2022年に日本公開されると話題となり、アカデミー賞では挿入曲の「ナートゥ・ナートゥ」がインド映画としては初となる歌曲賞を受賞。
リピートして鑑賞した熱いファンも多い話題作が『RRR』です。
弊サイトの映画レビューコーナーで私の記事をご覧いただいた方は『いかにも好きそうな作品だな』と思われたかもしれません。
始めにお断りさせていただきますと、アクション映画として紛れもなく傑作です。
しかし、見終えたあとの気持ちはどこか苦いものでした。
基本DATA | info |
---|---|
タイトル | 『RRR』 |
原題 | RRR |
制作年 | 2022年 |
制作国 | インド |
舞台 | インド |
時代 | 20世紀初頭 |
主な出演者 | N・T・ラーマ・ラオ・ジュニア、ラーム・チャラン |
史実再現度 | アクション映画と割り切ること |
特徴 | アクション映画としては紛れもなく一流だが…… |
どこで見れる? | アマゾンプライムでレンタル400円(標準画像→amazon)~ ※2023年7月現在 |
お好きな項目に飛べる目次
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あらすじ
1920年、イギリス統治下のインド――。
ゴーンド族の村から、美しい声を持つ少女マッリが、横暴な総督夫人によって拐われてしまう。
村人たちは抗議するも、傲慢な相手は聞く耳を持つことすらない。
精悍な勇者ビームは、マッリ奪還を目指しデリーへ。
そのころ、暴動を鎮圧する屈強な警官ラーマもいた。
マッリ奪還を狙う犯人を捕えるよう命じられ、ラーマは腕を鳴らして待つ。
そんな水と炎の化身が、ある偶然から出会った。
たちまち意気投合した二人だが、実は敵対する運命にあった……。
バトル、友情、そして勝利!
熱い夢が詰まった魅惑の一本!
初めて見た気が全くしない……
『なんだか初めて見た気がしない……』
というのは、むろん私個人の感想です。しかし、こういう映画は今まで散々見たと思ってしまったのだから仕方ない。
日本映画ならば、千葉真一さんが扮する青年が空手で悪党を倒すもの。女性を暴行する米兵を倒すのはお約束よ。猛獣にも挑む!
中国語圏の映画ならば、ブルース・リーと、ジミー・ウォングらそのフォロワー映画が該当します。1980年代のジャッキー・チェン時代までは、カンフー映画といえば悪役は大体日本人でした。
勧善懲悪、あってないようなお話、アクションはともかくスゴイ! リアリティは二の次!
そういう映画はかつて東アジアで盛んに作られていたものです。
ただ、当時のそうした作品と比較すると、『RRR』には良いところも悪いところもあります。
よいところは、映像の出来そのもの。
アクションの派手さ。特殊効果は比べ物になりません。技術が進歩しています。
悪いところは、長くてテンポが冗長なところ。
インド映画の特徴だろ……と指摘されれば確かにそうですが、往年のアクション映画はだいたい90分程度で、サクサクと進んでいきました。
そんなわけで、随分と懐かしい映画があったもんだなぁ、と感じてしまったのです。
可愛いけれど主体性があまり感じられないヒロイン。
ゲスそのものの外国人悪党も、実に古典的です。
歴史面から見ると注意が必要
アクション映画としては最高!
今さら褒め称える必要はなく、ともかく見よう、最高だ!
となりますが、歴史映画としてはどうなのか。
合わない人もいるかもしれませんので、そこを取り上げてみましょう。
ほぼ絶賛しかない本作ですので、そうしたレビューをご覧になりたい方は、お手数ですが別サイトを検索してください。
では、一つずつ見て参りましょう。
◆歴史を学べる?
アクション映画としては爽快、痛快、それはそう。
ただし、歴史的な視点からはよろしくないこともあります。
ガンジーの方が歴史的意味では大きい。ただ、非暴力不服従ではアクション映画に向いていませんよね……。
本作は、あくまで歴史の入口として、興味を持ったら書籍などで掘り下げるのがオススメです。
歴史作品とは何にせよこうした特徴があるものですが、本作については間違っても『インドの近代史ってこうなのか』とまで考えない方が良いと思います。
◆イギリス人が悪役すぎる?
そんなことはなく、むしろコメディタッチで丸めているとすら思えます。
イギリスでは近代史教育を行います。
「インド人にこう言われたら、まぁ仕方ない」と受け止めていると思ってよいでしょう。
イギリスでは大英帝国時代を呑気に肯定する人は、「『モンティ・パイソン』(伝説的なコメディテレビ番組)でコケにされてたバカ」という扱いです。
◆やられる兵士が白人ばかりのような?
派手なやられ方をする手前の兵士や警察官はそうですね。そこは諸事情を汲み取りましょう。
◆残酷なの?
暴力描写がきついのは確か。苦手な方は、他に穏やかな映画をご覧になられた方が良いです。
◆長くない?
長い! 無茶苦茶長い!
「いいとは思う。でも半分の長さでよいのでは?」と思う箇所はたくさんありました。そこは覚悟しておきましょう。
◆批判したらファンに怒られそう……
SNSで声の大きい方が目立つ昨今のファンダムとは、得てしてそういうものでしょう。
私も正直、懸念していますが、賛美一色というのも健全ではないので、感じたことを書かせていただいています。
◆見ない方がいい人はいますか?
暴力描写が苦手な人は前述の通りです。
過剰な愛国描写が苦手な方もご注意ください。
私には「ナートゥをご存知か?」ですら精神的に辛いものがありました。
愛国心を否定するわけではない。でもこういう自国文化称揚って、よい趣味ではないですし、リスクもあり、悪手だと思います。
脳内では別の自分がこう言っています。
「昔はさんざんこういう空手だのカンフー映画を見て喜んでたじゃねえか!」
はい、その通りです。
しかし、ああいう1970年代の作品ならまだしも、2020年代にこういう作りで、かつ、異常な爽快感と、英米圏ですらもてはやされていることには危惧すら覚えてしまうのです。
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