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【ラーメンの歴史】
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米を食べるとバカになる!?
小麦粉なら、パンより絶対ラーメンの方がイイ――そんな信念のもと、安藤百福はチキンラーメンの開発・生産に取り組みました。
実はそのことは1950年代のアメリカ側も認識していた様子。
思ったよりもパンは好まれていない。パンそのものを配給するより、小麦粉を直接分けた方が良いのでは?
1955年(昭和30年)から始まる高度成長期になると、ラーメンの役割は変化します。
闇市で人の腹を満たす一杯から、肉体労働者や学生向きの、気軽でおいしい食事へと変わってゆくのです。
油っこくコクのあるスープ。
コシのある麺。
それらは若者を中心とした日本人の心――ならぬ胃袋をシッカリと掴みました。
これは単純な話ではなく、なかなか政治的な背景がありまして。
アメリカは、食料の輸出先として日本に目をつけました。
そのためには、食事も西洋化して、小麦粉や乳製品を口にしてくれたほうがありがたい。
かくして米、サツマイモ、豆類の重要性が低下し、代わりに小麦粉、乳製品、肉類の需要が高まってゆきます。
ラーメンは中国発祥の食べ物ではありますが、高度成長期にラーメン消費量が増えていったのは、アメリカの食料政策が背景としてありました。
こうした小麦粉プッシュには、今からみるとトンデモナイ話もありまして。
1959年(昭和34年)に発表された大磯敏雄の著書『栄養随想』には、
【西欧人が合理的な考えをするのは小麦粉を食べているから、日本人も米ではなくて小麦粉を食べるべき】
という、ぶっとんだ思想が掲載されていたのでした。
当時は、大真面目です。
東大教授までこうしたデマをバラ撒き、「米を食べるとバカになる」というパンフレットも配布されていたのですから、わけがわかりません。
インスタント食品時代の到来
伸びる小麦粉消費量と、高度成長期という時代背景の中、日本人はますますラーメンを食べるようになります。
その総仕上げが、安藤百福によるインスタントラーメンの開発および販売でした。
インスタントラーメンは、ラーメンを食べるべき第3の理由を生み出しました。
【調理の簡単さ】です。
1958年(昭和33年)のチキンラーメン発売のころ。
海の向こう側では「テレビディナー」が人気を集めておりました。
メインディッシュと副食物をトレイにつめこんだもので、オーブンであたためてそのまま食卓に出せるモノ。
女性の社会進出とテレビが普及し始めた当時、ほぼ準備なしで食べることのできるこうした「インスタント食品」は人気を博しました。
チキンラーメンは当初割高で、業界は本当に売れるのか、疑念すらありました。
しかし、安藤は調理の手間をかけたくない人には、この簡便さが受けるはずだと睨み、その通りになります。
チキンラーメンはじめインスタント食品が急速に普及し始めた時代。
ラーメンは別の変貌を遂げてゆくことになったのです。
ラーメンの「和食化」
戦前、ラーメンを売り歩き始めたのは、中国大陸出身者でした。
闇市で人々がラーメンに強く惹きつけられたのは、中華料理が精力を付けてくれると思ったからです。
しかし、インスタントラーメンが普及し始めたころから、多くの日本人はこう思うようになったのです。
『あぁ、ラーメンって日本の味だよなぁ……』
確かにこのころから、独自の味、独自の存在になったと言えるでしょう。
1980年代になると、凄まじいブームが到来。
発売当初よりずっと安くなったインスタントラーメンやカップラーメンは家庭での定番食に成長し、ラーメンの名店では人々が並ぶという状況が訪れました。
庶民的な食であったラーメンが、ときには遠出をしてまで食べる「特別な一杯」になったのです。
これはシンボルキャラクターを見ても一目瞭然。
日清の「出前一丁」のキャラクターは、あきらかに和装を着用しています。
もしもかつてのように中国風を推してくるのならば、ベビースターラーメンの先代マスコットキャラクター「ベイちゃん・ビーちゃん」(2016年に引退)のように、中国服を着用していてもおかしくないわけです。
安藤百福は、広告の効果をよく理解していました。
ゆえに見逃していたとも思えないというか、彼の深慮遠謀を見る気がします。
実際に、インスタントラーメンは世界を席巻しました。
香港では「出前一丁」が現在国民食と呼ばれるほどで、海外では「日本産」であることが売りでした。
さらに2017年に流された、イケメン出前坊やが壁ドンならぬ壁出前一丁をする広告は、日本の少女漫画風。
その戦略がいかに正しかったかを裏付けています。
そして、このラーメンの脱中国、和食化は現在進行形です。
前述の「ベイちゃん・ビーちゃん」が2016年(平成28年)に引退し、新たに応募で決まった現在のキャラクター「ホシオくん」は、現代的な日本人の少年をイメージした容姿です。
どんぶりについても思い出してください。
かつては中国由来の「雷紋」や龍の絵がついていることが一般的。
時代がくだるにつれ、そうした中国風のモチーフは減少し、高級感のあるシンプルなものが主流となりつつあります。
そして、その最たるものがサンヨー食品の「和ラー」(→link)でしょう。
ブランドコンセプトは日本産のこだわり食材を使用していること。
「日本中をラーメンにしてしまえ!」
という宣伝文句からは、もはやラーメンが和食化したということが伝わって来ます。
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