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徳川四天王の井伊 関ヶ原で撃たれて1年半後に……
徳川四天王の1人に数えられる『井伊直政』は、関ヶ原で負った銃創が元で亡くなったと伝えられます。
負傷から死亡までは約1年半、さて原因は何だったのか?
直政の半生と共に、その謎へ迫りましょう。
井伊直政は、遠江国(静岡県の西側)の井伊谷を治めた井伊家の第24代宗主で、戦国時代の前半、同家は今川義元に仕えていました。
直政の父・井伊直親は傍系でしたが、当主であった井伊直盛の養子となり、直盛が桶狭間の合戦で死去した後に井伊家の宗主となります。
しかし、父は謀反の疑いを掛けられ謀殺されてしまいます。
その時、直政はまだ2歳であったため直盛の娘かつ直親の婚約者であった女性が一時的に井伊家宗主となります。
この女性こそ大河ドラマ主人公の『井伊直虎』ですね。
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直虎の計らいで家康に見出された直政は、徳川家康の小姓に取り立てられ武田氏との戦いで活躍。
武田滅亡後は徳川氏と北条氏の和睦交渉を担当しました。
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徳川氏が甲斐、信濃を領土とした際、直政の部隊には旧武田家臣団が数多く組み込まれました。
ここで出来たのが『井伊の赤備え』部隊です。元は武田家の山県昌景が率いたことでも勇名を馳せておりましたね。
そして天正12年(1584年)、直政はこの赤備え部隊を率いて小牧・長久手の戦いで大活躍し、長槍で敵を蹴散らす姿が『井伊の赤鬼』と恐れられます。
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慶長5年(1600年)の関ヶ原の戦いでも東軍の軍監に任命され、指揮の中心となる一方、諸大名を味方に引き込む工作も行い、まさに勝利の立役者となりました。
しかし、ここで思わぬ不幸が彼を襲います。
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大きな負傷をしたにもかかわらず、その後も戦後処理に注力し、徳川幕府の基礎固めに尽力しました。
そして1602年3月24日(慶長7年2月1日)、長年の過労と関ヶ原での銃創が癒えぬまま41歳で死去したのであります。
一説に死因は破傷風というものもありますが、同病の潜伏期は3日~3週間です。
関ヶ原の合戦から1年半後、その傷からの破傷風が原因で死ぬというのはかなり無理があります。
敗血症で死んだという説については血液中に菌が入れば何でも『敗血症』ですから面白くありません。面白くないというのは医学的な考察が、という意味ですので悪しからず。
以前から私が気になっていたのが『鉛中毒』説です。
弾丸からジワジワと鉛が溶け出す恐怖
鉛は重金属の一種で、一時的に多量摂取すると急性中毒になり、少しずつ蓄積していくと慢性中毒をおこします。
鉛中毒は塗料や不適切な釉薬などから起こることが知られていますが、体内に鉛弾がある場合はそこから溶け出し発症するケースも。
症状は腹痛・嘔吐・麻痺・感覚異常症など様々で、さらには貧血、免疫系の抑制、腎臓への影響なども引き起こします。
直政がだんだん弱っていく様子が想像できませんか?
鉛中毒を悪化させないためには、鉛をそれ以上摂取しないことが大切です。
しかし体内に鉛弾が残っていては、どうにもならず悪化の一途です。
弾丸から鉛が溶け出す話としましては、鉛弾が体内に残った鳥が鉛中毒になり、その肉を食べた人にも起きてしまうという症例があるため、近年では狩猟用に鉛を使うことが禁止されつつあるなんてお話もあるほどです。
もしも仁がこの時代にタイムスリップして鉛弾を摘出していたら、直政は長生きしたかもしれません……。
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文/馬渕まり(忍者とメガネをこよなく愛する歴女医)
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◆拙著『戦後国診察室2』をよろしくお願いします!
【参考】
法病理学講義ノート:青木康博(→link)
鉛中毒/MSDマニュアル家庭版(→link)
鉛中毒/MSDマニュアルプロフェッショナル版(→link)
ふるさと種子島(→link)
日本高気圧環境・潜水医学会(→link)
銃砲刀剣類所持等取締法/wikipedia
火縄銃/wikipedia
鉄砲伝来/wikipedia
ねじ/wikipedia
クロストリジウム/wikipedia
壊疽/wikipedia
鉛中毒/wikipedia
ニャコ虎が語る井伊直虎の十大秘密 戦国未来
『雑兵物語』(→amazon)