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【手塚治虫】
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医師国家試験を控えながら大作を手がけ
旧制高校を受験したものの不合格となり、その後、大阪帝国大学医学専門部に合格。
当時は軍医を早く育てるため、旧制中学の卒業後に入れる医学専門部が設けられていたのです。
手塚も医師に助けられたことがあり、医学専門部を目指したという経緯があったため、合格できたのでしょう。
普通の高校がダメで、医療系に受かるというのも不思議なものですが、やはり興味関心の差でしょうか。
しかし、医師国家試験の受験期間には既に漫画家としてデビューしており、「ジャングル大帝」や「鉄腕アトム」の連載をしていたそうです。
それで合格しています。頭どうなってんだ(褒め言葉)。
医師と漫画家、どちらとして生きていくかについては相当迷ったようです。
最終的には母に相談し「好きなほうをやりなさい」と言われて、漫画家を選んだといわれています。
また、恩師からも「君は、このまま医者になっても患者を殺してしまうだろう。世の中のためにならないから、漫画家になれ」といわれたそうで。
「どんだけ~」とツッコミたくなりますが、手塚自身「患者の顔を見ると、どうしてもカルテに似顔絵を描いてしまう」と、医師には向かないことはわかっていたようです。
それはそれでスゴイ話ですが、当時の情勢では「個性派医師」として評価されるより、ぶん殴られるか、クビになるか、両方かの三択だったでしょうね。
また、もしも父親が手塚の回想通り「イヤな親父」だったら、漫画家をやらせてもらえなかったでしょう。この頃はまだ父親が健在ですから。
人気作品を生み出す一方でノイローゼになることも
有名なトキワ荘にやってきたのは、昭和二十八年(1953年)のこと。
この頃は東京の出版社に持ち込みを続け、雑誌連載を手がけるようになっていました。
それまでは描き下ろし単行本だけで、そのおかげで少々複雑な物語でも割と自由に作ることができていたので、連載で見せるための手法に当初は困ることもあったようです。
しかし、もともと柔軟な頭脳をお持ちなのでしょう。
手塚は連載という形式に合わせて、キャラクター作りや構成を変えていくことも対応できるなど、自分のやり方にこだわりすぎないのも大きな長所でした。
その後、人気作品を次々と生み出していくのですが、1950年代後半からは他の漫画家や、劇画人気に押され、ノイローゼになったこともあります。
手塚ほどの才能と実績を持つ人間でも、精神の健康を保つのは難しいのです。いわんや凡人をや。いや、凡人ならばそこまで悩まないか……。
手塚は劇画の手法を取り入れたりして、徐々に折り合いをつけていったようです。
また、1960年代から自分のプロダクションに動画部を作り、アニメーション制作を始めます。
上記の通り、幼少期からディズニーに慣れ親しんでいたため、アニメーション制作は一つの目標でした。当時はたった6人のスタッフで、給料や制作費も全て手塚の原稿料で賄われていたといいます。
こうして日本初の30分枠アニメとして「鉄腕アトム」が作られました。
スランプからの脱却は『ブラック・ジャック』
ついに放送されたアニメ『鉄腕アトム』。
しかし、日本社会にアニメが完全に受け入れられていたとは言い切れず、次々に他社が進出してきても、関係者の給料は安いままでした。
って、これは現在も続いていると言いますね。
当時は安くしなければ売れなかったから、手塚も他者もそうしたのですが……手塚存命中から「手塚治虫のせいで、アニメは儲からない」といわれていたそうです。
手塚のせいじゃなくてスポンサーや制作会社のお偉いさんのせいですよね。
そもそも自分たちの職を生み出してくれたも同然の人を恨むのは、筋違いでしょう。現在のアニメ業界が過酷な状況にあるのは、確かに由々しき事態なんですけどね。
アニメ制作を成功させた後も、漫画を積極的に発表していた手塚。彼ほどの大漫画家でも、むろん全てがうまくいったわけではありません。
安保闘争など、時勢に影響された暗い内容をテーマにした時期や、業績不振で多額の借金を抱えたこともありました。
1968~1973年の間は、自ら「冬の時代」と称しているほどです。
そんなドン底の中で、「週刊少年チャンピオン」の編集長が最後のチャンスとして連載をさせてくれることになりました。
「ブラック・ジャック」です。
当時の漫画は長く引っ張る形式が多かった中で、ブラック・ジャックはあえて毎回読み切り形式にしたことが読者にとって新鮮に写り、大成功を収めます。
続いて「週刊少年マガジン」で「三つ目がとおる」の連載も始まり、ようやく苦境から脱却。
「売れる作家」とみられると、出版社も積極的に動きます。
過去作の再刊や全集の刊行によって、手塚は「漫画の第一人者」「漫画の神様」として認識されていくのです。
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