るろうに剣心SNK問題

映画『るろうに剣心 最終章』公式サイトより引用

この歴史漫画が熱い!

『るろうに剣心』オマージュとパクリの境界線にあるSNK問題とは

アニメだけでなく実写版映画やミュージカルにもなった、ジャンプの人気漫画『るろうに剣心』。

2022年9~10月の金曜ロードショーで次々に放映され、佐藤健さんの演じる緋村剣心の剣さばきに目を奪われた方も少なくないでしょう。

その激しい動きは、言ってみれば格闘ゲームの人気キャラ。

人によっては『戦国無双』や『ストⅡ』を思い出された方もいたかもしれませんが、実はこの『るろうに剣心』、とあるゲーム会社の作品と絶妙にフシギな関係を保っているのをご存知でしょうか。

『餓狼伝説』や『サムライスピリッツ(以下、サムスピ)』で知られる「SNK」です。

『るろうに剣心』とSNK作品には、非常によく似たオマージュキャラ(見方によってはパクリ)が多数あり、ファンの間ではいわゆる「SNK問題」として知られています。

幕末を舞台とした超人気漫画がどうしてこうなった?

本稿ではその経緯を振り返ってみましょう。

『るろうに剣心―明治剣客浪漫譚―カラー版』(→amazon

※TOP画像は映画『るろうに剣心 最終章』公式サイト(→link

 

志々雄真実=牙神幻十郎

『るろうに剣心』の作者・和月先生はSNKの格ゲー、特に『サムスピ』の大ファンであることを広言しています。

ゆえにデザインそのまんまのサムスピキャラが漫画『るろうに剣心』に反映されることは、熱心な読者にとって周知の事実でした。

例えば、火傷を負う前の『るろ剣』志々雄真実(ししおまこと)が、まんま『サムスピ』牙神幻十郎(きばがみげんじゅうろう)であることは有名です。

 

あるいは『るろ剣』巻町操(まきまちみさお)が、『サムスピ』ナコルルであることもよく知られています。

というか和月先生自体が単行本でハッキリと仰られています。

こうした、今ならTwitter炎上も不思議ではない和月先生のオマージュに対し、SNKはどう対応したのか?

そこには何ともフシギで麗しい共生関係がありました。

SNKは1995年に『サムライスピリッツ 斬紅郎無双剣』を発表(るろ剣は1994年~1999年に連載)し、緋雨閑丸(ひさめしずまる)という赤毛の美少年を登場させています。

いわば『るろ剣』主人公の緋村剣心です。

 

あれ? 『サムライスピリッツ』ってゴツいおっさんまみれの剣豪ゲームじゃなかったっけ?

ゲームの発売当初、そう感じたサムスピファンがいたばかりでなく、和月先生も「ひょっとして剣心のオマージュかな?」と思ったようです。

ただしこの頃は『幽☆遊☆白書』の蔵馬というキャラもいて(アニメ版のみ赤毛)、こちらのオマージュの可能性も指摘されています。

要は、赤毛で中性的なヒーローが流行していたんですね。

 

こうした酷似キャラを登場させても、お互い怒らない、細かいことは言いっこなし! 『るろ剣』と『サムスピ』には、そんな絶妙な距離感がありました。

それから2年後の1997年、SNKは『月華の剣士』という幕末を舞台にした武器格闘ゲームをリリースし、どう見ても『るろ剣』そっくりなキャラクターを複数名登場させています。

時代設定が幕末であれば、似るのも仕方ないのでは?

そんな見方もできるかもしれませんが、そもそも何かと面倒な幕末を格闘ゲームにすること自体が異例でした。

つまりは『るろうに剣心』あってこそ……。

人気にあやかろうとしている……?

当時のファンがそう思うのも無理はないレベルだったのです。

なんせ、デザインどころか、技名、決め台詞まで共通するものがあり、もはやSNKと『るろ剣』のオマージュ関係なんて、指摘するだけ野暮だ――そんな空気すらありました。

 

裁判沙汰にはならなかったのはなぜ?

オマージュというか、場合によってはパクリと指摘されても仕方のないこの状況。

当時はなぜ炎上しなかったのか?

そう思われるかもしれませんが、実際は抗議が来て大変だったそうで、単行本の余白を見れば、和月先生がいろいろ戦っていたことがわかります。

それなら、なぜ、世間に知られるほど燃えなかったのか?

裁判沙汰にはならなかったの?

実は、SNK側も「人のこと言えた義理やないやろ」と突っ込まれかねない状況だったゆえに、上記のような状態が続いたのかもしれません。

例えば『サムライスピリッツ』の天草四郎は、そのまんま映画版『魔界転生』にたどり着きます。

『月華の剣士』の李烈火は、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』の黄飛鴻ですし。

SNKのゲームキャラは、見覚えのある人物がとにかく多い。

『るろ剣』と『サムスピ』の間で問題を大きくすれば、両者ともに危険、下手をすれば国境を越えて飛び火しかねない状況もありました。

 

危険水域でキャラが似ているのに決して訴訟にはならない――その理由をまとめますと

【持ちつ持たれつ】
【お互い様】

という構図が見え隠れしますね。

和月先生も、SNKも、両者のファンも、みんな幸せ、ニッコリできる。

それでいいじゃない。パクリだのトレースだの言い張って、誰が幸せになれるの?

とまぁ、そういうこと。

※『真・サムライスピリッツ』

※『幕末浪漫特別編 月華の剣士 〜月に咲く華、散りゆく花〜』

キャラ酷似問題をまとめると以下の通りです。

【キャラオマージュの推移】

吉川英治『宮本武蔵』他

山田風太郎『魔界転生』

映画版『魔界転生』

SNK『サムライスピリッツ』シリーズ

和月伸宏『るろうに剣心』
映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』

SNK『月華の剣士』

もう、何が何やら。

非常に混沌としており、そもそもは吉川英治の『宮本武蔵』から始まっていると言えるのですから興味深い。

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