鯉登音之進

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鯉登音之進って一体何なんだ?ゴールデンカムイ人気キャラ深掘り考察

明治18年(1885年)12月23日は鯉登音之進が生まれた日です。

漫画アニメ『ゴールデンカムイ』に登場する鯉登少尉のことですので、日付はもちろん物語上の設定。

特徴的な薩摩弁で読者からの人気も高い彼は、実在した最後の第七師団長と同じ姓を持っていて、作品上でも屈指の重要人物といえます。

しかも、際立って特異な個性も持ち合わせているため、『こいつは一体なんなんだ……』と戸惑われた方も少なくないでしょう。

彼の個性は一体どこから来るのか。

物語が終わった後、どういう生涯を過ごしていくのだろうか。

鯉登音之進の個性を深掘り考察してみましょう。

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漫画『ゴールデンカムイ』16巻(→amazon)29巻(→amazon

 

“ボンボン少尉”というお約束

『ゴールデンカムイ』は、作者の野田サトル氏が好む海外の小説が映画へオマージュが随所にみられます。

鯉登音之進の場合、軍隊ものや貴族もののお約束を踏まえている。

ファンブックによれば、鯉登と月島の関係はご令嬢とお付きの女性になるとのこと。

イギリス貴族の場合、貴族のボンボンには従者がつきます。日本でも有名なのはウッドハウスのジーヴスシリーズでしょう。

どこか抜けたバーティ・ウースターと、切れ者の「従者」ジーヴスのコンビを描いたシリーズ作品です。

どういうわけかこのジーヴスを「執事」と翻訳したためか、日本のフィクションでは執事と従者の混同が見られます。

執事:家政を取り仕切る男性

従者:貴人の側について世話を見る男性

従者は基本的に同性にのみつきます。

お嬢様と執事というコンビはよく見かけますが、あれは間違いだと認識してください。お嬢さまには侍女がつきます。

男性の貴人に、便利な従者がつく。女性の貴人の場合、侍女となります。

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日本でも大人気のドラマ『ダウントン・アビー』で説明するとこうです。

お嬢様と次女のコンビは、メアリーとアンナ、グランサム伯爵夫人のオブライエンのコンビとなります。

男性同士の場合、グランサム伯爵付の従者として、ベイツが該当します。

主従はボーア戦争において、士官と従卒という組み合わせでした。このコンビは軍隊における士官と従卒や副官が、復員後もペアになった例です。

鯉登と月島はこうした軍隊制度においてペアを組むことになった関係といえます。

西洋の軍隊制度は貴族制度と関係性がありますので、彼らはお嬢様と女中、ボンボンと従者のようなコンビであることは確かです。

なお『ゴールデンカムイ』には財閥令嬢・金子花枝子が登場します。ふてぶてしく世慣れした女中が彼女の側にいます。あれもそうしたコンビです。

軍隊内では、キラキラした士官につく従者は往々にして、相手に憧れることもある。

あるいは冷淡に「仕事だから面倒を見る」と割り切る場合も。

鯉登と月島は割り切りタイプです。

月島がいちいち感激するタイプであれば、鯉登はおそらく、やりにくかったことでしょう。

 

薩摩隼人であり、英国紳士になりかけている

鯉登音之進は、華族の母を持つ勇作とは異なり、両親ともに薩摩出身です。

ジゲン流を得意としています。

幼い頃、兄弟そろって父からジゲン流の稽古を受けている場面があります。先祖から新選組の逸話を聞いていたようにも思えます。

彼の祖父あたりは土方と対峙していてもおかしくはありません。明治維新によりのしあがった、生粋の薩摩隼人なのでしょう。

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彼は世代的に英国紳士らしさも入り込んでいます。明治の薩摩隼人は、いちはやくイギリス流を取り入れた一面もありました。

薩英戦争以来距離が近く、留学生も多く、薩摩の独擅場とささやかれた海軍はイギリスを規範としています。

鯉登平二は、積極的にイギリス式を生活習慣に取り入れていたことが見て取れます。

他の人物は、幼少期に和服を身につけています。着流しの杉元や月島少年。貧しいながらも袴を身につける宇佐美少年。いずれにせよ和装です。

それが鯉登は洋服を身につけている。函館の家も洋館です。

陸軍士官学校では外国語の授業があります。鯉登はロシア語を選択していなかったと思われます。

彼がロシア語を習得しているとプロットの邪魔になるという事情もありますが、海軍人を目指していたために英語を選択した可能性が高いのです。

鯉登は自転車や三輪車を乗りこなせる。紅茶を飲む場面では、ティーカップの持ち手に指を通していない。

スチェンカの場面では、ボクシングを習っていることがみてとれる。

薩摩隼人でありながら英国紳士でもあるという、実に明治らしい設定です。

 

七三分けという舐め腐った髪型

鯉登音之進は髪を伸ばし、七三分けにしています。

兵卒は丸刈りでなくてはならないものの、陸軍将校は長髪が認められています。そのため、第七師団を裏切った尾形はやっとオールバックに伸ばしているのです。

とはいえ、その将校にせよ、鶴見はじめだいたいがオールバックにしています。

30歳も過ぎて貫禄も出てきて、そこでやっとオールバックにするくらいが、空気の読める士官です。

それが鯉登は士官学校出たてで、あの長い七三分けですよ!

現代からするとややクラシックな髪型ですが、当時からするとオシャレど真ん中。それどころか大変チャラついた生意気ヘアーです。

令和ならば高校生のツーブロックあたりですかね。

「あいつは一体何様のつもりだ!」

そう周囲がイラついていてもおかしくない。目をつけられる髪型です。

花沢勇作の髪型は軍帽をかぶっているため、あまりよくわかりません。しかし、短く刈っている可能性の方が高いでしょう。彼の兄である鯉登平之丞は短髪でした。

そもそも鯉登は軍帽をかぶる場面すら少ない。いろいろと舐めた態度なんですね。

ああいうチャラついた少尉が、生真面目な花沢勇作のあとにやってきたことを考えてください。

「なんだべ、あのチャラついた少尉は……」

「はんかくさいんでねえが」(バカじゃないのかな)

こうなってもおかしくありません。

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