飛鳥・奈良・平安時代

新元号「令和」の元ネタが中国『帰田賦』と指摘される理由

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新元号の出典とかけて朝ドラ『まんぷく』のインスタントラーメンと解く。

してその心は?

どちらも日本ハツでしょう――。

2019年4月1日に決まった「令和(れいわ)」という新元号。
『万葉集』の歌「初春月、気淑風」をアレンジしたもので「人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つ」という意図だと安倍首相が語っておられました(参照:首相官邸HP)。

それ自体は全く問題なく、非常に喜ばしいことだと思います。

しかし……。
どうにも拭えない違和感もあります。

なぜ各種メディア、特にテレビでは殊更【日本独自であること】をアピールするのか。
いえ、万葉集が悪いとは思いませんし、出典や新元号の決定自体に異を唱える気はサラサラありません。

違うのです。
例えば岩波文庫編集部さんのツイートからも見てとれますように、その万葉集の歌自体が中国・張衡の歌『帰田賦(きでんのふ)』から強く影響を受けたものだとしたら、皆さんはどう思われますでしょうか。

それは字面を見るだけでご納得いただけるはずです。

万葉集(日本)「初春月、気淑風
帰田賦(中国)「仲春月、時気清」

岩波文庫編集部さんだって、新元号のお祝いムードに水を差したくて、こんなツイートを流したワケではないでしょう。

やはり違和感が拭えないんだと思うのです。

出典の『万葉集』については、テレビでも大々的に報じられています。
が、その中で、中国の元ネタにまで言及しているところは、発表から2日間、TVニュースを見続けて一つもありませんでした。

正直、今のような偏りはアンフェアではないでしょうか。

冒頭の「日本ハツ」は我ながら稚拙な謎かけですが、万葉集が【日本】だとしたら、NHK朝ドラの『まんぷく』はチキンラーメンが【日本】だということを指しています。

しかし朝ドラ『まんぷく』では、実は【台湾が起源だったインスタントラーメン】を完全に日本の発明だとして物語を作っておりました。日本が初ではないのです。

なんだか構図や姿勢が似てると思いませんか?

そこで本稿では、張衡(ちょう こう)の歌『帰田賦』がいかにして万葉集にたどり着いたか。
『まんぷく』を踏まえて、考察してみたいと思います。

 

『まんぷく』が積み重ねた歴史修正

2018年度、下半期の朝ドラ『まんぷく』。

日清食品・安藤百福氏をモデルとしたラーメン開発物語は、毎朝のテレビ放送で多くの疑問点を生み、しまいには週刊誌でも取り上げられるに至りました。

◆なぜNHK「まんぷく」は、安藤百福の“台湾ルーツ”を隠したのか

ニュースをご存知ない方に、ざっと問題点を挙げてみますと……。

・台湾で昔からあったインスタントラーメンの製法を日本の発明だとした
→油で揚げる麺を台湾系華僑が日本に持ち込んだ(日本でも安藤氏の発売が最初ではない疑惑が濃厚)

・中華麺の作り方をうどん屋に習う
→麺作りをする上で、なぜか中華麺を取り扱う製麺屋でもなくラーメン屋でもなく、うどん屋で修行。うどんも元を辿れば中国から伝わったもの(日本の麺はほぼ全てそう)

・「まんぷくヌードル」(カップヌードル)の具材であるネギ・卵・エビを【中国ではなく洋風】と主張する
→どれも中華料理ではよくある食材であり、とりわけネギを洋風とするのは無理があり過ぎ(西洋ネギのリーキとは別もの)

ドラマが終わる頃には、週刊誌からこんな記事まで出る展開です。

◆『まんぷく』では描かれない「安藤百福」もうひとつの逮捕(3/29)

困ったのは、こうした経緯を知ってなお、
「フィクション作品だから問題ないだろ」
と考える一部視聴者もいたことです。

本当にそうでしょうか。
考えてもみてください。

・寿司はカリフォルニアで生まれた!
・イチローや大谷選手は米国生まれの米国人!
・剣道柔道の発祥は日本だけじゃない!

そんなワケのわからない作品がつくられたらどう思います?

