こちらは2ページ目になります。
1ページ目から読む場合は
【るろうに剣心SNK問題】
をクリックお願いします。
お好きな項目に飛べる目次
お好きな項目に飛べる目次
2020年代だと回避できそうにない問題も
突っ込んでもキリがないし、かつてはそういう時代だった――。
これで終わりにしたいのですが、2020年代以降、デザインを一から見直さなければ危ういキャラクターが『るろうに剣心』にいます。
巻町操(まきまちみさお)です。
前述の通り、単行本でハッキリと『サムライスピリッツ』のナコルルがモチーフとされており、それだけなら他のキャラと変わりはないわけですが、彼女には一つ問題がありました。
「アイヌ模様の衣装」です。
ドット絵の限界もあるため、サムスピ・ナコルルのアイヌ模様はかなり簡素化されています。
和人がアイヌの模様を勝手に使う、しかも簡素化している時点で実は問題です。
なぜならアイヌの模様は、武士の家紋のようにアイデンティティと直結し、非常に大切なもの。過去には、ある和装店がアイヌ柄の浴衣を企画し、抗議されて販売中止となった事例もあります。
SNKのデザイナーやイラストレーターも、アイヌの模様にかなり苦労したようですが、後世、より的確に考証を行った『ゴールデンカムイ』では、その描写で非常に苦労をされていたようです。
そもそもナコルルのマントも、考証としてどうなのか。疑念が残るばかりか、そのマントが巻町操にも流用されてしまっている。
「いやぁ、SNKの時代考証に期待すんなってことですよ! 王虎もシャルロットもひどいもんじゃないですか〜」
確かに問題は巻町操だけではありません。
王虎の辮髪はなんなんだ?
レイピアは刺突武器なのにシャルロット斬撃の強さはおかしいだろ……。
そういうツッコミもあるのですが、彼らは祖国ではマジョリティです。
シャルロットはフランス貴族。王虎は清の漢族でした。
マジョリティの考証ミスと、アイヌのような少数民族考証のミスは本質が異なります。
要するに、ナコルルにせよ、ナコルルをモチーフにした巻町操にせよ【文化の盗用】に抵触する危険性があるんですね。
操はマントを出さない、デザインのアレンジで回避できる範囲内であると思います。
しかしナコルルは、かなり厳しいとは思います。
和人の雑なアイヌ文化盗用の一例として、教訓になるかもしれません。
しかも、ナコルルは人気があり、作品によってはかなり強いため、アイヌへの差別ニュアンスがこめられた罵倒をする格ゲーファンもいるようです。
そういう無神経かつ差別的な行為があると、ゲームそのものに大迷惑を与えかねません。
古くは滝沢馬琴の八犬伝など
パクリ、トレース、オマージュ――。
現在は、連載当時の1990年代と比較して、かなりコンプライアンスが厳しくなったと思えます。
古典文学にしても、民話や伝承の「パクリ」になりかねないものが多い。
例えば滝沢馬琴の『八犬伝』は『水滸伝』を換骨奪胎したものです。落語だって中国の笑い話を翻案した演目が実に多い。
これは近代以降もそうで、江戸川乱歩がエドガー・アラン・ポーからペンネームまで拝借したことは有名な話ですね。
漫画でも同じことが言えます。
一例として、横山光輝版『三国志』。
劉備が母のためにお茶を買う場面から始まりますが、これは吉川英治の創作であり『三国志演義』には存在しない場面です。
それ以外にも、貂蟬の自害など、吉川版をふまえた展開をする『三国志』作品は実に多い。
それほどまでに吉川版が有名であったということですね。
吉川英治といえば、彼が創作した『宮本武蔵』のヒロイン・お通は、山田風太郎『魔界転生』に登場します。
姪という設定ではありますが、吉川英治なくしてあのお通はありえない設定です。
転生した剣豪たちを十兵衛が薙ぎ倒す 漫画『十 ~忍法魔界転生~』が不気味で面白い
続きを見る
1990年代に連載が開始された『るろうに剣心』も、そうした時代の空気を踏まえたものでした。
ゲームやアニメのキャラクターデザインそっくり!
読んでいる側がそう思っても、当時は問題になりませんでした。
むしろ単行本でネタばらしをされて「やっぱり!」と盛り上がっていたもの。
和月伸宏先生が自らネタばらしをしているのですから、どうしたって気になるところですが、先生や作品、SNKに対して何か悪く言う気は毛頭ありません。
今後も面白いマンガ・ゲームを世に送り出していただけることを願う――ファンとしてそう申し上げたいのであります。
なお、次ページにて『サムライスピリッツ』に歴史ツッコミを入れ、了とさせていただきます。
よろしければ併せて御覧ください。
※続きは【次のページへ】をclick!