上弦の伍・玉壺

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死体アートに美を見出す上弦の伍・玉壺の異常性を考察『鬼滅の刃』

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陶磁器は芸術だ、そしてカネになる!

こうした時代を経て、江戸時代になると、まさしく日本の陶磁器は【美術の時代】となります。

鎌倉から多数発掘される宋磁は、透明感のある白や薄い青が特徴的。

それが時代が下り明代になると、白磁に釉薬で模様を描いた磁器が人気を博し、景徳鎮のものは特に高級とされました。

中国では「五彩」、日本では「色絵」と呼ばれるもの。

陶磁器については、ヨーロッパのほうがアジアの後追いになります。マルコ・ポーロが持ち帰った陶磁器に夢中になり、以来あこがれの眼差しを向けていました。

江戸時代を通して日本と交易できたオランダも、日本の華麗な陶磁器を買い付け、利益を得ます。

江戸時代は武士の時代であり、商業が発達しないというイメージを抱いているかもしれませんが、そう単純な話でもありません。

日本でも中国や朝鮮にあった技術を身につけ、経済力を保つ工夫もありました。オランダの東インド会社を通した貿易も視野に入れて作ります。

商品は芸術的価値があった方が高値がつく。

評価されたい、美術品として価値があると思って欲しい――そう玉壺が願ったとすれば、それは近世となり、技術と経済が発達した江戸時代以降のものでしょう。

ただし、商業路線に載せると、芸術的感性は鈍くなっていきます。無惨のために売れる壺を作りながらも、死体を生ける壺を作りたい。

すると無惨は「いつか思う存分そうさせてやる」と励ましていたのではないか?

そんな組織運営も想像できて、興味深いものがあります。

 

対峙した敵には芸術的感性がない

とはいえ、玉壺に同情の余地はないでしょう。

確かに両親を失ったことは不幸ですし、先天性なのか、妙な美意識を持ってしまったことも不幸といえます。

しかし、妓夫太郎と堕姫ほど不幸な環境が揃っていたわけではありません。

グロテスクな嗜好は同人活動で発散しながら、商業誌では無難な作風にする――そんな現代的なクリエイター気質も浮かんできますが、最後の一線を超えてはならないのは当然のこと。

現代に置き換えてみれば、彼は漁村の子どもを殺した時点で逮捕収監されたかと思えます。

歴史的観点からいくと、玉壺とは近現代に至らないものの、中世よりは発達した、まさに近代らしい鬼。

そんな彼にとって不幸だったのは、己の芸術的感性を理解しない時透無一郎と当たったことでしょうか。

彼は杣人(そまびと・木こり)の家に育っていました。

素朴な人生を送っていて、経済や芸術的な感性からはほど遠い環境。

生まれつきの美的センス以前に、それを育む環境もありません。

雲を眺めて何かを感じ取ったり、他の人を動物にたとえるような感受性はあります。

しかし、そういう人間とはしばしば捻った美的センスに心を動かされないもの。

玉壺は何の因果か、彼の作風を理解しない敵と対峙する――それが最大の不幸だったかもしれません。

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文:小檜山青
※著者の関連noteはこちらから!(→link

【参考】
『鬼滅の刃』12巻(→amazon
『鬼滅の刃』アニメ(→amazonプライム・ビデオ

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