たとえフィクションだったとしても『おかしいだろ!』と物申したくなるでしょう。
そもそも「そんなことして何になるんだ?」という疑問もございます。

それを公共放送のNHKで、視聴率20%の朝ドラ枠でやってしまった。

そんな『まんぷく』が最終回となった翌日。
2019年4月1日に新元号「令和(れいわ)」が発表されたのです。

 

漢籍以外から取られた新元号

長く中国古典を由来としていた元号が『万葉集』から選ばれた――。

そう発表された瞬間、歴史ファン、研究者、特に中国史および中国文学史、日本史および日本文学史界隈はざわつき始めました。

「『万葉集』より古い漢文ソース、あるんじゃないの???」

果たして数時間後、それは呆気なく発見され、ネットニュースやSNSで拡散し始めます。

◆新元号「令和」の出典『万葉集』の序文、ルーツは中国の『文選』と指摘も

オリジナルの歌は張衡(ちょう こう)の『帰田賦』というもので、歌は次のような変遷で日本の万葉集にまで引き継がれております。

①張衡(ちょう こう)『帰田賦』→wikipedia
138年(後漢・安帝から順帝/永和3年)

②王羲之(おう ぎし)『蘭亭序』→wikipedia
353年(東晋・穆帝/永和9年)

③昭明太子(しょうめいたいし)編纂『文選』→wikipedia
6世紀前半(中国南北朝・南朝梁)

大伴家持『万葉集』→wikipedia
7世紀後半〜8世紀後半(日本)

⑤2019年 新元号に採用

『万葉集』は「やまとことば」だ!
そう主張したい向きも痛いほど気持ちはわかりますが、和歌以外はむしろ【漢文】です。

にもかかわらず、
【新元号は日本由来だ】
とだけ言い張るのは、やはり『まんぷく』での流れを感じさせられるのです。

①全く新しい即席麺を作るのだ

②そのためには日本のうどん屋で学ぼう

③麺打ち

③いや、うどんも元を辿れば中国からのもので……
※奈良時代や平安時代など諸説アリですが中国由来という点では一致

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むしろ、中国大陸との交流が少なかった北海道の「三平汁」あたりのほうが、日本独特と言えるのかもしれません。

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こうした状況を踏まえて、スッキリまとめますと、こうなります。

日本オリジナルというのは、やはり【無理ゲー】です。

漢字、稲作、和服。
こうしたもの全て、ルーツを辿れば中国由来のものです。

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影響を排除しようとする思考そのものが詰んでいるのです。

なぜ、良いものは良いとして、そのまま受け入れられないのか……。

これが日本史から見て問題なのは、ともすれば
「漢文を学ぶなんて極左だ」
という風潮さえ漂っているからであります。

 

漢文を学ぶ者は左翼認定でよいのか?

「漢文が左翼だなんて、んなアホなw」
とは簡単に片付けられない状況があります。

日本を代表するようなベストセラー作家・百田尚樹氏が、通史本として『日本國紀』を発売。
これが売れに売れているとのことで、決して影響力の小さくない百田氏が、次のような主張を堂々とされています。

◆百田尚樹氏「中国文化は日本人に合わぬ。漢文の授業廃止を」

そもそも、なぜ学校で「漢文」の授業があるのか。英語と違って使う機会なんてないし、あれは趣味の世界だと思うんです。

恐ろしいことです。
歴史を学ぶ前に漢文が否定されてしまったら、日本史そのものが成立しなくなってしまいます。

ほんの少し例を挙げるだけでご理解いただけるでしょう。

・清少納言

「香炉峰の雪は簾を掲げて見るのぉ♪」
と、漢文知識を自慢した女。
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・紫式部

「光源氏の母は、その寵愛の深さゆえ、玄宗皇帝が愛した楊貴妃のようだと言われたのです」

そんな皇室をネタにした小説を書いた上に、天皇陛下とその妃を中国の皇帝とその妃にたとえた女。
間違いなく極左ですね、アウト。

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・織田信長

本拠地の岐阜は「曲阜」(孔子の出身地)からとられた説。
伊勢神宮の式年遷宮を復活させたり、皇室貴族も保護していたけど、儒教の祖を崇める左翼ダ!

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漢文知識を自慢し、長い「直江状」を徳川家康に叩きつける。
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孔子像がある「日新館」で学んだ。
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・「郷中教育」を受けた薩摩藩士

テキストが漢籍ばかり。
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・その他、教育を受けた武士(近藤勇含める)

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途中から「いい加減にせーや!」となった方。
はい、悪ノリが過ぎましたね。

でも、おわかりいただけたと思います。

とにかく漢文はもう、圧倒的に日本の隅々まで至っております。

江戸時代まで、日本人の教育は漢籍と儒教が前提としてありましたし、明治以降に西洋由来の言葉を和訳する際も漢籍を参考にしながら進めたものです。
例えば「経済」という言葉は「経世済民」の短縮形ですね。

【漢文=左翼認定】という浅い見識は控えた方がよろしいでしょう。

 

「令和」は良き時代になる?

