慶応四年(1868年)8月23日、会津藩に組織されていた白虎隊の多くが、会津若松城を臨む飯盛山で自刃しました。
「戊辰戦争時に人手が足りず、会津藩が集めた少年部隊が落城を知って全員自刃を選んだ悲劇」
そんな事件として世に知られていますね。
でも、このイメージには少しだけ事実と違う点があります。
大きく分けて三つです。
その1 年齢別に編成された白虎隊は徴兵か?
一つは、白虎隊は志願制の部隊であって無理やり徴兵されたわけではないということ。
当時の会津藩にはいわゆる四神の名を冠した部隊が他にもありました。
能力ではなく年齢順に分けられています。
◆玄武隊……50歳以上
◆青龍隊……36~49歳
◆朱雀隊……18~35歳
◆白虎隊……15~17歳
白虎隊はよく「最年少部隊」といわれますが、実はこの下に14~15歳の子供たちの部隊【幼少組】がいます。
当然のことながら主力は、最も兵に適した年代の朱雀隊。言うまでもなく最前線に行っています。
次点が青龍隊で、こちらは会津と他藩との国境に配属されました。
その他の隊は会津若松城で主君・松平容保の護衛をするか、予備戦力(補欠みたいなもの)として後方に控えていたのです。
また、白虎隊の中には生年を偽って無理やり所属した人もいたそうです。中には幼少組にすら入れない13歳の少年もいたとか。
これだけでも「いたいけな子供を無理やり戦線に送り込んだ」わけではないということがわかります。
そもそも無理やり戦場に送り込んだ兵ばかりだったら、自刃する前に逃亡するでしょうし、その場合は犠牲者ではなく裏切り者として悪名が残る可能性もあります。
では、なぜ年齢別にわけたか?
というと【鳥羽・伏見の戦い】で、年齢ごちゃごちゃに編成したところ、行軍速度が年寄りに合わせて遅くなったためという説もあります。
※以下は「鳥羽・伏見の戦い」関連記事となります
鳥羽・伏見の戦いで注目すべき慶喜の大失態~幕府の敗北は当たり前?
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その2 全員自刃したわけではない
二つめは、白虎隊は全員自刃したわけではないということです。
上記の通り、彼らは当初前線へ出る部隊ではありませんでした。
しかし、各所で押される朱雀・青龍の両隊を支援すべく、戦闘に加わらざるを得なくなります。
当然のことながら戦い慣れていない白虎隊の多くが戦死もしくは負傷による撤退を余儀なくされました。
自刃の場となった飯盛山へ逃げてきたのは、白虎隊約340人のうち20人だったといわれています。
さらにこのうち一人だけ偶然地元の人に助けられた人がいますが、その話はまた別の記事にて。
白虎隊の生き残り酒井峰治が『戊辰戦争実歴談』に残した生々しい記録
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飯盛山へ行かなかった人=おそらく自刃の時に別のところで戦っていた人の中にも、昭和年間まで生き延びた人がいます。
また、飯盛山で自刃したとされる人の中にも、実際には周辺やその前の戦いで戦死した人もいましたが、後でまとめて飯盛山で自刃とされたそうです。
その3「お城が燃えてる」は勘違い
最後は、彼らが自刃したとき、実は会津若松城はまだ落ちていなかったということです。
「城下町から上がっていた煙を見て、落城したものと勘違いした」という有名な話ですね。
しかし、絶望的な戦況の中で、かつ若さゆえに経験に乏しく判断力も培われていなかったであろう白虎隊士が冷静に判断を下せたとはとても思えませんから、無理もありません。
現在は国際法で(基本的には)禁止されています。
戦国時代のように平均寿命が短く、それに伴って「大人」とされる年齢も低かった頃であれば十代前半で戦に出ることは珍しくありませんでしたが、ときは幕末です。
彼我の戦力差や戦況などを総合的に鑑みる力のない少年たちでは、気持ちが先立つばかりで満足な結果を得ることはほぼ不可能。
若さゆえの純粋さと、長じてからの忠誠心とは違います。
とはいえ、戦の最中というのは基本的に情報が錯綜するもの。
当事者の証言や書き残したものといえど、記憶の錯誤や勘違い・思い込みが多く含まれている節があります。
史料に見えないところは想像力を働かせる――それも歴史の見方でありますね。
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長月 七紀・記
【参考】
国史大辞典
歴史群像編集部 (著)『全国版 幕末維新人物事典』(→amazon)
泉秀樹『幕末維新人物事典』(→amazon)
白虎隊/wikipedia