弾頭を飛ばす火薬に着火するための少量の火薬(起爆薬)がセットになって、更にケース(薬莢)に入っています。
それゆえ拳銃に弾を装着すれば火薬の装填も同時にオーケー。
引き金を引くと、銃内部のピンが銃弾の底部を叩いて起爆薬が発火し、火花や可燃性ガスが薬莢内の小さな穴を通って、弾頭を飛ばすための火薬に引火し、さらにそこで発生した燃焼ガスで内部圧が高まり弾頭が発射されます。
説明が一気で、息が切れた方、申し訳ありません。
お次は火縄銃です。
火縄銃は弾頭と火薬がバラバラになっていて、銃口から火薬と弾を込める「先込め」方式です。
発射の手順としましては、まず銃口を上に向けて火薬と弾を入れ、銃に付属の棒(カルカ)で押し込めます。
起爆薬は筒の横についている火皿にいれます。
ここに火をつければ筒内部の火薬に着火し銃弾が発射されるという仕組み。
ただし、狙いをつける前に誤射すると危ないので、火皿の上には安全装置の火蓋がついています。
火皿に火薬を入れた後は、いったん火蓋を閉じて火ばさみに火縄を挟み、狙いをつけたら火蓋を開いて(切って)引き金を引くことにより火縄が火皿に落ちて弾がズドーン!
「戦いの火蓋が切られた」の語源は、この火蓋であることも、ネジにつぐ豆知識ですね。
仮に命をとりとめても怖いのがガス壊疽です
合戦というと、弓矢が飛んで馬が草原を駆け抜け、槍や刀の兵士たちが待ち構えている――。
そんなシーンからして、いかにも槍や刀による攻防が死因に繋がると思われがちです。
しかし、実際その主力は飛び道具であり、鉄砲以前は弓矢や石礫(いしつぶて・要は石コロで威力は高い)などが死傷原因の7~8割を占めていたとも言います。
近接戦闘になれば、主力は槍で、刀の出番はあまりなかったとか。
そして弓矢よりも訓練の時間が短くてすむ鉄砲の登場により、戦国後半以降は主力になっていったのです。
むろん、鉄砲による攻撃でも、一発の弾丸で死ぬケースばかりではありません。
仮に一命を取り留め、戦場から脱することに成功したとしましょう。
その後の処置も大変で、弾丸は周囲の土埃や雑菌を体内奥深くまで運んでしまうため、恐ろしい感染症をおこしてしまうこともしばしば。
抗生物質のない時代ですから、こうした外傷が原因で『ガス壊疽』を起こすこともよくあったようです。
ガス壊疽とは、傷口から浸入した細菌が筋肉を壊死させる病気です。
二酸化炭素やメタンを産生しながら感染が広がり、筋肉が腐り落ちることからこの名がつきました。
詳しく申しますと、クロストリジウム属の細菌によるものとそれ以外(大腸菌など)に分けられますが、戦争や災害などによる外傷性のものはクロストリジウム性ガス壊疽が多いので、この先はそちらに絞って話をいたします。
用語が難しくてスミマセン!
クロストリジウムは嫌気性で芽胞を形成するグラム陰性の桿菌です。
その菌は、土壌内部や生物の腸内など酸素濃度が低い環境に生息。
したがって大気レベルの酸素濃度でも死滅してしまうのですが、「芽胞」と呼ばれる状態を作ることで酸素濃度が高い場所でも生存できます。
芽胞のイメージは、分裂などの生命活動ができない代わりに、強度なバリアを張っている、ドラクエでいうなら「アストロン」な状態です。
続けて、いざ銃弾で撃たれた時の発症状態を考察してみましょう。
毒素が血中に流入して敗血症を起こし、多臓器不全で死亡
弾丸が体内に入る時、このクロストリジウムや芽胞を一緒に巻きこんだとします。
弾丸は周囲の組織を挫滅させますので当然そこは血行障害の酸素不足となり……もう分かりますかね?
嫌気性菌には「ヒャッハー」な環境となり、早いものですと外傷後、数時間で傷の痛みが強くなり、発赤の範囲が広がります。
最初は赤く腫れ、壊死によって創は褐色から黒色に変色、ガスが発生するためサクサクとした雪を握るような握雪感を呈します。
そして強烈な腐敗臭やドブ臭を発散……。
進行すると壊死物質や毒素が血中に流入するため敗血症をおこし、多臓器不全で死亡するのです。
説明してい怖い、怖すぎます!
最近は戦争などでの外傷性ガス壊疽は減っておりますが、糖尿病などで免疫が低下している方が傷を契機に非クロストリジウム性ガス壊疽を発症するというケースが増えておりますのでご注意下さい。フットケア大切です。
なお、ガス壊疽の治療法は、原因菌に応じた抗生剤の大量投与となりますが、クロストリジウム性の場合、酸素に弱い性質を利用して高圧酸素を投与する場合もあります。
ここまで前提の説明が長くなり申し訳ありません。
次ページで井伊直政の死までを考察してみたいと思います!
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