漫画原作ドラマ『いいね! 光源氏くん』が2020年春にNHKで放送され、好評を博しました。
あの光源氏が現代にタイムスリップ――出会ったOLとのオモシロ居候話が意表をついて斬新で人気となっているのです。
もちろんあり得ないフィクションですから、そこにツッコミを入れるのは野暮だと承知の上で、ちょっと気になることがあります。
「モテ男子の代表格・光源氏って、そもそもそんなにイイ男でしょうか?」
身も蓋もない提言ではありますが、以前から気になっていたのです。
漫画やドラマにどうこう突っ込むわけではない。そう前置きしたうえで、ちょっと光源氏について考えてみましょう!
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問題提起1「現代でもイケメンなのか?」
光源氏はともかくイケメンとされています。
男優では演じきれず天海祐希さんが扮したこともあるほどで、千葉雄大さんも中性的な要素を持った美男子ですよね。
ただ……それはあくまで当時の基準。
そのまんまタイムスリップしてきたところで、美男子ではない可能性が高いと思います。
そもそも「輝くほどに美しい」「いかつい武士が見ても微笑んでしまうほど」という形容からして具体性がない。
では何を美の基準としていたか?
身も蓋もない話ですが、
「あの桐壺亭と桐壺更衣の血を引くなんて!」
という血統重視です。
身分が高ければ栄養状態もよく、日焼けもせず、筋肉でむさ苦しくなるわけでもない。そういう佇まいが美しいとされる意識があったのでしょう。
しかし、それって現代人からすれば……
「筋肉がついてなくて、色白で、ムッチリ感があって、運動不足ぽいおっとりした人」
となりませんか?
筋肉に期待してはいけません。
若い頃は中性的で痩せていて、美少年だったことが作中で描写されておりますが、30代からは肉がついていき、光源氏も中年太りしていたんですね。
現代人からすると、麿キャラは決して美形ではありませんもんね。
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問題提起2「性格がよい男なのだろうか?」
外見より内面だ!
確かにそうかもしれません。光源氏は教養も知性もあるし、和歌も詠める。雅さが素敵だという解釈はできなくもありません。
しかし……平安貴族ってそこまで雅なのでしょうか?
『源氏物語』で一番有名な箇所であり、古文でも習った記憶があるといえば第5帖「若紫」。
紫の上と出会うロマンチックな箇所……と言いたいところですが、冷静に考えるとゲスを極めています。
俺、光源氏。
マラリア治療のために北山行ったんだよね。
そこでかわいい美少女ロリ発見!
しかも藤壺様そっくりじゃん!
なんだかんだあって、その後、この美少女を俺が世話することにしたんだよね♪
紫式部の超絶文才によって、面白いし、素晴らしいといえばそうですが……。
「未成年を騙すように連れてきて何を考えてんだお前!」
そんなツッコミをされた方も少なくないでしょう。
確かに当時は結婚年齢も低いし、そういうものだと受け流しそうになりますが、実態はなかなかゲスい。
・紫の上は光源氏が憧れる藤壺中宮(父・桐壺帝の中宮、生母・桐壺更衣に似ている)の血縁者。ただし、身分が低い
・祖母に育てられていた。その祖母ですら「こんなに若い孫と結婚? ないないありえない」と思うほど、紫の上はまだ幼かった
・その祖母が亡くなってアタフタしているところにつけこむようにして、ゲットしている
光源氏は帝の血を引くだけに、当時の価値観をわかっています。
紫の上が両親健在であり、身分が高かったら、こんな強引なゲット手段はしていない。
光源氏のアプローチは、相手の身分を踏まえてのものであるのです。
「でも光源氏と紫の上は愛し合っていたんでしょう?」
どうなんでしょうね。
紫の上は初夜のあと、
「世話をしてくれているお兄ちゃんになんか変なことされた……」
と生々しくショックを受けているし。
光源氏が女三の宮を迎えたあと、ストレスによる死へと向かっていきますし。
冷静に読み返すと、実は大して雅じゃない。ドス黒い何かを見出せるのです……。
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