「令和」は果たして、よい元号なのか? そうでないのか?
答えは明快かつ単純です。

「まったくわからない」

元号の良し悪しは、終わって始めてわかるもの。
人物の価値が墓に入ってからわかるようなもので、現時点では誰にもわかりません。

ただ、出典の時代を当たることはできます。
考察してみましょう。

張衡『帰田賦』の時代

この漢詩は、
「もう都会で政治に関わっているとストレスフルなので、田舎に戻って田んぼでも耕しますわ……」
というぼやきが元となっています。

なぜ、そうなったのか?
それは政治が腐敗しきっていたからです。

後漢といえば、あの物語で有名。
そう『三国志演義』です。

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中 ...

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その腐敗背景として「外戚と宦官」という言葉が出てきます。

後漢・安帝から順帝の統治は、まさにこの悪いターニングポイント。
それまで外戚の専横に占められていた順帝は、一代限りだった宦官の養子による相続を認めてしまったのです。

そうして出てきたのが宦官の孫にあたる曹操でもあります。
結果、宦官の専横がはびこり、政治腐敗はより深刻になります。

十常侍や梁冀らに食い潰された後漢の悲劇 だから宦官や外戚は嫌われる

三 ...

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そして乱世が訪れた

このまま時代がくだると、あの大乱世である『三国志』となります。

 

次に迎えるのは司馬懿とその子孫による晋の時代。

 

司馬懿~ボケ老人のフリして魏を滅ぼす 諸葛亮のライバルが演技派だった理由

『 ...

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これが『蘭亭序』の背景に当たりますね。

『文選』も、こうした激動の時代である魏晋南北朝に成立したもの。
「桃源郷」の語源である『桃花源記』も、この時代の陶淵明がパラダイス幻想を詠み込んだものです。

ではなぜ、当時の詩人は美しい田園風景や、夢のような世界を描いたのか?

それは、あまりにも現世が厳しかったから。
現実逃避して、ありえないような夢の世界に没入するしかないほど、ストレスフルであったからなのです。

一体、何が起きていたんだ???

 

漢民族は滅びかけていた

それは実に漢民族の七割減という、おそろしい状況がありました。

人類史でもトップクラスの、驚異的な人口減。
今日に至るまで、漢民族全体が最悪の危機に瀕した時代でした。

『三国志』時代は人が死にすぎ!7割もの人口減で漢民族の滅亡危機だった!?

中 ...

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このあと、中国の歴史では漢民族以外の王朝が成立することとなり、民族は溶け合い、新たな時代を迎えます。

衣服、言語、食文化――。
さまざまなものや要素が、大陸で溶け合う時代となるのです。

 

漢字、漢民族。
なぜこうした言葉が「漢」を使うかと言いますと、民族がビフォー漢とアフター漢では違う。
そういう認識があるのでしょう。

確かに新元号の元となった直接のエピソードは、楽しそうなものではあります。
しかし、もっと遡って後漢までたどりつくと、ちょっと別のものが見えてくるかもしれません。

繰り返しますように、そうした背景をして新元号の良し悪しを判断することはできません。

できるのは、この元号が終わってから。
後世の判断を待つしかありません。

よりよい元号の時代を作るもの。
それは由来ではなく、私たち一人一人の生き方次第でありましょう。

文:小檜山青

※追記

そんな深掘りしなくていい!
オタクじゃあるまいし、『万葉集』で止めておけばいい。

もしかしたら、そう指摘される方がおられるかもしれません。

しかし、現実は現実として受け止めた方がいいものです。

◆‪「令和」中国で既に商標登録 | 2019/4/2(火) - Yahoo!ニュース 

なぜこうなるか。
明白です。

『文選』で選ばれるほどの言葉ですから、よいイメージがあるとして、商標登録されていても当然なのでしょう。

東アジア圏では、日本以外でも人名にも使われることがあります。
気になって中国史に詳しい友人と話し、自分なりの結論を出しました。

Q:どうすれば、元号の重複は避けられるの?
A:ひらがなにするしかありません。「すこやか元年」、「わくわく三年」。このパターンなら、絶対に重なりません

 



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