歴史ドラマ映画レビュー

北斗の拳世代必見『コール・オブ・ヒーローズ 武勇伝』のアクションはデブゴン仕込み!

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コール・オブ・ヒーローズ 武勇伝
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民の力と中国の歴史を感じる

本作は基本的に『七人の侍』や『マグニフィセント・セブン』中国版といったところではあります。

が、中国独自の歴史背景もきちんと抑えています。

馬峰と張亦は同門同士という設定。彼らが過去所属していたのは「ヒョウ(金+票)局」という組織です。

これは中国独自のもので、長い旅路において金品等を輸送する際につける護衛団のことです。

実際、日本語訳では「護衛団」とされています。

楊克雄の組織は「自警団」。中国語では「保安団」ですね。

これは秦代あるいは宋代に起源を求めることのできる制度で、行政単位ごとに武装して安全を確保するという制度でした。

映画『SPIRIT』主人公の霍元甲、『ドランクモンキー 酔拳』や『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』の主人公である黃飛鴻らも、「保安団」を率いていたとされています。

楊克雄の一団に女性メンバーがおり、かつ夫人の周素素が強いのも中国らしさです。

中国の武侠ものではパーティメンバーに女性がいることも、英雄の妻が「女侠」と呼ばれて滅法強いのも、ごく伝統的なものです。

黒人、先住民、アジア人をメンバーに加えた『マグニフィセント・セブン』ですら、女性は七人には入りませんでした。それを中国ですといとも簡単にやってのけます。

子供達が馬峰に呼びかける声が「孫悟空」になっていますが、元は「大侠」と呼んでいます。

終盤には楊克雄の娘が「私も将来、江湖の女侠になりたいな」と言います。

「侠」というのは弱き者のために戦い人々のことで、本作のテーマはまさしく、中国の英雄伝の根底に流れて来た「侠」の精神。

このように、中国の歴史に根ざした背景があります。

そういうことを抜きにして楽しめる映画ではありますが、知っておくとより楽しめます。

時代設定は20世紀初頭。中国大陸では戦乱のたびに民衆が苦しんできました。

そんな中、立ち上がる英雄たちは、どの時代にもおりました。

「世紀末救世主伝説」ならぬ「王朝末救世主伝説」。普遍的な英雄の姿が、本作では描かれます。

 


アクションに惚れろ! ゲスの極み悪党に本気で怒髪衝天しろ!

サモ・ハンがアクション監督をつとめた、迫真の戦闘場面もみどころ。

ジャッキー・チェンより恐ろしくて殺気にあふれていることに定評のあるサモ・ハンです。

彼のアクションはダメージ描写が半端なく、撮影中に死人が出ていてもおかしくないようなヘビーさです。

しかも演じるのが、ドニー・イェンに匹敵すると言われるほどのウー・ジン。パッと見たところは、カンフーが得意な荒木飛呂彦氏の従弟みたいな雰囲気ですが、彼はともかく凄い!!

絶品です。

特に終盤の槍を手にしたアクションは本物のド迫力です!

様々な武器を駆使した動きも最高です。

楊克雄は鞭、周素素はなんとザル! 華麗な動きで敵を圧倒する本物のアクションを堪能してください。

そしてこれまた『北斗の拳』ぽくて本作の見所なのが、ルイス・クー演じる曹少璘でして。軍閥将軍である父の七光りでゲスの極み野郎です。

ニヤニヤした笑い方、卑劣な手段、女子供老人も手に掛ける卑劣さ。見ていて思わず「てめえに今日を生きる資格はねえ!」と叫びたくなります。

ここまでゲスで強烈で腹が立つ悪党って、今時珍しいと思うんですけれども、こいつに怒っただけ、ラストのカタルシスがスッキリしますので、どんどんムカついてください。

そんなわけで、ジェネリック実写版『北斗の拳』として、本作はオススメ。

しかも本家より断然効果あり!!

ごく最近の作品なのに何故か懐かしく、そして斬新な大傑作ってなかなかお目にかかれない。

カンフー映画好きだけではなく『北斗の拳』直撃世代の方も是非ご覧ください!


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著:武者震之助

【参考】
『コール・オブ・ヒーローズ/武勇伝 (字幕版)』(→amazon

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