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明では嫌われた茶碗に高値がつく不思議
さて、大公の心を掴んだ茶碗ですけど。
美学だけでは言い切れないものもあります。
というのも、作られた明では特に価値がないものでも、『プレミアがつくのでウッハウハ〜!』という、日本ではあまり知られざる側面がありましてね。
「日本人ってさぁ、地味な茶碗でも高く買うからチョロいよね!」
なんて思われていました。
曜変天目茶碗も、明では不吉とされ、不良品であったのです。
不良品であるからこそ割られてしまい、そのため極端に数が少ないのです。
「不良品でも買っちゃう日本ってどうよ?」
なんて思われていてもさもありなんですが、まあ……おかげで日本に残ったとも言えなくはありません。
明ではわからないセンスがあった、とも言えますよね。
舞踏会で踊ろう
四人は、舞踏会のために踊り始めます。
マルティノはジュリアン、マンショとミゲルに別れ、訓練開始。
当時はパヴァーヌ、ガイヤルドが流行中でした。
練習中、うんちくを語り出すマルティノも踊れと他の三人が言うわけですが、マルティノは断ります。
その理由は?
「機械は得意だが、女は駄目だ。前にすると何も考えられなくなる」
「お前が?」
「お前が?」
「……うるさい」
お、マルティノの意外な弱点だなっ!
こういうタイプは、理性を失うことがともかく苦手なんでしょう。こいつめ〜!!
練習をこなし、少年たちは、舞踏会に参加。
和装で草履の日本人が、フィレンツェで踊る!
あー、こういうのが見たかったんですよね。女性たちのドレスも素晴らしい。
四人とも楽しそうです。
ちょっと切なくなってきた……この先何があるか考えるとつらいものもありますが、こうして踊った思い出が彼らの中には生き続けることでしょう。
役者さんも、相当努力を重ねたはずですね。本当に皆、頑張りました!!
四人は馬車の中で、うっとりとした思いでおります。
ミゲルはあのエロ詩を繰り返し、止められています。ミゲル、大丈夫かっ!
馬車は長い道を進んでゆくのです。こういう移動ひとつとっても、美麗でうっとりしてしまいます。
日本から出発して三年。ついに彼らは法皇の待つローマに向かうのです。
しかし、手前で足止めをくらい、宿に逗留するほかありません。
メスキータは、使節団が偽物だという投書があったというのです。それはマンショのせいだというのです。
問題となったのは、血筋です。
しかし、マンショは問題がある。
領主の子ではなく物乞いの子で、母も生きているのだと。ヴァリニャーノは騙した、物乞いであるという目撃証言もあったのです。
マンショは、そのことを認めます。
保護した親がキリシタンであるため迫害され、村はずれで物乞いをしながら生きていたのでした。
物乞いの子で何が悪い?と憤るマンショに、メスキータは今まで騙してきた上に、法皇まで騙すのかと反論するのです。
「お前たちの旅はここで終わりだ!」
四少年はヴァリニャーノの操り人形で、もうそんな糸は切れかかっている――メスキータはそう突き放します。
それでも少年たちの耳には「マギ!」と歓迎する声が聞こえてきます。
法皇の前で、枢機卿は侃々諤々大論争を繰り広げられています。
ヴァリニャーノの野心も俎上にあがります。
ゴアで、ヴァリニャーノは告発状について聞かされています。
きっちりと彼の反応も描くわけです。ヴァリニャーノは、信長が光秀に討たれた件について語ります。
情熱は敵を招くと、諭されるヴァリニャーノ。
歓迎の声を前に、為す術もない少年たち。運命はどうなるのでしょうか。
MVP:秀吉、右近、利休
黄金の茶室は怖かった……悪夢のようでした。
豊臣秀吉の描き方が複雑で、面白い!
織田信長とはまた違います。
秀吉の自意識や名目は信長の後継者ということになっておりますが、むしろ対極上にあると本作では位置づけられているのでしょう。
本作は、信長の行動も、秀吉の行動も、信念が根底にあると丁寧に迫ってきます。
利休を殺すのも、右近を追放するのも、欲望が奥底にある。
秀吉の行動原理の背景に、欲求を置いているのです。
それでも強引ではなく、説得力があります。
新史料や説を丹念に追ってゆくドラマも魅力的ですが、人間の動機や欲求、ゆるぎない価値観に重きを置くこういう描き方もありです。
そして、こういうドラマこそ、大河がなくしてしまったものかもしれないと唸らされたのです。
総評
深い……。
本作のキャスティングについて、あれこれ考えておりました。
もしこれが日本であれば、宣伝効果を考えてマンショとメインビジュアルに緒形敦さんを据えたのではないかと思ってしまいまして。
四少年の役者さんは、どれも勝るとも劣らない魅力にあふれており、実力も充分にあります。
それでも、二世俳優という血統を重視し、緒形敦さんをメインにしたのではないかとちらっと思ってしまうわけです。
そこまで考えて、ハタと気づきました。
緒形直人さんの秀吉。
緒形敦さんのミゲル。
この二人は、ペアなのではないか?
四少年の魂のペアとも思える相手は、見つかりつつあります。
精神の強さと献身を求めたジュリアンには、医師カルロ。
知性と真理を求めたマルティノには、ガリレオ。
愛と真っ直ぐに生きることとは、マンショが信長から託された問いかけ。
こう見て来ると、ミゲルだけがまだいないように思えるわけで、それが秀吉ではないか?と思ったのです。
秀吉の欲深さ、業の深さ、権力者としての振るまい。
ミゲルの正義感の強さ。
これは対極にあるようで、そうでもないのかもしれない。
だとすれば、父子がキャスティングされる理由も納得できるというものなのです。
それにしても、本作っておそろしいですね。
イタリアのドロドロした陰謀劇も、しっかりとフォローしてきました。
かわいらしさすらあるビアンカ周辺のドロドロさ。
兄を殺したいと息巻く枢機卿。
とんでもない場所に踏み込んじゃったわけですよ!
むしろ日本のほうがぬるいような、と思わせてあの茶室です。
人間の欲望や業とは、洋の東西なんか関係ない。
本作はそう描いているのです。
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
◆アマゾンプライムビデオ『MAGI』
◆公式サイト