有馬新七

有馬新七/wikipediaより引用

幕末・維新

有馬新七 最期の言葉は「おいごと刺せ!」幕末薩摩で屈指の激しさだった生涯38年

戦国から江戸時代へ――平和になった太平の世でも、武士の荒々しさを保ち、幕末においてその武名を全国に轟かせた薩摩藩。

そんな鉄砲玉のような大藩においても、際立って激しい最期を迎えた人物がいます。

文久2年(1862年)4月23日に亡くなった有馬新七です。

大河ドラマ『西郷どん』でも郷中仲間として登場していたのを覚えていらっしゃるでしょうか。

寺田屋事件(寺田屋騒動)で壮絶な死を迎えるのですが、実は当時の薩摩では、幼き頃より文武両道で知られた天才肌の人物でした。

有馬新七/wikipediaより引用

 


文武に優れた、早熟な少年

史実における有馬新七とはいかなる人物か?

と、これが実に個性的な方でありまして、生まれは文政8年(1825年)。

西郷隆盛が文政10年(1827年)ですから、その2才上ですね。

有馬の場合は、父の坂木四郎兵衛が文武に優れた人物として有名でした。

島津家から郁姫(いくひめ・島津斉興の妹、後に養女の島津興子)が京都の近衛忠煕(このえただひろ)に嫁いだ際、付き人として抜擢されるほど。

この父が後に有馬家へ養子に入ったため、その子・新七も、生まれ育った伊集院郷から、1827年に加治屋町へ移り住むことになりました。

武芸は神影流の剣術。

学問は崎門学(きもんがく)。

父譲りの文武に優れた資質は、息子である新七にも引き継がれました。

そして天保14年(1843年)、有馬は19才で江戸への遊学を果たし、山口菅山に師事。

弘化2年(1845年)にも、上洛の機会に恵まれ、梅田雲浜らと交遊を深めます。

梅田雲浜/Wikipediaより引用

京都での有馬は、近衛家の計らいにより、天皇親祭の新嘗祭を遠くから拝観しております。

以来、激烈な尊皇家になったとされています。

 


ドラマの設定に難あり!?

有馬は、とにかく頭脳だけでなく運も良かったのでしょう。

以下のように、目まぐるしく出世をしております。

・嘉永4年(1851年)島津斉彬の藩主就任により登用

・安政4年(1857年)薩摩藩邸学問所の教授に就任

・安政5年(1858年)藩命で鹿児島に帰国

・文久元年(1861年)造士館訓導師に昇進

『西郷どん』の描写とはかなり異なる印象ですよね。

ドラマでの有馬は、常に西郷の身辺をウロウロしていて、例えば嘉永4年(1851年)の相撲大会(第5話)や、ジョン万次郎との邂逅でもその場におりました(第6話)。

ところが史実の1851年は既にバリバリ働いていたはず。西郷らと一緒に相撲やら何やらウロチョロしている時間はありません。

少し時間を戻しまして天保9年(1838年)。

早熟な有馬は、14歳の元服の頃より『靖献遺言(せいけんいげん)』を自習していたと伝わります。

靖献遺言とは、儒学者の浅見絅斎が編纂・執筆した、中国の忠臣や義士に関する書物。

当時、尊皇派の志士には必須のベストセラーでした。

これに対し、『西郷どん』の第1話は天保11年(1840年)ですから、このとき16才の有馬が、お菓子を盗むために島津邸へウロウロ彷徨い込むようなことはまずありえなかったでしょう。

万が一、その場にいたとしたら、ぶん殴ってでもイタズラを止めたのではないでしょうか。

ドラマの内容にケチをつけても仕方ないのですが、有馬の激情極まった思想や最期を思うと、そんなくだらないコトに時間を費やすような描き方は故人に失礼であると感じてしまうのです。

 


過激すぎる尊皇攘夷派

幼き頃から頭脳明晰だった有馬。

こうなると性格もおとなしそうに思えてきますが、実際は真逆でした。

「生まれつきキレやすく過激」

「荒ぶる」

「目上の人の教えに従わない」

そう自認するほど、激しいタチだったのです。

顔にはあばたが残り、その迫力には西郷隆盛でも圧倒されるほど。

周囲の人々は、そんな有馬を「今高山彦九郎」と呼んだとか。

高山彦九郎/wikipediaより引用

高山は、江戸時代後期の尊皇思想家であり、幕末の人物にも大きな影響を与えた人物です。変わった性格でも知られていました。

優秀で過激な性格の有馬は、そんな高山を彷彿とさせたのでしょう。

こんなエピソードがあります。

あるとき有馬は、役人に尾行されました。

その際、わざと荷物検査をさせまして、役人が唖然とする姿を見て大層おもしろがったとか。

中に、事前に友人から借りておいた女からの手紙が入っていたんですね。

一筋縄ではいかない豪気なタイプという感じで。

さすが薩摩は個性的な面々が多いです。

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